「女性が男性よりも働き者」はグローバルな事実! 女性が1.3倍の歩行数、6つの異なる民族を調査

“働き者”は今のところ女性にこそ相応しい称号であることか最新の研究からも説明されている。この傾向は人類学的なレベルで共通するグローバルな現象であるいうから興味深い。いったい何が女性を働き者にしているのか。

多様な社会におけるジェンダーの役割分担

 狩猟採集社会では男性が狩猟者であり、女性が採集者である。男性は遠くまで狩りに出かけているが、多く獲物が獲れる時もあれば、何も獲れずに帰ってくることもある。しかし狩りがどうであれ、家庭を守る女性は日々変わらぬ家事をして家族の生活を支えている。

“一家の大黒柱”である現代の父親もまた毎日外へ出かけ会社や現場、あるいは出張や出稼ぎで家族のために身を粉にして働いているというが、その働きぶりは“不透明”であるため実は家族にもその実態がよくわからない一面もありそうだ。

 その一方で家事のほとんどをこなすと共に、場合によっては外でも働く母親は“働き者”を地で行く存在だ。そして最新の研究でも、世界中どこでも女性のほうが“働き者”であることが示されている。

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画像は「Pixabay」より

 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンと中国・蘭州大学の合同研究チームは中国農村部にあるチベット国境地帯の農業および牧畜グループの調査を実施した。この地域は、文化的多様性が非常に高い地域である。研究チームはこのような多様な文化を持つ社会におけるジェンダーの役割分担を詳しく調査・分析したのだ。

 基本的に世界中の成人の大半は結婚していて、結婚は一種の契約であるため、婚姻関係から得られる費用と便益は双方にとってほぼ等しいはずであるのだが、どちらかが離婚をちらつかせて脅すなどのパートナー間の不均衡な力関係は、不平等な役割分担につながる可能性がある。

 婚姻関係にある男女の力関係を不平等にする主な要因の1つが、妻が夫の家庭に嫁ぐという父方居住制(patrilocality)の慣習である。嫁いだ妻には周りに血縁者、つまり味方がおらず、交渉力という点で不利になる傾向が強まる。そして嫁いだ先の家庭で嫁として“フルタイム”の家事に取り組むことになるのだ。

 父方居住制はグローバルな慣習であるが、現代の都市生活者の間ではどちらの家族にも属さずにカップルで独立した暮らしをはじめるケースも多い。また一部の文化では、夫が婿として妻の家族に属する母方居住制の慣習も残っている。

 婚姻関係にあるものの男女どちらも家を出ず、独身時代と変わらず外でデートや逢瀬を行う二重居住制(duolocality)は今ではほとんど見られないが、完全になくなったわけではないようだ。

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女性は男性よりもはるかに一生懸命働いている

 しかし幸いなことに研究チームが着目した多様性に富んだチベットの国境地帯では、これら4つの異なる居住制パターンのすべてが、さまざまな民族グループに見られるのである。

 研究チームは6つの異なる民族文化の農村の暮らしに焦点を当て、500人以上の人々に結婚後の居住制の状態についてインタビューするとともに、労働量を測定するためにウエアラブルのアクティビティトラッカー(fitbitなど)を普段から着用するよう求めた。

 収集したデータを分析した研究チームが最初に発見したのは、女性は男性よりもはるかに一生懸命働いているということだ。女性は1日平均1万2000歩強歩いていて、一方で仕事でより遠くへ移動しているはずの男性は9000歩強であったのだ。つまり女性は狭い行動半径の中であっても頻繁に歩いており、一方で男性は長距離を移動したとしてもあまりこまめに動いてはいないことになる。

 次に発見したのは男性であろうと女性であろうと相手の家族に移り住んだ者は実家にいる時よりも家庭内の労働量が増えることであった。このケースの大半は嫁いだ妻に当てはまり、女性が男性よりも働き者であることの要因の1つでもある。

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 またどちらの家族にも属さずに独立して暮らすカップルにおいても、女性のほうがより多く働いていることも浮き彫りとなった。分析によれば、労働量が男女平等になるのは男性が婿養子に入る母方居住制のケースのみであるということだ。

 仕事量における男女の不平等は、家庭の外でも起こっているという。研究チームよれば仕事の現場において、女性は男性よりも負荷の高い仕事を負う可能性が高いということだ。

 しかし物事はゆっくりと変化している。女性がますますパートナーと自分の家族の両方から距離を置くようになっているため、女性の交渉力は高まっているのだ。これは女性の経済的独立、蓄財、高等教育、および自律性のレベルの増加によってさらに後押しされる。これらの変化は、多くの都市社会、産業社会、脱工業化社会で、今後男性がより多くの仕事を引き受けるように導くものになるということだ。

 徐々にではあるものの、社会が男女平等へと着実に進んでいることは女性のみならず社会にとっての光明といえるだろう。

参考:「Science Alert」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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