フォトショ以前のコラージュ写真と戦前の犯罪現場写真集! 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本
――【連載】驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する想像を超えたコレクションを徹底紹介!
「驚異の陳列室」を標榜し、写真集、画集や書籍をはじめ、5000点以上に及ぶ奇妙な骨董品を所蔵する大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。
SNS投稿などでそのコレクションが話題となり、九州のみならず全国からサブカルキッズたちが訪れるようになった同店。今では少子高齢化にあえぐ地方都市とは思えぬほど多くの人が集まる、別府の新たな観光名所になっているという。
本連載では、そんな「書肆ゲンシシャ」店主の藤井慎二氏に、同店の所蔵する珍奇で奇妙な本の数々を紹介してもらう。
■アナログな手法で作られた昔のトリック写真集
――前回は「死後写真」の続きと「隠された母」という、ダゲレオタイプに写された当時の奇妙な風習について教えてもらいました。わずか1世紀くらいの間にカメラの技術が飛躍的に進化したため、こうした写真は今の人が見たら違和感を覚えてしまいますよね。
藤井慎二(以下、藤井) そうですね。そこで、今回は「デジタル登場以前には、こんなふうに面白い写真を撮って加工していたんですよ」といったテーマの写真集『Faking it: Manipulated Photography Before Photoshop』を紹介しましょう。Photoshop登場以前にコラージュされた作品などを集めたもので、インターネットやデジタルカメラがなかった時代には、こんな撮り方があったのかと驚かされます。
――写真を実際に切り貼りするという、アナログな方法なんですかね?
藤井 『Larger Than Life』は、実際にそのような手法でつくられた作品を集めた写真集です。人が乗れるくらい大きな魚や野菜の写真をコラージュしてつくりだしていますね。
――巨大なとうもろこしに人が乗っていますね……。これは新聞などへの投稿用に作られたとか? UFOや妖精のフェイク写真を撮って、世間をにぎわせようといったもくろみがあったのでしょうか?
藤井 基本的には、売れ筋のポストカードとして作られていました。でも、中にはフェイクニュースであるにもかかわらずに、信じてしまった人もいるでしょうね。
■謎の刊行組織「犯罪科学研究同好会」の情報求む
藤井 続いては、うちで人気がある「犯罪」ジャンルの本も紹介しましょう。1930年刊行の『犯罪現場写真集(BILD DES VERBRECHENS IN ELAGRANTI)』です。タイトルからもわかるように、犯罪現場の写真に事件の概要からなる、主にドイツの事件を扱った本ですが、巻末には日本の現場写真も収められています。性風俗研究家の松沢呉一は、『死体の本』で「我が国初の死体写真集」と紹介しています。絞殺死体の写真も載っていますが、これ、TOCANAでも掲載できないですかね?
――えぇ……。もろに死体写真ですからね。掲載時に写真載っていたら、TOCANAは死体写真も普通にOKということで。
藤井 この本の詳細はよくわからないのですが、奥付を見ると「犯罪科学研究同好会」という組織が発行している、非売品らしいです。会員向けに配られたのでしょう。
――国立国会図書館のデータベースにも『犯罪現場写真集』は犯罪科学研究同好会が出版者として記載されています。
藤井 面白いのが、当時平凡社から出版された江戸川乱歩全集に『犯罪図鑑』という付録があったのですが、犯罪現場の写真などを掲載していたため、発禁となってしまいました。ところが、そこで紹介されていたのは『犯罪現場写真集』と同じ写真だったんですよ。もしかしたら、乱歩もこの写真集を手に取っていたのかもしれません。
――『犯罪現場写真集』の刊行が1930年で、『犯罪図鑑』が1932年だから、江戸川乱歩が転載したんですかね。ところで、先ほどから名前の挙がっている、犯罪科学研究同好会について、何かわかっていることはあるんですか?
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2024.10.02 20:00心霊フォトショ以前のコラージュ写真と戦前の犯罪現場写真集! 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本のページです。江戸川乱歩、大分県、書肆ゲンシシャ、犯罪現場写真集、トリック写真集、犯罪科学研究同好会などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで