日本人がコロナで「アマビエ」に頼った理由を民俗学的に解説
なぜ日本人は新型コロナで妖怪「アマビエ」に頼ってしまったのか!? 読み解くカギは『遠野物語』にあった? 民俗学者・畑中章宏インタビュー

日本の民俗学の礎を築いた柳田国男。その初期作品の中でも名高いのが1910年発行の『遠野物語』である。現在の岩手県遠野市付近の妖怪や山の人、臨死体験などを現地の佐々木喜善から聞き書きし、自ら訪ね歩き、編んでいる。原文は文語体なので今の時代には読みづらい。それを現代語の、しかも関西弁に訳したのが民俗学者・畑中章宏氏の『関西弁で読む遠野物語』(エクスナレッジ)だ。
今回は本書が関西弁で書かれた理由から、畑中氏の語る民俗学の世界まで。不思議ながらも腑に落ちる話をお届けする。
■関西人・柳田国男の身体が聞いた音を現代語に訳した

まずは、2020年6月26日。東京・下北沢にある本屋B&Bで行われた畑中氏のイベント『東北の怪談を関西弁になんで訳したんでっか!?』をレポートする。この日は新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため本来は定員100名の会場を20名に限定し、Zoom配信も行うイベント開催となった。
イベント冒頭、畑中氏がこの本を書いた理由を柳田国男の簡単な紹介とともに語る。
畑中章宏氏(以下、畑中) なぜ『遠野物語』を関西弁で訳したのか? そのひとつの答えは、私が関西出身で、柳田国男も関西の人だからです。
柳田は飾磨県神東郡田原村辻川(現:兵庫県神崎郡福崎町辻川)で生まれ、12歳のときに茨城県南部の布川(現:利根町)に引っ越しました。その後、第一高等中学校を経て、東京帝国大学(現:東京大学)卒業後、農商務省に入省します。そして、全国の農村を周ったり、新渡戸稲造の推挙で、国際連盟の委任統治委員を務めたりします。柳田はエリートなんですね。それでも地方に目を向け、民俗学をまとめていきました。

柳田が12歳まで育ったところは、姫路から北に電車で30分ほどいった場所です。言葉でいうと中国地方の方言が混ざっています。ですが、本人は最晩年「上方なまりが生涯抜けなかった」と書き残しています。私も柳田がNHKラジオに出たときの肉声を聞きましたが、まるで上方落語の大御所・桂米朝を思わせる語りでした。実はこの二人は生まれたところも近く生活環境も似ているのです。
桂米朝の話は別として関西弁に訳した理由に戻りますと、もともと『遠野物語』は、遠野地方の東北弁を文語体に訳したものです。日本の各地に河童、天狗、山人の話がありますから、その地域的な偏差を解消し、開かれた日本語にするために柳田は文語体にしたと考えられます。
しかし、遠野物語を柳田は、関西人の耳、そして身体で聞き取りました。本書にも書きましたが、例えば柳田が遠野の取材の後、実家に帰ってお母さんに伝えるならこう話すでしょう。
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