この世がコンピュータシミュレーションならどれくらいのデータが必要か算出される!
この宇宙がコンピュータシミュレーションだった場合、いったいどれほどのデジタルデータ量が必要なのか。もちろん途方もない情報量になるのだが、最新の研究でその数字が算出されていて興味深い。
■宇宙の総情報量は?
この世界、この宇宙がコンピュータシミュレーションであるという“シミュレーション仮説”は、普通に考えて荒唐無稽に感じられるが、驚くべきことにそれなりの支持を受けている理論である。シミュレーション仮説の支持者にはあのイーロン・マスク氏もいるのだ。
ではもしこの宇宙がコンピュータシミュレーションであった場合、どれほどのデータ量が必要なのだろうか。
デジタルデータの最小単位がビットであるが、今回、英ポーツマス大学から発表された研究によれば、この宇宙の現実が全て巨大なシミュレーションによって構築されているとした場合の必要最低限の情報量は、なんと6億の兆兆兆兆兆兆兆兆倍ビット(6×10の80乗ビット)であるとの計算結果を報告している。
60年前、ドイツ系アメリカ人の物理学者、ロルフ・ランダウアーが提唱した「ランダウアーの原理(Landauer’s Principle)」によれば、情報を消去するには、それに相当するエネルギーを消失させねばならならず、ビットの生成と消去が多くなればなるほど、それに必要となるエネルギーも増大し、熱力学的エントロピーの上昇が起きることを主張している。つまり情報もまた質量やエネルギーと同じく実体をともなった物理量であると定義したのである。
ポーツマス大学の物理学者、メルビン・ボプソン氏は、この「ランダウアーの原理」に基づいて、このビットとエネルギーの関係を説明している。ボプソン氏は情報もまたエネルギーから物質へと(あるいはその逆も)状態が転移できると仮定し、膨大なデータを作り出すための膨大なエネルギーは、質量と等価であると説明している。
「質量エネルギー情報の等価原理を使用して、私は情報が宇宙の物質の支配的な形である可能性があると推測しました」とボプソン氏は科学系メディア「Live Science」に語る。
研究チームはこのランダウアーの理論をもとに、陽子や中性子などの亜原子粒子を情報と見なすことができるとして計算し、陽子または中性子には1.509ビットのエンコードされた情報に相当するものが含まれていることを導き出した。
次にボプソン氏は観測可能な宇宙の粒子の総数の推定値から、宇宙の総情報量は6億の兆兆兆兆兆兆兆兆倍ビット(6×10の80乗ビット)であると算出したのである。
■シミュレーション仮説は「本当に魅力的なアイデア」
こうして宇宙がコンピュータシミュレーションだった場合の総情報量を導き出すことに成功したボプソン氏なのだが、これで宇宙のすべてを説明できたわけではないことに言及している。今回導き出された数字は、宇宙のダークマター(暗黒物質)を説明するのに十分な大きさではないというのである。
「私が計算した数は私が予想したよりも小さい」とボプソン氏は言い、その理由はわからないと付け加えている。
計算で彼は自己に関する情報を保存できる陽子や中性子に焦点を当てたが、電子、ニュートリノ、クォークなどの存在を無視しており、重要なことが考慮されていなかった可能性があるということだ。そしておそらく他の粒子も自分自身に関する情報を保存できる可能性があることを認めている。
今回の研究には関与していないエール大学の天文学者グレゴリー・ラフリン氏は、とボプソン氏の導き出した数字は実相とは大きく異なっている可能性を指摘している。
「部屋の中の象を見て見ぬふりをしているのではなく、部屋の中の100億頭の象を無視しているようなものです」とラフリン氏は「Live Science」に語り、考慮されていない多くの粒子について言及して新たな“見積もり”について触れている。
そのような計算はすぐにはできないかもしれないものの、目に見える宇宙が実際には巨大なコンピューターシミュレーションであると推測する人々には役立つかもしれないとラフリン氏は説明し、このいわゆるシミュレーション仮説は「本当に魅力的なアイデア」だと力説する。
「情報量(基本的には“宇宙”を実行するために必要なメモリのビット数)を計算するのは興味深いことです。しかしそれが本当かどうかを知る方法はありせん」(グレゴリー・ラフリン氏)
はたしてこの宇宙はコンピュータシミュレーションであるのか。またそうであるとすればこの宇宙の真の総情報量はどれほどのものになるのか。壮大なスケールの興味深い探究が今後も続くことになる。
参考:「Live Science」ほか
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