妖怪アマビエを凌ぐ「最強の護符」を発見!「疫病退散を叶える日本の護符ベスト10」
妖怪アマビエを凌ぐ「最強の護符」を発見!「疫病退散を叶える日本の護符ベスト10」を宗教学者の島田裕巳が発表!
今夜、20時57分から放送される「マツコの知らない世界」(TBS系列)は、数々の妖怪伝説が残る日本最強の妖怪村に大潜入!「妖怪ってなに?」というマツコ・デラックス氏の質問に、怪奇ユニット「都市ボーイズ」のはやせやすひろ氏は”人間の心に入り込み癒してくれる存在”と熱弁。座敷童子、アマビエ、カッパ……個性的で可愛らしい妖怪の世界に迫る…!
昨今、疫病退散のご利益があるとして、一躍知名度を高めた妖怪といえば”アマビエ”だ。もともとは19世紀中盤に現れ、疫病の流行を予言するとともに、「自らの姿を描いて護符にするように」という防止策を人々に授けたと言われている。その背景には、病気の原因を掴むことができなかったために、疫病は一種の祟りであると信じられてきたという経緯がある。そのため、厄除けを目的とした護符は日本各地に存在しているという。
2020年8月、宗教学者・島田裕巳氏による『疫病退散〜日本の護符ベスト10』の刊行を記念して、本書から「角大師」と「蘇民将来」にまつわるエピソードを紹介している。当時の記事を再掲する。
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※ こちらの記事は2020年8月25日の記事を再掲しています。
知名度を現在も着実にアップさせているキャラクターが、妖怪アマビエだ。元はといえばこのアマビエ、19世紀中盤に肥後国(熊本県)の海に現れ、疫病の流行を予言するとともに、防止策を授けたとされている。それは、「自分の姿を写して、人々にすぐに見せてくれ」、つまり自らの姿を描いて護符にしなさいというものだった。
護符は疫病などから身を守るためのもの。19世紀中盤に登場したアマビエは、そのなかでかなり新しい部類に入る。なぜなら、人類の歴史は、疫病との闘いの歴史でもあったからだ。新著『疫病退散〜日本の護符ベスト10』を刊行したばかりの宗教学者の島田裕巳氏はこう語る。
「病気の原因を掴めなかった古代の日本人は、疫病を神の力によるものと捉えていました。その痕跡は神話の世界にも見てとれ、『日本書紀』で述べられる伊勢神宮に天照大神が祀られる経緯にも疫病が関係しています。疫病のような祟りをもたらすおそろしい神を丁重に祀れば、疫病を退散させてくれる力を発揮すると古代の人々は考えたのです。護符も疫病に抗う重要な手段として、古くから用いられてきました」(島田氏)
日本各地には、1000年以上という極めて長い歴史を持ち、現在も厄除けに重宝されている護符がある。これから紹介する2つの護符はその代表格といえる。これらの護符が生まれた背景にある説話や伝承を知れば、思わず手に入れたくなるはずだ。
ひとつは、疫病除けとして今日も広く用いられている「角大師」(つのだいし)の護符だ。その名の通り、この護符には、痩せこけて2本の角を生やしたおどろおどろしい鬼の姿が描かれている。ただし、この鬼は疫病神ではない。正体は平安時代の僧・良源。元三大師とも呼ばれる彼は、天台宗のトップとして比叡山の復興に尽力した人物でもある。顔立ちは美形だったとされているが、鬼のような姿で描かれたのには理由があるという。
「瞑想中に現れた疫神に流行中の疫病に罹るように告げられた良源は、それを受け入れました。しかし、あまりにも堪え難い苦痛を覚えたために、天台宗に伝わる瞑想法を実践し、疫神を追い出します。良源はこのときの自らの姿を弟子に描かせると、疫病よけとして配るように命じました。その際の姿こそ、今日も伝わる角大師の恐ろしい姿だったのです。自分の姿を描かせた伝承は他の護符にもあり、後年のアマビエに反映されている可能性もあります」(同)
