5秒でうつ病かどうかがわかるかもしれない?錯視テストがヤバい! 鬱は実際に視覚を乱している!?
最近の研究で、うつ病では脳内神経の配線に変化が生じることがわかってきたが、錯視を使った新たな研究によると、その影響は視覚にも及んでいるらしい。科学ニュースメディア「Science Alert」(3月31日付)が報じた。
・Visual Illusion Reveals That Depression Can Change How We Physically See The World (Science Alert)
うつ病に限らず、統合失調症などの精神疾患では、脳での視覚情報の処理に変化が起こることが知られている。だが、その変化についてはまだわからないことだらけというのが現実だ。そこで、フィンランド・ヘルシンキ大学では、錯視画像を使ってうつ病患者の視覚情報処理について実験を行った。
実験に使われたのは、背景の違いで中央部分が異なって見えるというタイプの錯視画像だ。実際に使われた画像は2タイプあり、一つは背景の明るさが違うため、もう一つはコントラストが異なるため、本来は同じはずの中央部分が別物に見えるというものだ。
研究者らが大うつ病性障害と診断された患者111人とそうでない29人にこれらの錯視画像を見せ、どのように見えるかを尋ねたところ、その見え方に違いがあることが判明した。明るさを変えたタイプのAやBの錯視画像では2グループ間で認識にさほど違いは見られなかったが、コントラストを変えた方では大きな差が出た。うつ病患者グループでは、本来なら起こるはずの錯視が抑制され、コントラストの変化を認識しにくくなっていたのである。特に、うつ病の人ほど、上の画像の「C」と「D」の縞模様のコントラストの差を感じず、同じ濃さに見えていることがわかった。
つまり、上の画像をパッと見て、Dの方が濃いと感じなかった人はうつ病の可能性が高いということになる。
残念ながら今回の研究は被験者の自己報告だけを基にしており、脳のスキャンなどは行われていないため、実際の目や視覚神経、脳でどのような変化が起きているのかは不明である。また、治療のための投薬が原因で視覚に変化が起こっている可能性もある。とはいえ、うつ病などの精神障害が目と脳に変化をもたらし、外界の認識にも影響を与えているのは確かなようだ。
うつ病などの経験者は、症状が辛い時に「世界が暗く見えた」と話すことも多い。それはただの気分的な問題ではなく、実際に目や脳に変化が起きていた可能性がある。たかがうつ病と侮ってはいけないのである。
参考:「Science Alert」「Journal of Psychiatry and Neuroscience」ほか
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