死の瞬間はなぜ安らかなのか? 臨死体験者の脳内で大量分泌されるある物質

死と隣り合わせの体験は、恐ろしいと思うかもしれない。しかし臨死体験(NDE)をしたことがある人々はその瞬間に平和や平静を感じていたことが報告されている。
NDEは頭部損傷、心臓発作、呼吸停止を含む苦痛を伴った出来事と関連付けられることが多い。たとえば、ビジネス・コンサルタントであるジュリア・ニコルソンは、1980年に自動車事故で死にかけたとき、愛する人の顔が一人ずつ目の前で鮮やかにフラッシュした、と語っている。
最近のインタビューで彼女は「病院に着くまで、痛みを感じたことを覚えていません」と「ニューズウィーク」誌に話している。
他には生死を問わず愛する人が走馬灯のように現れるという経験も報告されている。その原因はいまだ解明されていないが、その解明の糸口になりそうな出来事が報告されている。
2016年、当時87歳の男性が脳波計(EEG)に接続されていたところ、不意に心臓発作を起こし、死亡した。研究者たちはその後、この結果を『Frontiers of Aging Neuroscience』に発表した。この論文で研究者たちは、男性が心臓発作を起こすまでの15秒間に、EEGスキャンによってガンマ振動と呼ばれる高周波の脳波が観測されたと報告している。ガンマ振動は、記憶の生成と再生に関与していると考えられているものだ。
脳波は観測されたのは死の前の人の数秒であり、臨死体験のような長い経験には相当しない。
米バージニア大学名誉教授で精神科医のブルース・グレイソン教授は、人々が臨死体験を思い出すとき、脳は「記憶、視野、ヒアリングおよび感情と関連付けられる異なった部分が活動的になる」と指摘している。特に、音や記憶に関与する側頭葉は、体外経験や記憶のフラッシュバックと関連付けられると考えられるそうだ。そのため、臨死体験は単なる生理学的反応かもしれないと、ナショナル・ルイス大学のデイヴィッド・サン・フィリッポ教授は話している。これまでのラットを使った実験で、死の間際に脳内でセロトニンが分泌されることから、臨死体験における肯定的な体験は多幸感や痛みの緩和を誘発することによって、「脳が死に対して徐々に体を準備させる方法かもしれない」という。
もし臨死体験における平穏な経験が宗教的なものではなく、脳に起因する生理学的な反応であるならば、死や死の概念は脱神秘化され、その結果として死が恐れるに足らないものだと認識されるようになるかもしれない。
参考:「Science Alert」ほか
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