今なお未解明の「タイタニック号5つの謎」とは? 船長の行方、最大速度での航行… 沈没は人災だったのか

 当時世界最大の客船であったタイタニック号の沈没事故は世界の海運史上でも最大級の重大インシデントに数えられるが、今なお解明されていない謎が5つあるという――。

なぜ最大船速で航行していたのか?

 豪華客船タイタニック号は1912年4月10日に2224人の乗員乗客を乗せて英サウサンプトンの港から米ニューヨークへ向けて処女航海に旅立った。世界中の注目を浴びて豪華に祝福された門出であったが、その5日後、この稀代の豪華客船は大西洋の海底に沈むことになったのである。

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タイタニック号(RMS Titanic) 画像は「Wikipedia」より

 北大西洋を航行中のタイタニック号は1912年4月14日の23時40分(事故現場時間)に氷山に衝突したことを発端に沈没したのだが、その時に同船は最大船速に近い速度で航行していたことがわかってきる。大小の氷山が浮かぶ危険な海域で、しかも夜間になぜ最大船速で航行していたのか?

 もっとゆっくりと航行していれば氷山を避けられたと思われるし、発見から対策を講じるまでの時間的余裕もあったはずだが、なぜか最高速度の23ノットに肉薄する22.5ノットで航行していたのである。したがってこの不可解な船速は間違いなく事故の原因の1つとなる。

 タイタニック号の姉妹船であるオリンピック号がその前年、サウサンプトンからニューヨークへの処女航海で同航路の最短記録を樹立していたのだが、一説ではタイタニック号の船長エドワード・スミスはこの記録を破りたかったのではないともいわれている。

 しかしグリニッジ王立博物館は船長が記録を破ろうとしたという話は「実体がない」ものとして否定している。

 アメリカの技術者が2004年に提示した別の説では、実は出航の前からタイタニック号の石炭貯蔵庫の石炭の一部に火がついていてくすぶっていたことが指摘されている。

 出航後にこれに気づいた機関士たちは、燃えている石炭を優先的にボイラーへと投入したことで常に燃料が過剰供給気味になり、船速が上がってしまったというのだ。

 アイルランド人ジャーナリストのセナン・モロニーは、2017年のドキュメンタリー『Titanic: The New Evidence(タイタニック:新しい証拠)』でこの説を繰り返し、タイタニック号は「出航すべきではなかった」と言及している。

カリフォルニアン号はなぜ救助に向かわなかったのか?

 タイタニック号が沈没したときに最も近くにいた船は、マサチューセッツ州ボストン行きの蒸気船「カリフォルニアン号」である。この時のカリフォルニアン号は、氷山を含む海面の氷の危険を鑑みて洋上でいったん停船していたという。

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カリフォルニアン号(SS Californian) 画像は「Wikipedia」より

 沈みゆく船は夜空にフレア(照明弾)を発射させ、無線で近隣の船に救助を求め、その中にはもちろんカリフォルニアン号も含まれていたのだが、同船船長、スタンレー・ロードは動かなかった。

 タイタニック号とカリフォルニアン号は10キロメートルほどしか離れていなかったともいわれ、いち早く救助に向かえば多くの人命を救っていたはずなのだが、なぜ動かなかったのか。実はこの直前にタイタニック号とカリフォルニアン号の間でちょっとしたトラブルがあったという。

 その日の夕方、カリフォルニアン号はタイタニック号の進行方向の先に氷山があることを確認し、無線で同船に警戒するように伝えたのだった。

 しかしタイミングが悪かった。この時、タイタニック号の無線通信員は800マイル離れた中継局であるレース岬(Cape Race)から送られてきた乗客への電報メッセージを受信中であったのだ。タイタニック号の無線通信員は、急に割り込んできたカリフォルニアン号からの警告に「黙っててくれ!」と思わず声をあげてしまったのである。

 これにカリフォルニアン号の無線士がむかっ腹を立てたとしても無理からぬところだろう。この後、カリフォルニアン号の無線士は無線機器の電源を切ってふて寝を決め込んだのだった。したがって深夜のタイタニック号からの緊急の無線メッセージを受信できなかったのである。沈没被害の拡大には“人災”の側面もあったということになるのかもしれない。

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