「物質の透明化」にMITが初成功！ 不気味な量子効果ついに実証、透明人間もうすぐ誕生か？

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　理論上で想定されていた「物質が見えなくなる現象」が、最新の実験機器で遂に再現された――。MITの研究チームが、最先端の機器を駆使して原子を“透明化”することに成功したのだ。

■“見えない物質”を実際に再現できるのか

　光が一切差し込まない完全な暗闇では、我々の目はものを見ることができない。反射する光がまったくないからだ。とするならば、もしも光をまったく反射させない物質を作り上げることができれば、驚くべきことにそれは我々にはまったく見えないものになる。そして、視覚情報という観点からは、周囲にあるものは存在していないと同じことになる。

　オーストリアの有名な物理学者、ヴォルフガング・パウリによって1925年に最初に提唱された「パウリの排他原理」では、プロトン、中性子、電子などの互いに同じ量子状態を持ついわゆる「フェルミオン粒子」は同じスペースに同時に存在できないと主張した。

　このパウリの排他原理によれば、原子が身動きできないほど密集すると光の散乱を起こさなくなることが想定された。つまり、目には見えない物質が存在できる可能性があるのだ。

　この原理への理解をさらに推し進めたMIT（マサチューセッツ工科大学）の研究チームは、リチウム原子同位体を絶対零度近くまで冷却し、さらに「パウリの排他原理」に基づいて極めて高密度な状態にした時、原子が透明になって見えなくなることを理論上は突き止めた。そして、この現象は「パウリ・ブロッキング効果」と名づけられたのである。

　このパウリ・ブロッキング効果を現実に再現することはできるのか？ 要するに物質を“透明化”することが可能なのか。今回、MITの研究チームがこの難題に果敢に挑戦したのである。

　しかし、雲状の原子（アトミック・クラウド、atomic cloud）にパウリ・ブロッキング効果を実際に引き起こすのは至難の業である。

　それは信じられないほど低い温度を必要とするだけでなく、高密度状態をキープするために原子を超高圧で圧縮する必要もある。しかも、微に入り細に入った精緻な作業が求められるものであった。

■「パウリ・ブロッキング効果」が初めて実証される

　研究チームは、まずレーザービームの光子を調整して、反対方向に移動する原子とのみ衝突するようにし、原子の動きを遅くして冷却した。こうして研究者たちは、リチウム原子同位体の雲を絶対零度をわずかに超える20マイクロケルビンにまで凍結したのである。

　次に、密集させたレーザー装置を使って、1立方センチメートルあたり約1兆個の原子の密度まで圧縮した。

　さらに研究チームは超高感度カメラを使用して散乱光子の数をカウントし、細心の注意を払ってこの冷却して圧縮したアトミック・クラウドにレーザービームを照射したのだ。

　彼らの机上の理論が予測したように、それらの冷却されて圧縮された原子は、室温のものよりも38パーセント少ない光を散乱し、著しく暗い“見えない物質”にしたのである。

 
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