預金封鎖よりも悪魔的な「国の借金の解決方法」とは? コロナと五輪で気づかぬうちに預金が半分に!?


■インフレターゲット理論

 ひと昔前は金融政策が簡単な時代で、中央銀行が発行する通貨に乗数効果をかけたものがマネーサプライとされ、中央銀行がいくらその通貨を発行するかで通貨の価値がコントロールできた。

 ところが今世紀に入り、クレジットカードやキャッシュレス決済が普及したことで古い指標によるマネーサプライが実態と乖離を始めている。この点を悪用すれば、政策金利や公開市場操作などの伝統的な金融政策の指標では気づかれない形でインフレを起こすことができるという。

 わかりやすい言葉で説明すると、これはインフレターゲット理論である。インフレを起こして価格を今の倍にすることを政策目標に設定するのが典型的なインフレターゲット政策だ。貨幣の価値を下げることで、やがてマクドナルドのバリューセットが1500円になって、缶コーヒーが240円になって、百均が200円ショップになる。そうなったときに国の借金がどうなるかというと、見た目の残高はそのままだけれども、実質の負債額は半分になる。

 わかるだろうか? 仮にあなたの銀行預金が100万円あったとして、もし物価が2倍になったとしたらその価値はインフレで半分に下がってしまう。100万円の預金で買えるものは、これまでの50万円分にしかならない。国民の資産の価値が下がることになる。

 そして恐ろしいことに、インフレで物価が2倍になると借金の負担も同じように半分に減る。損をするのはお金を貯めていた人たちであって、借金をしていた人たちは逆に得をする。そして一番得をするのは日本最大の借金を抱えた日本政府ということになる。

 そういうことが起きないように、さまざまな人たちが金利や通貨の発行高などの統計指標に目を光らせている。しかし、政府はもっと巧妙にそれを迂回して、インフレターゲットにむけてマネーサプライをじゃぶじゃぶにすることができるという。

 それがキャッシュレスだ。クレジットカードが〇〇ペイになり、そこにポイントが加わったうえで、将来的にはデジタル円の発行へと国民経済がどんどんデジタル化されていく。その結果、古い通貨指標によるマネーサプライはますます実態と乖離して何が起きているのかが、金融の当事者にも見えにくくなっていく。

画像は「Getty Images」より引用

 ところが実質的な通貨の発行が増えることで市場には神の手が働き、物価だけは少しずつ上昇していく。

「なんだか最近、価格が上がった気がしない?」
「消費税が上がったからかなあ」
「それとコロナでモノ不足も起きているしな」

 なんて国民は思っている。そうやって気づかないうちにキャッシュレスのマネーサプライは増加し、国の借金はインフレで大幅な棒引きを実現する。

「キャッシュレスになってよかったな」

 というのが政府が期待する悪魔のような結果である。

文=須垣泰樹

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