なぜ日本人は新型コロナで妖怪「アマビエ」に頼ってしまったのか!? 読み解くカギは『遠野物語』にあった? 民俗学者・畑中章宏インタビュー

■21世紀の新しい“民俗”文化を生み出していきたい

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畑中章宏氏(撮影=松本祐貴)

 畑中氏の講演は『遠野物語』に登場する河童、オシラサマ、座敷わらしなどの話を朗読し、解説と続いていった。

 柳田は自身の民俗学の中で「常民」という言葉を用いた。常民は民俗伝承・文化を保持している階層であり、普段使いの言葉でいうと“庶民”が近い。畑中氏によると“民俗”とはその常民による身体・精神的活動だという。

畑中  今回のコロナ禍の中で、文化として生まれたものは、音楽や演劇の舞台からではなく“民俗”からでした。それが今もてはやされている「アマビエ」です。鳥のような、魚のような3本足の妖怪ですね。これは、江戸時代後期に肥後国(現:熊本県)に現れ、病を予言した妖怪です。

  過去を振り返ってみても、疱瘡などの未知のウイルスに対する庶民の切実な行動は「まじない」でした。庶民はお守りや御札を買ったり、病がこないように妖怪の絵を書いたりしていたのです。個人ではなく国家としても、疫病の流行があると、大仏を建立したり薬師如来、スサノオノミコトを祀るなどの対策をとっていました。

  江戸時代に流行した現在のインフルエンザは「お染風邪」と呼ばれ、庶民は「久松留守」という張り紙をして防ごうとしていたそうです。これは「お染久松」という歌舞伎のストーリーからきています。お染と久松は恋人同士なので、「あなたの大好きな久松さんは留守だから、お染(風邪)さんは会いに来ないでね」という意味ですね。

  いまの僕たちも、コロナウイルスを目の前にすると民俗的なものを信じて、すがるしかない状態です。江戸時代の「アマビエ」の姿を借りるのもいいですが、今は21世紀。僕たちの手で新しい民俗学的な文化や妖怪も生み出すときが来ているのではないでしょうか。

 前編では東京・下北沢の本屋B&Bで行われたイベントの模様をお届けした。後編では、畑中章宏氏に単独インタビューを実施。さらに深く、民俗学と、その学問が現在に果たす意味を聞く。

~つづく~

後編(16日16時に配信予定)では畑中氏が民俗学の成り立ちや大ヒット映画の背景まで暴露!


取材協力=下北沢B&B
http://bookandbeer.com/


【刊行情報】

関西弁で読む遠野物語』(エクスナレッジ)
柳田 国男(著)/畑中 章宏(著・翻訳)/スケラッコ(イラスト)

関西出身の小説家・町田康氏が推薦。
「読んでるっていうより聴いてる感じ。ええ感じ。ええ感じの『遠野物語』」。
岩手県遠野市の妖怪などの伝承をまとめた『遠野物語』は1910年に出版された民俗学の嚆矢となった本。その文語体を大阪出身の民俗学者・畑中章宏氏が関西弁に翻訳。スケラッコ氏のかわいらしいイラストも作品の理解に一役をかっています。声に出して読みたくなる新しい『遠野物語』がここにあります。

【プロフィール】

畑中章宏(はたなか・あきひろ)
1962年、大阪生まれ。民俗学者・作家。
著書に『災害と妖怪』(亜紀書房)『天災と日本人』(ちくま新書)『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)『死者の民主主義』(トランスビュー)など。民俗学をベースに災害や妖怪、民主主義など現代の問題を論じる気鋭の民俗学者。最新刊『関西弁で読む遠野物語』が発売中。
本人ツイッターアカウント @akirevolution

文・写真・取材=松本祐貴

松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。フリー編集者&ライター。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)。新刊に編集として関わった『これからの時代を生き抜くための生物学入門』(辰巳出版)五箇公一著。
・ ブログ「~世界一周~ 旅の柄」 http://tabinogara.blogspot.jp/

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