「この世界は“量子ミラー”のゲーム」現実の根底は何も存在しない“無”の可能性! 最新理論で解説

 この世界は“量子ミラー”の鏡像が織り成す無限のゲームに過ぎない――。最先端の理論物理学者が我々の現実認識がまったくの間違いであることを解説している。

■物体は相関関係の中で存在している

 今手にしている本が物体として確かに存在していることを疑う者はいないだろう。手は本のカバーの手触りを感じ、本を顔に近づければ紙やインクの匂いもしてくる。

 何度も読み返したくなる本は外観はもちろん、手触りや匂いも馴染みになっていそうだが、驚くべきことに最先端の理論物理学者はこの本は我々が考えているような姿で存在しているわけではないと説明している。本は独立して存在するものではなく、相関関係の中で存在しているというのである。

 イタリアの物理学者カルロ・ロヴェッリ氏は新著「Helgoland」の中で、物体が独立した存在であることを期待するのではなく、相関的(relational)な世界観を採択すべきであると主張している。いったいどういうことなのか。

「Singularity University」の記事より


 物理学のパイオニアであるイギリス人科学者アイザック・ニュートンとドイツの哲学者であるゴットフリート・ライプニッツは、空間と時間の性質についての見解が一致していなかった。

 ニュートンは、空間と時間は宇宙の“内容物”を収容する「容器」のように機能すると主張した。もしも宇宙の内容物(すべての惑星、星、銀河)がすべて取り除かれたとしても、空の空間と時間が残ると考えたのだ。これは空間と時間についての“絶対的な”見方である。

 一方、ライプニッツは空間と時間は世界のすべての物体と出来事の間の距離と持続時間の総和にすぎないと主張した。宇宙の中身を取り除けば、時間も空間も取り除かれる。これが空間と時間の関係論的な見方だ。この考え方はアインシュタインが一般相対性理論を発展させたときに重要なインスピレーションとなっている。

 ロヴェッリ氏はライプニッツの考えを踏まえて量子力学を理解している。彼は、光子、電子、または他の基本的な粒子などの量子論の対象物は、他の対象物との相互作用の際に示す“特性”にすぎないと主張している。物理的なモノを構成する基礎となる物質などは存在しないというのだ。

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