ネオナチの象徴「黒い太陽」に秘められた本当の意味とは? 今こそ知るべきヒーゼニズムとグレート・リプレイスメントの闇
米ニューヨーク州バッファローで先月14日、軍服に身を包んだ男がのスーパーマーケットの駐車場で銃を乱射し、10人を射殺する事件が起きた。同州コンクリンに住む白人の男、ペイトン・S・ジェンドロン容疑者(18)が逮捕され、国内テロ、及び10件の第1級殺人罪で起訴された。
事件当日、ジェンドロン容疑者はスーパーの「トップス・フレンドリー・マーケット」の駐車場に車で乗り付けて発砲を開始した。3名を殺害、1名を負傷させた後、建物内に侵入して警備員と銃撃戦を繰り広げたが、ヘルメットと防弾ベストを着用していたためダメージを受けなかった。警備員を殺害してさらに銃撃を続けた。また、身に付けたカメラで犯行の様子を映し、ライブストリーミングサービス「Twitch」で生配信していた。
逮捕されたジェンドロン容疑者は無罪を主張するが、検察は有色人種に対する憎悪にもとづくヘイトクライムであると反論。同容疑者は自らをファシストで白人至上主義者だと記した文書をネット上で公開し、5カ月前から犯行の準備をしていたとみられている。ZIPコード(米国の郵便番号制度)から黒人が多く居住する地域を割り出し、スーパーマーケットの下見まで行なっていたという。
そして今、ジェンドロン容疑者が陰謀論やオカルトに傾倒していた可能性が指摘されている。同容疑者がネット上に公開した文書には、極右・白人至上主義の陰謀論「グレート・リプレイスメント」に関する記載があったからだ。
グレート・リプレイスメントは仏作家のルノー・カミュが提唱した差別的な思想で、有色人種の移民によって白人が統計的・文化的に置き換えられているという主張だ。特にイスラム系移民に対する偏見や憎悪から欧州各国で広く支持されているという。メディアによるアンケート調査では、米国でも3分の1以上の白人が移民による置き換えが生じていることに同意していることも明らかとなった。ジェンドロン容疑者もグレート・リプレイスメントに心酔して自らの犯行を正当化したとみられている。
また、容疑者の文書には「黒い太陽(Sonnenrad)」も描かれていた。黒い太陽は12個の鍵十字で日輪を表した文様である。もともとナチス・ドイツの親衛隊長官、ハインリヒ・ヒムラーがヴェヴェルスブルク城の一室に掲げたもので、後に独小説『タシ・ルンポの黒い太陽』でネオナチの「黒い太陽」という概念と結びつけられた。ウクライナのアゾフ連隊などもこの文様を政治宣伝に利用していることで知られる。
非営利メディア「The Conversation」には、米ブランダイス大学宗教社会学者のヘレン・A・バーガー氏による黒い太陽に関する考察が掲載された。これによると、黒い太陽には神秘的な要素が含まれ、現代の異教主義の一派「ヒーゼン(Heathen)」に深く関連しているという。
ヒーゼンとは、北欧文化に触発された多様なスピリチュアリティを実践する人々の総称である。1960年代、フロリダ州のヒーゼン集団はナチスの著作をもとにした思想を布教し始め、全米で支持を集めていく。ヒーゼニズムは他の異教徒にも影響を与え、白人至上主義に受け入れられた。現代では北欧やオーストラリア、ニュージーランドでも支持者が活動しているという。
そんなヒーゼニズムの母体となる異教主義「ペイガニズム」は、キリスト教以前の宗教儀式に考古学、歴史、神話などの理論とオカルトを取り込みながら発展してきた。ヤハウェ以外の神々を崇拝し、地球を神聖なものと見なし、季節の移り変わりを祝い、呪術を実践する。ほとんどのメンバーは白人だが、社会的な自由と、民族や人種の違いを含むあらゆる面で多様性を尊重しているという。
一方、ヒーゼニズムはペイガニズムとは異なり、厳密に北欧神話を信仰の根拠とする。倫理的な問題を話し合ったり、神々を祝うための方法を模索したりする際は中世アイスランド語の文献を使用する。重要な教典は『スノッリのエッダ』と『古エッダ』である。古い文字体系であるルーン文字が儀式や占いに使用される。ヒーゼンは白人以外を受け入れず、自らの信仰を白人としてのアイデンティティと結びつけ、ナチスの著作に記された思想を取り入れたとされる。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊ネオナチの象徴「黒い太陽」に秘められた本当の意味とは? 今こそ知るべきヒーゼニズムとグレート・リプレイスメントの闇のページです。ナチス、陰謀論、銃乱射事件、ハインリヒ・ヒムラー、黒い太陽などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで