「人体蘇生」専門のマッドサイエンティストが実在した! 死刑囚の遺体を入手し…
※ こちらの記事は2018年5月9日の記事を再掲しています。
今日の医学の発展の影に、狂気と犠牲が多分にあったことは否めない。残念ながら、人道にほど遠い“医学実験”が繰り返されてきたことは、歴史をひもとけば明らかだ。
■許可された「犬の蘇生実験」
そんな医学界のダークサイドで、燦然と輝く男がロバート・コーニッシュではないだろうか。彼は不本意ながらもマッドサイエンティストの名をほしいままにした実在する医師だ。わずか18歳でUCバークレーを卒業、その後博士号を取得した俊才だったという。そのため、彼の発案した「犬の蘇生実験」について、大学側も面食らいはしたものの、許可を出すことになったらしい。
1934年3月、コーニッシュ博士の研究室は、異様な空気に満ちていた。窒息死させたばかりのフォックス・テリアが、シーソーの上にくくりつけられてあった。イエスにより復活した男にちなんで名づけられた「ラザロ4世」だ。
ギィーッ、ギィーッ――。血流を保つため、シーソーが耳障りにきしむ中、アドレナリン注射後、酸素を腔内へ吹き込む……、ラザロ4世は息を吹き返した! しかも、それまでのラザロ1世~3世は蘇らなかったため、これが初めての実験成功になったのだった。
だが、この世紀の実験に一般市民は嫌悪した。博士はその後、カリフォルニア大学を追われ、自宅にこもって実験を再開しなければならなくなったという。進退窮まったように見えたが、彼の狂気に目をつけたものがいた。
映画会社「ユニバーサル・スタジオ」だ。同年に制作、翌年公開された「Life Returns」は、明らかにB級ホラーではあったが、劇中でラザロ4世の蘇生シーンを使っていたため、皮肉なことに、彼の研究を記録した唯一の、現存する映像となっている。とはいえ、社会的には、博士に対する風当たりはますます強くなっていったようだ。
■死刑囚の蘇生実験を企画
彼の究極のもくろみは、人間に対して同一の実験を試みることだった。彼の尋常ではない申し出は、意外にもカルフォルニア州で認められることになる。さらに、トーマス・マクモニグルというサン・クエンティン州立刑務所に収監されていた死刑囚が「実験台になりたい」と志願してきたので、渡りに船となったようだ。
ところが、マクモニグル本人はよくても、刑務所長のクリントン・ダフィーはYesと言わない。ガス室での処刑後は部屋の換気に30分かかるため、執行直後に入室が必要となるコーニッシュ博士の実験には配慮できないというのだ。
この2人の論争は全国紙のヘッドラインを大いににぎわせたが、最終的にマクモニグルの蘇生実験は実現せず、彼はガス室の露と消えていった。
この事件のあと、コーニッシュ博士は完全に狂人扱いとなり、隠遁生活を余儀なくされたという。
心肺蘇生法(CPR)が一般的に広まったのは1950年代なので、それ以前のアメリカで「蘇生」などというと、なにやら宗教的タブーめいていたのではないか。ラザロ蘇生の奇跡は、人類全体の罪をキリストが贖罪し、生に立ち返らせることだというが、コーニッシュ博士の実験は、神への冒涜と受け止められたのかもしれない。
死者を蘇らせる――これほど、マッドサイエンティストにふさわしい実験はないだろう。まさに、天才と狂人は紙一重だ。
(文=佐藤Kay)
参考:「Mad Scientist Blog」、ほか
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