「生まれてきたことは悪」「人類絶滅すべし」反出生主義が世界中で台頭! 哲学者べネターの理論が21世紀の新常識へ!
「反出生主義」については、すでにトカナでもお伝えしてきた。現在のコロナ禍も重なって「生まれて来ないほうが良かった」と思う人も増えている。しかし、その一方でパンデミック下において家族や友人といったリアルに触れ合える人々の大切さを身に染みて知った人々も多い。
折しも8月7日(土)には品田遊『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』(イーストプレス)が発売された。爛熟した文明が自重で崩壊してしまうように、人類もまた「生まれないことを選べるのか」という問いは斬新にも思える。
しかし「反出生主義」は何一つ新しいものではない。たとえば日本人にとって身近な仏教は解脱=悟りにおいて「もう生まれないこと」を目指す宗教である。またはユダヤ・キリスト教の文脈でさえ、ヨブ記等において「産まれたことを呪う」描写もある。いいかえれば「反出生主義」は伝統的な考え方における宗教を脱色して哲学化したものともいえる。
もちろん「反出生主義」は21世紀地球の流行であり宗教ではない。現在起きている思潮である。以下、最新動向を踏まえるために関連記事を再掲する。
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読者の中には“妊活”に励んでいる人もいるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。いま世界中で「反出生主義」がブームになっているのだ。英紙「The Guardian」(11月14日付)が報じている。
反出生主義とは、出産を倫理的な悪だとする哲学説である。2006年に、南アフリカ・ケープタウン大学哲学教授デイヴィッド・ベネターが発表した哲学書『生まれてこないほうが良かった:存在してしまうことの害悪)』(すずさわ書店)で広まった。
その詳細は過去記事を参照して欲しいが、簡単に言ってしまえば、善悪の基準を快苦に置く功利主義の観点から、どんな人生であっても生まれてこない方が良いとするものだ。ただ、「幸福に満ちた人生はどうなるのか?」という直観的な理解しがたさが残るだろう。その導出方法はテクニカルであり、ベネターの議論の核心部分(ここが否定されたら彼の議論は成立しない)であるので、やはり過去記事を参照して頂くか、直接『生まれてこないほうが良かった:存在してしまうことの害悪)』(すずさわ書店)にあたって頂き、自分の頭で考えてみて欲しい。
・「人間は生まれないほうがよい、すぐ人類滅亡するべき」著名哲学者ベネタ―の“反出生主義”が少子化問題を全否定! 生命は害悪だと完全証明!
「The Guardian」によると、同書は「なぜ子どもを産まなければならないのか?」と漠然とした疑問を抱いていた人々の胸に響き、徐々に非専門家の間で賛同者を増やしているという。たとえば、トカナでもお伝えしたように、今年2月には反出生主義に共感するインド人男性が、「合意なく自分を生んだ罪」で実の両親を訴える事件が起こっている。
この男性は両親と良好な関係であり、良い人生だと感じているが、なにも考えずに子どもを産んでしまう親たちの態度を疑問に付すため、訴訟を起こした。だが、結局のところ、彼の訴えはまともに取り合ってもらえず、“裁判所の時間を無駄にした”ことに対し罰金を払うはめになったそうだ。
もう一人、米在住のデイナ・ウェルズさん(37)も反出生主義に共感する一人だ。彼女は生き別れになった実の兄弟と再会した際に、「なぜ子どもを産まないのか?」と聞かれたことをきっかけに、その根拠を哲学に求め、反出生主義に行きついたという。今では「友好的反出生主義者(The Friendly Antinatalist)」というYouTubeチャンネルで、反出生主義を広める活動に力を入れている。
ベネター本人もこうした流行を快く受け入れているようだ。
「(子どもを産まないという選択について)世界の中で孤独を感じていた読者は、その直観を哲学的に擁護している私の著作を読むことで大層慰められたことでしょう」(ベネター)
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