空から金銀財宝が降ってくる!? 100億分の1で起こる「宇宙のゴールドラッシュ」とは?

 空から金銀財宝が降ってくる夢のような出来事がこの先待っているという。2つの中性子星が衝突して起こる大爆発によって金や銀が大量にバラまかれるというのだ――。

将来キロノバを引き起こす連星が発見される

 天文学者のチームは先日、1万1400光年離れた宇宙に「100億分の1」の確率でしか存在しない奇跡的なまでに“激レア”な連星を発見した。

「CPD-29 2176」として知られるきわめて珍しい連星は、NASAの宇宙望遠鏡「ニール・ゲーレルス・スウィフト」によって初めて特定され、チリの「セロトロロ汎米天文台(Cerro Tololo Inter-American Observatory)」にある「SMARTS 1.5m望遠鏡」による追跡観測により、天文学者はこの連星がいつか高密度の天体が融合する際に起こる大規模な爆発現象「キロノバ(kilonova)」を引き起こすものであることを確認したのである。

 研究者によると、2つの中性子星の衝突によって最終的にキロノバが発生し、古典的な新星爆発の1000倍の明るさの爆発が発生する条件がそろっているという。そしてこのキロノバの大爆発によって周囲に金や銀、プラチナなどの貴金属が大量にバラまかれるということだ。金銀財宝が撒き散らされるという夢のようなイベントがこのキロノバということになる。

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画像は「Wikimedia Commons」より

 主星と伴星の2つの星がお互いに重力的な影響を与え合い、対になった状態にあるものが連星(binary star)と呼ばれているが、研究者によるとこの「CPD-29 2176」は主星の「ウルトラストリップ超新星(ultra-stripped supernova)」として知られる中性子星と、ウルトラストリップ超新星になりつつある大質量の伴星が対になった連星であるという。

 連星の一方が超新星になった場合、超新星爆発の威力で対になっていた伴星は吹き飛ばされて連星ではなくなってしまうのだが、「ウルトラストリップ超新星」は伴星によって大気圏をすでに剥ぎ取られいるため爆発で放出される物質はないので威力がなく、伴星が失われずに連星の状態が続くという。

 失われなかった伴星もまた徐々にウルトラストリップ超新星になり、その変化が終わってどちらも中性子星の連星になると、キロノバが発生する条件がそろうのである。

 この2つの中性子星が徐々に距離を縮めて最終的に衝突すると壮大なスケールの爆発が起こり、宇宙全体に高エネルギー粒子の激しい嵐を引き起こすのだ。そしてこのキロノバによって金、銀、プラチナ、ウランなどの元素が生成され宇宙に大量に撒き散らされるのである。

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画像は「Wikimedia Commons」より

1000億分の1の“激レア”な連星

 研究者たちは今回の発見がキロノバがどのようにして起こっているのか、その謎を解明するのに役立つことを望んでおり、宇宙で最も重い元素がどこから来るのかを明らかにすることを思い描いている。

「かなり長い間、天文学者は最終的にキロノバにつながる可能性のある正確な条件について推測していました」と共著者のアンドレ・ニコラス・シェン氏は説明する。

「これらの新しい結果は、少なくともいくつかのケースでは、2つの兄弟の中性子星のうちの1つが古典的な超新星爆発なしで作成された場合に融合できることを示しています」(アンドレ・ニコラス・シェン氏)

 そしてこのような異例な連星が出来上がるのはきわめて稀な現象であるという。

「天の川には少なくとも1000億個、おそらくさらに数千億個の星があることがわかっています。この驚くべき連星は、本質的に100億分の1のシステムです。私たちの研究に先立って、天の川のような渦巻銀河には、そのようなシステムが1つまたは2つしか存在しないはずであると推定されていました」(アンドレ・ニコラス・シェン氏)

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画像は「Wikimedia Commons」より

「CPD-29 2176」は、最終的にキロノバを形成するためのすべての要素を備えているが、巨大な伴星が巨大なウルトラストリップ超新星の変化してその寿命を終え、2つ目の中性子星になるまでにはあと少なくとも100万年かかるということだ。

 この「CPD-29 2176」への理解を深めることで、一部の恒星が超新星爆発を起こさずに“穏やかな死”を迎えていることについての洞察が得られるとともに、金や銀、プラチナなどの重元素の“供給源”を特定できるかもしれないということである。

 空から降って来るかもしれない金銀財宝にぜひともあやかりたいものだが、残念ながら来るべくその“ゴールドラッシュ”まではあと100万年待たなければならないようだ。

参考:「Daily Mail」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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