【未解決】世田谷区新町二丁目新築工事現場内女性殺人事件 犯行の“器用さ”に垣間見られる犯人像<後編>

画像は「警視庁」より

<前編>

 まず、被害者となったUさんは、前述の通り、「首を絞められ、両手首を刃物で斬りつけられた状態」で発見されている。そのことから、犯行時に犯人は、まず首を締め、その後に両手首を斬りつけたと見るのが妥当であると思われるが、実はその犯行自体が、筆者は妙に気になってしまうのだ。というのも、仮に殺害が第一の目的であったとするならば、跡が残るほどに被害者の首を絞めにかかることができた時点で、そのままシンプルに絞殺するのが普通だからだ。

 にもかかわらず、なぜ犯人はそのまま絞殺せずにわざわざ両手首を斬りつけるという“二度手間”をしたのだろうか。ましてや、事件当時Uさんは酒を飲んでおり、犯人目線でいえば、シラフの状態よりも絞殺しやすかったはずなのだ。それなのに、手首を、しかも両手を斬りつけたのは、おそらく、絞殺しそこねたがゆえの代替手段か、犯行中に「確実に死に至らしめよう」という考えに変わったかのいずれかではないだろうか。

 しかし、「両手首を斬りつけて失血死させる」という手口を咄嗟に行えるような、ある意味、“手慣れた”犯人が、酔った女性を絞殺しそこねるとはそもそも考えにくく、実際には、犯行の途中で考えを変えた、あるいは、何か別の理由があったと見るべきであろう。たとえば、まずはあえて加減する形で首を締めて気絶させ、身体を弄るなどの犯行に及んだ後で、「確実に仕留める手段」として、手首を斬りつけたというようなケースだ。

 仮にそのような話であるとすれば、犯人はもともと殺意が薄かったものの、身体を弄るなどしていた際にUさんの意識が戻ってしまい、慌てて斬りつけて殺害したという可能性もあるだろう。だとすれば、犯人にとって「気絶以上、絶命未満の状態でしか果たすことができない目的」が存在し、それが犯行の動機となっていた可能性を示唆しているように思われてならない。

 また、筆者が気がかりである点がもう一つある。それは、前述のように、その事情や思惑は不明であるもの、犯人は「絞殺」と「失血死」に繋がる2つの手法を、状況に応じて柔軟に使いわけているという点だ。アクション映画の登場人物ならばいざしらず、一般にマンツーマンでこうした犯行に及ぶ殺人犯は、いくつもの殺害手法を使いわけることはあまりなく、刃物ならば終始刃物だけ、銃器ならば銃器だけで犯行を完結させようとするケースがほとんどだ。

画像は「Getty Images」より

 従って、絞殺ベースで犯行を組み立てるタイプであれば、たとえ刃物を持っていたとしても、あくまでそれは脅し用のアイテムであり、相手を死に至らしめるために所持しているわけではないということである。そのため、この事件における犯人の手口は、さまざまな殺人事件の犯人を見てきた筆者のような人間にとっては、なんとも奇異な印象を与えるのである。

 なお、この事件からおよそ1年半後の2000(平成12)年12月に起きた『世田谷一家殺害事件』(上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件)の犯人は、被害者一家を刃物で殺害しているものの、一番幼い子供だけは、なぜか絞殺したとされており、桜新町の事件と同様に、その場の状況に応じて殺害手法を変える“手口の柔軟さ”がうかがえる。さすがにこれら2つの事件を無理やり結びつけようとは思わないが、くしくも両事件ともに、世田谷の閑静な住宅街で発生した未解決の惨殺事件であることが、なんとも気がかりなところである。

文=野島居慎太郎

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