古代ペルシアの恐るべき処刑法「スカフィズム」とは? 犠牲者を長く苦しめて殺す残酷性の真実

古代ペルシアの恐るべき処刑法「スカフィズム」とは? 犠牲者を長く苦しめて殺す残酷性の真実の画像1画像は、「All That’s Interesting」より

 人類は怖ろしく刺激的な処刑法を開発してきた。それぞれの時代において日常的に使われる道具も、犯罪者や敵対者を殺害するのに利用された。これらの道具から生み出された処刑法が、後世まで語り継がれるほど残酷であることも少なくない。

プルタルコスの著書に見られるスカフィズム

 人類が開発した最も恐ろしい処刑法の1つに「スカフィズム」がある。スカフィズムは、「小舟」や「ボウル」を意味するギリシア語の「Skaphe」に由来する。

 スカフィズムは、現在のイランを中心に成立したアケメネス朝ペルシアで、紀元前500年頃に行われたと伝えられる。犠牲者を2隻のボートの間に括り付け、牛乳とハチミツを飲ませ、さらにハエが群がるように牛乳とハチミツを顔に塗る。犠牲者がボートの中で排便すると、ウジ虫が湧いて、犠牲者の肉体を貪り食いながら成長する。犠牲者はゆっくりと長時間にわたって苦しみながら死に至る。

 46~120年頃の帝政ローマで活躍したギリシア人思想家プルタルコスが、著書『アルタクセルクセスの生涯』の中でスカフィズムについて言及した。

 紀元前404~358年に在位したアケメネス朝ペルシア王アルタクセルクセス2世は、弟キュロスが王位を奪うために兄を殺害しようとして失敗した。最終的に兵士のミトリダテスがキュロスを殺害するが、アルタクセルクセスはミトリダテスに口止めし、アルタクセルクセス自身がキュロスの命を奪ったことにした。しかし、ミトリダテスは王との約束を破り、酒宴でキュロスを殺害したことを自慢した。激怒したアルタクセルクセスはミトリダテスをスカフィズムに処した。

 このときの状況を記述した『アルタクセルクセスの生涯』によると、ボートに拘束されたミトリダテスは、ゆっくりと肉体を虫や獣に食い荒らされ、17日後に死亡したという。

古代ペルシアの恐るべき処刑法「スカフィズム」とは? 犠牲者を長く苦しめて殺す残酷性の真実の画像2画像は、「All That’s Interesting」より

12世紀の歴史家はプルタルコスの影響を受けた

 スカフィズムに関する記述はプルタルコスの著書にしか見られないと考えられてきた。しかし、12世紀の東ローマ帝国で活躍したギリシア史家イオアンネス・ゾナラスの著書でも、スカフィズムが言及されていることが発見された。同著の中では次のように書かれている。

「これ(犠牲者に牛乳とハチミツを塗ること)は毎日繰り返され、その結果、ハエ、スズメバチ、ミツバチが甘さに惹かれ、彼の顔に群がり、……哀れな男を苦しめ、刺す。さらに、牛乳とハチミツで膨らんだ彼の腹は、液状の排泄物を排出し、これらの腐敗したものによって、あらゆる種類の虫が大量に繁殖する」

 死刑執行人は、犠牲者の性器と肛門に牛乳とハチミツを追加で注ぐため、そこに虫が群がり、傷口は細菌に感染して膿を出す。その結果、体内でウジ虫がどんどん繁殖し、引き寄せられたネズミなどが肉体をかじって体内に侵入することもあったという。

 ゾナラスの記録は、アケメネス朝ペルシアが存在しない時代のものであり、内容もプルタルコスの記述と一致している。ゾナラスは『アルタクセルクセスの生涯』の影響を受けたと考えられるため、スカフィズムの研究で参照されるべき文献からが除外される。

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