今こそ全てを因果関係から解き放つ「随伴現象説」について考えるべき!? 脳からなぜ非物質の意識が生まれるか?

画像は「Getty Images」より引用


 何らかの制約がない限り、手を上げようと思えば手があがり、歩こうと思えば歩くことができる。意思によって物理的な体を動かすことは当然のように思われているが、哲学の世界ではこれが大きな問題となってきた。

 物質である脳や体から、どのようにして非物質である心や意識が生まれるのか、そして、どのようにして両者は相互に作用しているのか、こうした一連の問いは「心身問題」と呼ばれ、いまだ解決されていない。

 知的情報サイト「Big Think」(8月2日付)によると、さまざまに考案されてきた心身問題の解決策の中で開き直りに近い、ラディカルな解決策の1つが「随伴現象説」と呼ばれる学説だという。随伴現象説によると、体と心は相互作用を一切持たない。つまり、心は物理的世界に何の影響ももたないということであり、右手をあげようと意思することは、実際に右手があがることの原因にはならないのだ。この時、意思は行為にただ伴って発生しているに過ぎず、因果関係を持たない。たとえるなら、私たちは車を運転するふりをしている子供のようなもので、運転している気分にはなるが、実際には運転に何の影響も与えていない。

 心と体を完全に分けてしまうのはさっぱりするが、意思が行為に関係しないというのは感覚的に承服しかねるところがある。そこで、歴史的には両者の間に神を置く「機会原因論」という説も提案されている。右手をあげようという意思が、直接に右手をあげるという行為の原因になるのではなく、意思が機会となって、右手を上げるという物理世界の出来事を神が起こすとする。原因は神であり、意思ではない。

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 神を絶対視する立場ならこれで良いのかもしれないが、心身問題の説明を放棄してしまっている時点で現代では受け付けられない説明だろう。

 ただ現代人も答えにたどり着いているわけではない。神経科学者のダニエル・デハーンや哲学者のジュリオ・トノーニ、ピーター・ゴドフリー・スミスらは、意識を「統合情報理論」で説明できるとしているが、成功しているとは言い難い。この理論では、意識は脳の複雑な神経伝達や認知プロセスによって創発された副産物だとされている。随伴現象説の1つだと見ることもできるが、この理論に従えば、十分に複雑な情報処理をする脳があれば心は生まれるため、物質主義的だと言えるだろう。だが、脳から心が生じるプロセスが未解明であるため、心身問題の解決には全くなっていない。

 随伴現象説は多くの問題を抱えており、今では否定的な見方をされることが多い。ただ、この説を受け入れてしまえば、自然科学は心や意識という難問に煩わされなくて済むという利点がある。あるいは、統合情報理論のように科学が進歩すれば心のメカニズムも解明されるとし、楽観的になれるだろう。自然科学者は戦略的な無知を装い、表面的に随伴現象説を受け入れた方が、科学や人類の進歩のためには有益かもしれない。

参考:「Big Think」、ほか

編集部

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