目覚めたら16歳少年になっていた中年男の実話! ストレスで20年分の記憶を消去…妻も娘もわからず…

 2021年、分別盛りの36歳の男性がある日突然、何の前触れもなく直近20年分の記憶をすべて失ってしまうという例が報告され話題に。なんとこの男性、立て続けに不幸に見舞われ、人生の再スタートを切るべく妻子を連れて実家に戻った矢先、たった一晩にして隣で眠る妻のことも、10歳になる娘のことも忘れてしまったという。さらには、高校卒業後に習得した専門知識も思い出せず、復職さえも叶わなくなってしまった。

 医師は過度な精神的ストレスによる「一過性全健忘」との診断を下したが、一年経っても記憶は戻らないまま、周囲は嗜好までもがガラリと変わってしまった彼の姿に戸惑いを隠せない様子。「まるで別人と暮らしている気分」と悲痛な胸の内を打ち明ける。

 恐ろしい話ではあるが、決して他人事などではなく、これほどまでに人の心は繊細で壊れやすいものなのだ。日頃から自身の精神バランスに気をつけ、適度にストレスを発散することがいかに重要であるか、身につまされるニュースとして当時の記事を再掲する。

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※ こちらの記事は2021年8月10日の記事を再掲しています。

 昨年7月のある朝、米テキサス州に住むダニエル・ポーターはいつものように目を覚ました瞬間、ギョッとした。自分の隣に知らない大人の女性がスヤスヤと眠っていたからだ。混乱しつつもベッドから這い出し、バスルームで鏡をのぞくと、そこには「老けてデブった」中年男が映っていた――。

20年分の記憶が消去された男

“いつものように”学校へ行く時間だと思って起きたダニエルは、自分が20年近く前にハイスクールを卒業したことも、ベッドの中の見知らぬ女性が自分の妻であり、10歳になる一人娘がいることも、まったく覚えていなかったのだ。

 前夜、36歳の分別盛りの家庭人として眠りについた彼は、朝になると「今は1990年代」で、自分は「まだ16歳の高校生」だと思い込み、学校へ行く支度を始めたのだった。

「夫は目が覚めたとき、自分が誰なのか、どこにいるのか、まったくわからなかったようです。酔っ払って女性と一緒に帰宅したか、誘拐でもされたのかと思ったみたいで。とにかく、この場から逃げようとパニックになっていました」(妻のルース)

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画像は「Daily Mail」より引用

 夫の異常に気づいたルースは、まずは彼を落ち着かせて「自分は妻であり、誘拐ではない」など冷静に説いて聞かせたという。幸い、夫妻はダニエルの実家に越してきた後だったため、彼が安全で、いるべき場所にいることを説得するのに役立ったそうだ。とはいえ、娘のリビーを見ても反応せず、2匹の愛犬にも怯え、鏡の中の自身を認められない状態だったから、「トワイライトゾーン」に紛れ込んだ気分だったという。

 病院では当初「一過性全健忘(TGA: Transient Global Amnesia)」であり、「24時間以内に元に戻れるはず」と診断した。ところが、妻との結婚や娘の誕生など、人生の直近20年間の記憶をすべて失くしてから1年が経った今でも、ダニエルは高校時代以降の人生をほとんど覚えていない。

 恐ろしいのは、家族や過去20年に出会った友人のことを覚えていないだけでなく、高校卒業後に習得した聴覚専門家としての知識も思い出せないため、復職が叶わなくなってしまったことだろう。

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イメージ画像:「Pixabay」

セラピーに通うもいまだ効果なし

 この1年間、母娘はダニエルの不可解な状況を受け入れるのに苦労してきた。記憶が抜け落ちただけでなく、食べ物を含めた嗜好がガラリと変わってしまい、別人と暮らしている気分だという。たとえば、以前は出不精だったのに、今ではアクティブパパに変身してしまったりとか。

「私はこれまで通り古い人間関係のなかにいますが、彼はまったく新しい人間関係のなかなので奇妙に感じますね」(ルース)

 医師は、ダニエルが重度記憶喪失になった原因を極度の精神的ストレスによるものではないかと考えている。リストラに遭い、家や家財道具を売り払い、椎間板ヘルニアを患った後、昨年1月から体調不良を感じ始めたダニエル。「生活を仕切り直そう」と両親の家へ身を寄せた月に、この非てんかん性の発作を起こすようになったという。

「夫の脳は『もう何もやりたくない!』と、ストライキを起こしてしまったんでしょう。トラウマを抱えていると記憶が乖離することがあるとは知っていましたが、まさか20年分の記憶を失うなんて」(ルース)

目覚めたら16歳少年になっていた中年男の実話! ストレスで20年分の記憶を消去…妻も娘もわからず…の画像3
2020年1月時点のポーター一家 画像は「Daily Mail」より引用

 現在、ダニエルはトラウマを克服するためのセラピーに通ったり、かつての友人たちに会うようにしているというが、今のところ効果は出ていない。

 夢多きシックスティーンの男子として、アタマの中で現実を書き換えてしまったダニエル。究極の現実逃避といえよう。嫌な思い出が消えてしまうのはラッキーかもしれないが、愛する家族との歴史までなくしてしまうのは悲劇だ。それにしても、人の心はこれほどまでにデリケートだと思い知らされる。誰にでも起こり得ることだから、ストレスを侮ってはいけない。

参考:「Oddity Central」「Daily Mail」ほか

文=佐藤Kay

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