水晶髑髏「クリスタルスカル」はオーパーツなのか? これまでの研究状況と結論を紹介
オーパーツの中でも群を抜く美しいビジュアルを持つ透き通った水晶髑髏「クリスタルスカル」の存在をどうとらえればよいのだろうか――。
謎の水晶髑髏「クリスタルスカル」
ある特定の時代に特定での場所で作られたモノであるとしか考えられないのだが、明らかに時代錯誤で出自が不明の不可解な人工物が発見されることがある。いわゆる「オーパーツ(OOPARTS、out of place artifacts)」と呼ばれるモノをどう理解すればよいのだろうか。
このようにオーパーツは「場違いな工芸品」のことであり、発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる謎の出土品や加工品などが該当する。
代表的なオーパーツには中国とチベットの国境にあるバヤンカラ山脈で発見されたとされる謎の円盤型記録媒体「ドロパストーン(ドロパディスク)」や、2000年以上前に作られた電池ではないかといわれている「バグダッド電池」などがある。
そうした謎のオーパーツの中でも目を瞠る魅力的なビジュアルで有名なのが透き通った結晶鉱物製のドクロである「クリスタルスカル」だ。
クリスタルスカルは、アステカやマヤなどのコロンブス以前のメソアメリカ文化の作品であると主張され、多くの論争と憶測の対象となっている。
世界各地の博物館には、12ほどのクリスタルスカルがあり、そのほとんどはシリカ (二酸化ケイ素) で構成される硬質の結晶鉱物である石英でできていることがわかっている。
クリスタルスカルにまつわる伝承では、スカルには超常的な力があり、未来を予測したり、病気を治したり、マヤ暦に示された大惨事を未然に防いだりすることができることなどが主張されている。
メソアメリカ文明の工芸品には火山岩から作られたアステカのモノリスや、黒曜石、半球形に研磨された宝石「カボション」、ヒスイの頭蓋骨マスクなど、さまざまな設定で頭蓋骨がフィーチャーされている。
アステカ文明とマヤ文明の両方が、ツォンパントリ(tzompantli) として知られる頭蓋骨を並べた祭壇を奉っている。大きなツォンパントリでは500を超える浅浮き彫りの頭蓋骨が展示されている。
19世紀にはメソアメリカの遺跡に対する一般市民および学術的な関心により、コロンブス以前の工芸品の偽造品の取引が増加した。この取引は多くのトラブルを招いて問題となり、スミソニアン博物館の考古学者であるウィリアム・ヘンリー・ホームズは1886年にサイエンス誌に「偽りのメキシコ遺物の取引」という記事を寄稿して警鐘を鳴らした。
1857年にフランスの古美術商であり、美術商であり、メキシコのマクシミリアン1世の宮廷の「公式考古学者」であったウジェーヌ・ボバンは、ナポレオン3世の依頼でメキシコの美術品や工芸品を収集する遠征隊を率いた。彼は発見したものをトロカデロ博物館に展示し、その中にはクリスタルスカルのコレクションもあった。
その後ニューヨークで店を開いたボバンはクリスタルスカルをアメリカの起業家に売却するといくつかの人手に渡り、現在は大英博物館とパリのケ・ブランリ美術館で展示されている。
アステカとマヤに関連付けられた“都市伝説”なのか
科学的な検証によってクリスタルスカルはグラインダーなどのロータリーツール(回転工具)を使って形成されたことが明らかになっている。
また組成を詳しく調べたところ、マダガスカルとブラジルでのみ発見されている緑泥石の含有物があり、コロンブス以前のメソアメリカでは入手できないものであることも示唆されている。
研究ではまたスカルが19世紀にドイツで作られたことを示唆しており、おそらく石英の工芸品を作ることで当時有名だったイダー=オーバーシュタインにある工房で作られた可能性が濃厚となっている。
1900年にボバンはパリで開催されたアメリカニスト民族学科学会議で講演を行い「ロッククリスタルと呼ばれるコロンブス以前のスカルの多くは、ほとんど検知できないほど巧妙に作られ、本物であると断定されています」と述べている。
1924年にアンナ・ミッチェル・ヘゲス(冒険家フレデリック・アルバート・ミッチェル・ヘッジスの養女)は、イギリス領ベリーズのルバントゥンにある寺院内でクリスタル スカルを発見したと主張しこれは「ヘッジスの水晶髑髏」と呼ばれた。
2008年の科学的な鑑定と分析により、ヘッジスの水晶髑髏は硬い研磨剤でコーティングされたロータリーツールで彫られたことが示され、近代に作られたものであると結論付けられた。
スミソニアン博物館の研究者はこのスカルは「大英博物館の頭蓋骨のレプリカに非常に近く、ほぼ同じ形状であるが、目と歯がより詳細にモデル化されている」と述べている。
最近では、クリスタルスカルがスミソニアン協会に匿名で郵送され、19世紀にメキシコ大統領を7期務めたメキシコの将軍であり政治家であるポルフィリオ・ディアスのコレクションからのものであり、アステカ起源であることが主張された。
しかしこのスカルも1893年から大量生産された研磨剤である炭化ケイ素(SiC)を使用して形成されたことが判明した。
これまでに調査されたクリスタルスカルは、古代文化への関心が高まっていた19世紀半ば以降になって、ほぼ確実にヨーロッパで製造されたものであるとされている。
またメソアメリカやその他のネイティブアメリカンの物語に関連する古代の文書や神話、民間伝承には特にクリスタルスカルについて言及しているものはなく、明らかに19世紀なってから創作されたアステカとマヤに関連付けられた“都市伝説”との見解が主流であるようだ。
とはいえ現在博物館に展示されているものだけがクリスタルスカルではないことも確かだ。ビジュアル面からも魅力的なオーパーツであるクリスタルスカルについての続報を今後もチェックしていきたい。
参考:「HeritageDaily」ほか
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