「角大師」と同様に古くから用いられ、各地で残っている護符として「蘇民将来」(そみんしょうらい)がある。こちらは絵ではなく、「蘇民将来子孫家之門」「蘇民将来之子孫者」などと書かれたものだが、最古のものでは平安京遷都よりさらに前となる長岡京の跡から木簡が出土している。
蘇民将来なる人物はいったい何者なのか。その伝説を記したもので最も古いのが、鎌倉時代の書物に引用されるかたちで残っている奈良時代の『備後国風土記』逸文だ。
嫁取りのための旅の途中だった武塔天神は、将来を名乗る兄弟と出会い、宿を貸してくれないかと頼む。裕福な弟・巨旦将来がその頼みを断ったのに対して、貧しい兄の蘇民将来は宿を貸し、粟飯をご馳走するなどしてもてなした。
数年後、嫁取りに成功した武塔天神はお礼がしたいと蘇民将来のもとを再度訪れる。子の有無を聞かれた蘇民将来が妻と子どもがいると答えたところ、武塔天神は、茅の輪を腰に着けておくように命じた。するとその夜、茅の輪を着けていない者は殺され、滅ぼされてしまう。
武塔天神は、私は素戔嗚尊(すさのおのみこと)だと名乗り、「これから疫病が流行したときには、蘇民将来の子孫だと言って茅の輪を腰に着けていればそれを免れることができる」と告げたのだった。
「もともとは海外から入ってきた話とされていますが、どの国の話なのかは定かではありません。この伝説から、武塔天神と同一視されている牛頭天王や素戔嗚尊、薬師如来を祀る寺社では、“蘇民将来子孫家之門”などと記した護符が疫病除けとして配られています。特に有名なのが祇園祭で知られる京都の八坂神社です。前身である祇園社は牛頭天王が主たる祭神でした」(同)
八坂神社の祇園祭は、もともとは、平安時代に京都で流行した疫病を鎮めるために始められたという。同神社などで夏に行われている茅の輪くぐりも、この伝承にまつわるものだ。
また、蘇民将来の信仰は各地で土着の信仰などと結びつき、さまざまなかたちで受け継がれている。裸祭りとして残ったのが岩手県に伝わる蘇民祭だ。岩手といえば、コロナウイルスの勢力が全国に広がるなかで、最後の砦となっていた県でもある。蘇民祭は、同県南部の11ヶ所で例年1月から3月の間に行われている。
このうち、歴史、規模ともに代表格と言えるのが奥州市水沢の古刹・黒石寺で開かれるものだ。1000年を越える歴史がある黒石寺の蘇民祭は、旧正月7日から翌日にかけて行われる。祭りの5つの行事の最後を飾るのが、五穀豊穣の地を占う蘇民袋争奪戦だ。袋には「蘇民将来子孫門戸也」と書かれた六方形の護符が入っており、東西に分かれた若者たちが、真冬の凍てつく寒さのなか、この袋を激しく奪い合う。
祇園祭などの全国の厄除け祭りが新型コロナウイルスの影響を受け中止や縮小に追い込まれるなか、黒石寺をはじめとする岩手各地の蘇民祭は、1月から3月にかけて、例年通り決行された(3月17日の早池峰神社は神事のみ行い、蘇民袋争奪戦は中止)。その後、岩手では7月下旬まで感染者が出ることはなかった。「蘇民将来」や人々の祈りのパワーは2020年も健在だったのだ。
岩手の地元紙では、「極寒に水垢離や火の粉で身を浄める蘇民祭は不思議な力を持っている」とする蘇民祭保存会関係者の声も伝えている。ちなみに、岩手では一関地方の神社が六芒星型に配置されて結界になっているという説も浮上し、別の地元紙がとりあげている。島田氏は「科学が発達したとはいえ、現代の私たちが俗信と無縁になったわけではないことも事実です」と語り、こう続ける。
「護符はただの迷信であるとも言えますが、社会不安が著しく増大した状況におかれてみると、昔の人々が疫病除けに頼った気持ちも理解できるでしょう」(同)
ウイルスの正体こそわかっているものの、出口が見えない日々はまだまだ続く。祭りの開催も難しくなっている現在、護符に祈りを託した先人たちの知恵を拝借するのがベストなのかもしれない。
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