今なお未解明の「タイタニック号5つの謎」とは? 船長の行方、最大速度での航行… 沈没は人災だったのか

ジョーキンはどのように生き残ったのか?

 タイタニック号の最も興味深いサバイバルストーリーの1つは、生き残った同船のパン焼き職人、チャールズ・ジョーキン(当時33歳)である。乗組員の一員としてすぐに船を離れることはできなかった彼はどうやって生き残ったのか?

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チャールズ・ジョーキン 画像は「Wikipedia」より

 沈みゆく船の中で乗客を救命ボートに導きながら最後まで船に残っていたジョーキンだったが、船体が完全に沈没してからは海に投げ出されることになった。

 この時、気温はマイナス2度であり海水温もきわめて低かった。海に投げ出されたほとんどの人は30分以内に低体温症で死亡したが、2時間もの間海水に浸かっていたにもかかわらず、ジョーキンは助かったのである。

 ジョーキンは船が沈む直前にリキュールを飲んでいたと話していて、これが後に水中で体温を維持するのに役立ったのではないかとともいわれていたのだが、2018年の研究でそれは否定されている。

 アルコール摂取は一時的には体温を上げるとされているが、寒冷環境下では体温を下げ、むしろ低体温症のリスクを悪化させることが示されたのだ。

 またジョーキンは海水の中で常に身体を動かしていたとも話している。水面に浮かびながら約2時間、手足を動かし続けた後、救命ボートに助けられたという。飲酒ではなく身体を動かしていたことがサバイバルに繋がったと考えられそうだ。

なぜ救命ボートが足りなかったのか?

 乗員乗客2224人が乗るタイタニック号に積まれていた20隻の救命ボートには計算上、1178人しか乗ることはできなかった。しかも事故当時、そのうちの2隻は海に出すことができなかったのである。なぜ乗客全員を収容できる救命ボートが積まれていなかったのか?

 その最大の原因は安全基準が20年前から変わっていなかったことにある。20年前には客船の最大重量は1万トンと想定されていたのだが、タイタニック豪は4万6000トン強で想定の4倍以上の大きさであった。それでも20年以上前のレギュレーションが依然として適用されていたため、搭載する救命ボートは20隻で問題なかったのだ。

 それに加えて豪華な船旅を演出するにあたって、良好な眺望を保つためデッキ上の救命ボートをあまり目立たせたくなかったために最小限の数に抑えられていたことや、建造を手がけたメーカーと運営会社は堅牢に設計されたタイタニック号と姉妹船のオリンピック号は絶対に沈まない“浮沈艦”であると喧伝していたことから、海難事故に対する備えが軽視されていた背景もあるようだ。

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