150年前にタイムトラベルを経験した男の奇妙な体験談! 未知の先住民は幻覚か幽霊か…

 過去に何か重大な出来事が起こった場所を訪れた時、身体が緊張したり皮膚に鳥肌が立ったり、あるいは心がざわついたりすることがあるかもしれない。さらにそれだけは済まずに“タイムスリップ”してしまうことだってあるかもしれないのだ――。

カナダの騎馬警察が西部で長距離遠征

 タイムトラベルとは“時間旅行”のことであり、過去や未来の某所へとじっくり旅行をする感じがするが、その一方でタイムスリップは過去や未来に「何かの間違いで」ほんのわずかの間紛れ込んでしまったようなイメージがありそうだ。

 19世紀のカナダの辺境で起こった奇妙なタイムスリップ事件が記録に残されている。

 サー・セシル・エドワード・デニーは、わずか19歳でイギリスからアメリカに移住し、1874年にカナダの北西騎馬警察に入隊し、巡査から警部補まで昇進した立志伝中の人物である。

 デニーは西部長距離遠征に参加し、1874年から1875年の冬の間、アルバータ州南部にあるフォート・マクラウドに滞在し、この未開の地での多くの冒険について詳細な日記とメモを取り、後に著書『The Riders of the Plains: A Reminiscence of the Early and Exciting Days in the North West』にまとめた。

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画像は「Pixabay」より

 遠征中にデニーらはこの一帯の先住民族であるブラックフット族の人々と多く接触を持った。ブラックフット族は友好的で遠征隊を歓迎してくれて、何度も一緒に狩猟や釣りに出かけたのだった。

 1875年の夏のある日、デニーはちょっとした釣りと狩猟を目的として、拠点から山のふもとの丘まで下り、オールドマン川の沿岸を60キロほど遡上する旅を計画した。彼はキャンプ装備、毛布、調理器具、ゴムボート、その他さまざまな物資を荷造りして馬に乗せ、ブラックフット族のガイドを同行させて旅に出た。

 遠征の滑り出しは上々で、初日から鹿を仕留めることに成功し、最初の晩は上機嫌で快適なキャンプを設営し、鹿肉と川で捕まえたマスでボリュームたっぷりの夕食を堪能した。

 実り多い旅になるかと思われたが、帰路はトラブルに見舞われることになった。

 その日の午前中は天気が良くて暖かかく、ボートで川を順調に下ったが、途中で制御が狂いデニーは川に落ちてビショ濡れになり、仲間とはぐれることなってしまった。

 岸に上がったデニーはキャンプをして服を乾かしていると、天気が急変して雷鳴が徐々に近づいてくるのだった。

 デニーは急いで身支度を整えて下山の旅を再開した。しかし進むほどに天候は悪化し、激しい嵐に見舞われるようになった。

 耳をつんざくような雷鳴を伴う稲妻と暴風雨の中、強行軍を続けたデニーだったが、午後4時前の時点でこれ以上進むのは不可能であることがわかり、安全な場所でビバーク(露営)して嵐が通り過ぎるのを待つことにした。

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嵐の中で先住民族の村を目撃

 嵐が小康状態になり、動き出そうとしたデニーは、遠くに先住民の人々が奏でる独特のリズムの太鼓の音が響いていることに気づいた。

 デニーはその地域の原住民もまた友好的であることを見越して、太鼓の音が鳴る方へと向かった。嵐と雷は再び激しさを増してきていたのだが、太鼓の音に勇気づけられて森の中を進みかなり広い空き地に出ると、そこには200人ほどの先住民が暮らす小さな村の光景が広がっていた。

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 村の男性や女性、さらには子供たちが建ち並ぶテントの間を動き回っているのが見えた。そして奇妙に感じたのはテントの出入口が開いていて、屋内の囲炉裏の火が覗き見えていたことである。先住民は通常、雷雨を非常に恐れるため、雷雨の間はテントの出入口を閉めてめったに屋外には出ないのである。

 村には約20軒のテントがあり、小屋が並ぶ反対側の広場では馬の一団が草を食んでいた。

 ひとまず最も近くにあるテントを訪ねてみようとデニーが歩みを進めた矢先、ひときわ強烈な雷光が炸裂し、耳をつんざく雷鳴が轟いた。

 そう遠くないところにある大きな木に雷が落ち、木の幹を真っ二つに引き裂いたのだった。

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 地面を通じて襲ってきた雷の電流に襲われたショックで飛び跳ねて倒れ込んだデニーではあったが、幸いにも命に別条はなかった。それでも倒れた身体を動かせるようになるまでには数分を要した。

 雷雨の中、なんとか起き上がったデニーは周りを見回すと大いに驚くことになった。目の前には空き地が広がっているだけで、村が跡形もなく消え去っていたのだ。静かに草を食んでいた馬の群れも消えてしまっていた。いったいどういうことなのか。

 しばらく呆然と立ち尽くしていたデニーだったが、その後に圧倒的な恐怖感に襲われて走り出さずにはいられなかった。川を見下ろす土手に向かって走り、途中で銃を落としたが拾い上げる精神的余裕はなかった。

 高台に出てもう一度村があった場所を見下ろしてみたが、やはりそこにはテントも人影もなかった。また嵐は続いていたが、そのまま24キロほどを歩いて連隊の拠点に戻ったのだった。

 拠点に着く前には嵐は収まり空は晴れてきたが、疲労困憊のデニーは到着するなりすぐにベッドに横になった。

 翌朝、デニーは連隊の他の士官たちに嵐の中で見たことを話したが、笑われるだけで誰も信じなかった。

 後日、デニーはブラックフット族の者を連れて、謎の村があった場所に戻ってみることにした。近くを流れる川が独特なカーブを描いている場所だったので難なく見つかったが、やはりそこには村の痕跡はなく、不気味に静まりかえっているだけであった。

 デニーは先住民にこの場所について質問してみると、何年も前にブラックフット族がその場所でクリー族の村を奇襲し、虐殺したと話したのだ。そしてデニーは足元の草むらに2つの白骨化した頭蓋骨を見つけたのだ。先日デニーが目にした村は、襲われる前のクリー族の村だったのだろうか。

 デニーは雷に打たれて引き裂かれた木と再確認するとともに、途中で落とした銃を見つけて回収した。そしてデニーはあらためてあの日に見た村と人々、馬たちの姿が間違いなくここにあったことを実感したのだった。

 ここでデニーが体験したことはタイムスリップ現象であったのだろうか。もはやデニーはこの世にいないのだが、19世紀に記録されているタイムスリップを思わせる興味深い現象に再び注目が集まっているようだ。

参考:「Mysterious Universe」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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