「時の止まった家」で暮らす引きこもり男を囲む、死んだ家族の霊たち! 霊能ライターが視た遺留品の闇
雄太さんと一緒にそれぞれが希望する品を買いに行った。一軒一軒を回りながら「お母さんが亡くなった時になぜもっと早く病院に連れてこなかったのかとお医者さんに責められた」「キッドはカリカリしたドライタイプのドックフードは好きじゃなかった。だけど、長生きして欲しくて獣医さん指定のものに変えたんです。あんなに早く死んでしまうならキッドの好きだったあの柔らかいフードをあげていればよかったのかな」と雄太さんは後悔を語る。買い終わり、それぞれにお供えしながら仏壇に祈るたびに、彼はそんな気持ちを整理しているようだった。
雄太さんは彼女いない歴64年の筋金入りのオタクでもある。彼の部屋は5,000本近いDVDと美少女フィギュア、漫画の山で埋め尽くされていた。曰く、自分が寝たきりになった時のために、一生観られるだけの分量のDVDの録画をしたとのこと。
そんな彼の部屋も、ご家族の遺品と同じく整理しなくてはならない。古いものを捨てなければ新しい物も人間も入ってこないからだ。辛くても遺品を処分しなければ、物の中に亡くなった方の思いが残り続けてしまう。
雄太さん一家の居宅はかなり年数が経っているため、亡くなったご家族の様々な遺品が見つかった。彼の父の愛用していた煙管、母が愛用したハンドバックと着物類、兄からの譲り受けたスーツ、キッドが大好きだったおもちゃ類。これだけの思い出に囲まれていたら、雄太さんが過去に止まり続けてしまうのも仕方がない。でも思い切って、本当に大切なものだけを残して、雄太さんは遺品をほとんど整理してしまった。彼の内面と生活環境に深く関わったせいもあり、また天国のお母様からの声が聞こえたのか、後に雄太さんは私に結婚を申し込んできたが丁重にお断りした。私では彼のオタク話についていけないからだ。
約2年後、知人から彼が「最近、中年女性と仲良く近所のスーパーで買い物をしていた」という噂を聞いた。雄太さんに直接聞いてみると「66歳にして、初めて彼女ができました!今は彼女と同棲しています。田口さんに言われたように、古い物を捨てたら、新しい人がやってきました! 彼女は45歳で、21歳も年の差があるんですけどね」と嬉しそうに答えた。久しぶりに尋ねた雄太さんの御宅は見違えるようだった。暗く、時間が止まったような家の印象は、新妻のようにふるまう彼女が作る料理の香りで満たされていた。時計の針が動き出したのだ。
ただ一つ気になったことがある。遺品と同時に整理することを勧めた雄太さんのコレクションが増えていたことだ。少女漫画の山が増殖していた。
なんと雄太さんの彼女は、彼氏いない歴45年の漫画オタクとのこと。しかし彼女は雄太さんに新しさを持ってきた。雄太さんは21歳年下の彼女の漫画と洋服代のために、10年ぶりに外に働きに出て、生き生きと暮らしている。その表情は見ているこちらまで嬉しくなってくる。そして何よりも彼と彼女の楽しそうな暮らしを見て一番ホッとして喜んでいるのは、天国のお母様かもしれない。
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊「時の止まった家」で暮らす引きこもり男を囲む、死んだ家族の霊たち! 霊能ライターが視た遺留品の闇のページです。霊能者、葬儀、孤独、遺品整理などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで