原子物理学の世界で「既存の科学では説明できない何か」とは? 常識が激変する”不気味な現象”
これまで科学者たちが原子核の外側から陽子と中性子を観察した時、彼らは陽子と中性子の明確なサイズと形状を測定することができた。しかし1983年、CERNの科学者チームは、原子核内からこれらの核子のサイズと形状を測定した時に、何か奇妙なことに気づいたのだ。
強い力が変化に抗すると予想されるように、それらの形状を維持する代わりに、研究チームは核子が本来あるべきよりもはるかに大きいように見えることを確認し、その結果、原子核内部のクォークが通常よりもはるかにゆっくりと動いていることが浮き彫りになったのである。
この現象は、それを発見したグループである「European Muon Collaboration」にちなんでEMC効果(EMC effect)と名付けられた。
■“パラダイムチェンジ”はすぐそこに迫っている
大きな原子核内でクオークのスピードが落ちる現象であるEMC効果を説明するために、数々の研究と検証が行われてきたが、今のところあまりうまくはいっていない。
しかし今回、トーマス・ジェファーソン国立加速器施設から発表された実験結果は、EMC効果の解決策をさらに一歩進めるものとして注目されている。研究チームは核子に対するEMCの影響をよりよく理解するために、初めて“観客”中性子にタグを付けて観測した。これらのデータの予備的な観察は、局所的な密度と運動量の変動がこの効果を推進している可能性があることを示唆している。
つまりEMC効果を測定し計算して予測できる手段の糸口が見つかったということになる。どこから手を着けてよいのかわからなかったEMC効果の理解に、有力な方向性が示されることになったのだ。
マサチューセッツ工科大学のポスドク研究員で論文の共著者であるタイラー・クッツ氏は声明の中で「EMC効果の起源を直接覗き込む新しい観測可能な変換測定の結果を提示します」と言及している。
ワシントン大学の核物理学者であるジェラルド・ミラー氏は2019年に科学系メディア「Live Science」に対し「最終的には、教科書に何かが載り、ゲームは終わります。競合するアイデアがあるという事実は、それがエキサイティングで活気に満ちていることを意味します。そしてついに、これらの問題を解決するための実験ツールができました」と語っている。
この先首尾よく事が運べば、EMC効果を解き明かすことで物質と基本的な力についての理解を完全に変えることができるかもしれない。その時、物理学の“教科書”は大きく書き換わることになるだろう。これまでの常識が覆り、我々の“世界観”が一新される“パラダイムチェンジ”はすぐそこに迫っているといえそうだ。
参考:「Inverse」ほか
文=仲田しんじ
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2024.10.02 20:00心霊原子物理学の世界で「既存の科学では説明できない何か」とは? 常識が激変する”不気味な現象”のページです。CERN、EMC効果、クォークなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで