絶対に錆びない「デリーの鉄柱」とは? 1600年以上雨風に晒されても劣化なし… 地球外の素材か
形のあるものはいつか壊れるし、鉄であればそのうちに錆びてボロボロになるのが世の習いだが、驚くべきことにインドには1600年が経っても錆びずに今もしっかりと聳え立つ鉄の柱がある。なぜそれほどまでに頑健な鉄柱が存在し得るのだろうか――。
1600年経っても錆びない「デリーの鉄柱」
老いは“錆び”にもたとえられるように、いろんな意味でいつまでも錆びない人でありたいものだ。
とはいえ“経年劣化”という言葉もあるように、いつかは老いて錆びていくのは自然の摂理だが、インドには雨風に晒されながらもなんと1600年もの間錆びることなくしっかりと立つ鉄の柱がある。
インド・デリー市郊外にあるイスラム教の宗教施設「クトゥブ・ミナール」内にある「デリーの鉄柱」は屋外に建てられてあるにも関わらず、すでに1600年もの間錆びることなく壮健な姿を誇っている。
デリーの鉄柱はグプタ朝時代の西暦415年に建てられたといわれる。柱の高さは約7メートルで、地下に埋まっている部分が2メートルある。柱の直径は約44センチで、重量は約6.5トンだ。
鉄柱にはサンスクリット語で書かれた碑文が刻まれており保存状態も良好である。碑文によれば、「ヒンドゥー神ヴィシュヌを称えるためにチャンドラグプタ2世が建立した」旨が記されているということだ。
チャンドラグプタ2世は西暦375年から415年まで在位し、グプタ帝国を拡大し、西はアラビア海、北はヒマラヤ山脈の麓、南はナルマダ川までを支配したグプタ朝最強の王であった。
またデリーの鉄柱は元々はウダヤギリ石窟群の前に立てられていたが、13世紀にこのデリーへと移されたといわれている。
鉄柱の表面に「受動的な保護膜」が形成
デリーの鉄柱のあまりにも高い耐久性に、少し前までは地球外由来の素材であったり、時代考証にミスマッチした謎の“オーパーツ”ではないかとも考えられてきたのだが、その後に考古学者と科学者の検証によって古代インドの鉄工職人が達成した高度な技術のなせる業であることがわかってきた。
このデリーの鉄柱は西暦415年に建てられ以来1600年以上の間、その地上部分に限っては錆が内部に進行していない。いったいどうしてこれほどの劣化耐性を有しているのか。
インドの鉄柱は金属材料を加熱し打撃または加圧して接合する鍛接(forge welding)の手法で作られているのだが、使われた鉄は純鉄ではないことから製造の過程で不純物のカスが含まれていた。また古代インドの鉄工は製錬工程で石灰を使っていなかったため、鉱石中のリンは除去されていなかった。
インド工科大学カーンプル校のバラスブラマニアム博士が「Current Science」誌に発表した研究では、この不純物が酸化してできた酸化物が鉄の高濃度のリンと組み合わさるとその相互作用で「受動的な保護膜(passive protective film)」が鉄の表面に形成されて鉄を腐食から守る働きを見せるということだ。
1600年もの間錆びることなく風雨に耐えてきたこの奇跡の鉄柱だが、おそらくこの先もずっとこのままの姿を保っているのだろう。いつまでも錆びないデリーの鉄柱の凛とした壮健な佇まいとその驚異の“アンチエイジング”ぶりにぜひともあやかりたいものである。
参考:「Live History India」ほか
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2024.10.02 20:00心霊絶対に錆びない「デリーの鉄柱」とは? 1600年以上雨風に晒されても劣化なし… 地球外の素材かのページです。インド、古代遺跡、オーパーツ、鉄などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで