ハエは『マトリックス』の世界に生きていると判明! 叩くのが難しい本当の理由(最新研究)
稀代の剣豪・宮本武蔵は飛んでいるハエを箸で捕まえたともいわれているが、我々凡人にとってハエはなかなか捕まえられるものではない。それもそのはず、ハエは流れている時間が異なる世界で生きており、まるで映画『マトリックス』のように、彼らから見た人間は、スローモーな生物であるというのだ。
■ハエは『マトリックス』のネオだった?
実際のところハエはそれほど賢い生き物ではなく、脳もきわめて小さいうえ、いともたやすく殺虫灯の餌食になってしまう。しかし、知性に雲泥の差があるにもかかわらず、人間側の武器がハエ叩きの場合、彼らを成敗するのは容易いことではない。いったいなぜか? その理由は、ハエと人間では世界の見え方が違うからである。
人間を含むすべての動物は、本質的にシームレスな映像として世界を見ることができる。しかし、実際には目から送信された個々の画像をつなぎ合わせて脳で映像として認識しているのだ。つまり、ビデオ映像と同じく、高速の紙芝居として世界を見ているのである。
紙芝居をノンストップ映像として認識するための速度は生物種によって異なり、その速度は「フリッカー融合頻度(flicker-fusion frequency)」と呼ばれている。
人間のフリッカー融合頻度は約60Hzで、1秒間に約60回以上の点滅を点滅とは認識できず、ずっと灯っている明かりとして見ているのである。
一方のハエは約250Hzで、人間の約4倍である。ハエは1秒間に250回以下の点滅であれば、それが点滅であると認識できるのだ。つまりハエにとって人間の動きの速度は、自分たちの4分の1以下であり、なかなか次の絵が出てこない紙芝居のように実にスローモーに見えていることになる。
映画『マトリックス』の銃撃戦のシーンで、ネオが弾丸を手で払ったり、のけぞって避けたりするように、ハエはハエ叩きをいとも簡単にかわしているというわけだ。
■フリッカー融合頻度が主観的な時間に影響している可能性
空中を飛行する生物の大多数は人間よりもフリッカー融合頻度が高いが、それは障害物にすばやく反応して回避することが生死にかかわるためもたらされた進化であり、フリッカー融合頻度が低い種は淘汰されてしまったという。
最もフリッカー融合頻度が高いハエは捕食性の「キラーフライ」で、狙った獲物のハエの周囲を数回周ってから組みついて地面に落とすことができる。そのフリッカー融合頻度は実に約400Hzだ。人間の6倍以上である。
なぜ、キラーフライはそんなに速いのか? 彼らの目の光検出細胞は、他のハエよりも多くのミトコンドリアが含まれており、視力が飛躍的に強化されているということだ。
もちろん人間にとってもハエにとっても1秒は同じ1秒なのだが、フリッカー融合頻度が違えば時間の感じ方も違うと考えるのは自然なことだ。ハエにとってこの世の時間の流れ方はイライラするくらいゆっくり感じられているのかもしれない。
たとえば、我々人間は齢を重ねるほどに1年がアッという間に感じられてくるといわれているが、それはフリッカー融合頻度にも関係があるのだろうか。
さまざまな生物種のフリッカー融合頻度を研究してきた専門家、トリニティカレッジ・ダブリン(アイルランド)のアンドリュー・ジャクソン准教授によると、その可能性は高いという。
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2024.10.02 20:00心霊ハエは『マトリックス』の世界に生きていると判明! 叩くのが難しい本当の理由(最新研究)のページです。目、時間、ハエ、マトリックス、フリッカー融合頻度などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで