素人が自分自身に脳外科手術を敢行! ロシアのリアルブラックジャックに医師が警鐘を鳴らす

 人手不足の昨今、セルフサービスの導入がこれまで以上に進んでいるが、驚くべきことに自分の部屋で“セルフ脳外科手術”を行った研究者がいた――。

明晰夢を見るための“セルフ脳外科手術”を実行

 理容や美容、鍼灸などは資格を持たない者は人に施すことはできないが、自分の身体に対してであればその限りではない。

 物議を醸しているロシアの科学者は自宅のリビングルームで自分自身に脳外科手術を行い、夢を制御するために脳に電極を埋め込んだことを報告している。

 ラドガ氏はフェーズ・リサーチ・センター(Phase Research Center)の創設者であり、同研究センターでは睡眠麻痺や幽体離脱をどのように経験するかについて初心者向けの指導を提供すると主張している。彼はロシアでかなりのカルト的人気があり、多くの信者が彼の目標を達成するための勇気を称賛しているということだ。

 医師の資格をまったく持たないロシアの研究者、マイケル・ラドガ氏は、いつか明晰夢(lucid dream)を制御できる可能性がある電極を埋め込むため、カザフスタンの自宅で脳外科手術を行ったのだ。

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マイケル・ラドガ氏 「Daily Mail」の記事より

 彼は脳神経外科手術のYouTube動画を何時間も見て、5匹の羊の頭で練習した後、“セルフ手術”を行い脳内にチップを挿入したのである。彼は自分の計画について誰にも話していなかった。

「生き残れて良かったですが、死ぬ準備はできていました」と彼は英紙「Daily Mail」に語る。

 ホームセンターで見つけたドリルを使って頭蓋骨に穴を開ける“セルフ手術”では、開始から約30分ですでに約1リットルもの大量の血液を失った。失神する危険があればすぐに中断するつもりだったというが、それでもなんとか手術を終え、シャワーを浴びてから仕事に戻りその後も約10時間働き続けたということだ。

 埋め込んだ電極インプラントはプラチナとシリコンでできていて、この電極に送られる電気的なトリガーが明晰夢の進行に影響を与える可能性があるとラドガ氏は説明している。

「自分はいま夢を見ている」と自覚しながら見る明晰夢は夢の内容を自由に“演出”することも可能であるといわれている。

 ラドガ氏は明晰夢は「汚い仕事(dirty business)」をする絶好のチャンスであるという考えを奨励し多くの支持を集めている。「汚い仕事」には、ファストフードを食べること、「ポルノスターやお気に入りの隣人」とセックスすること、さらには薬物を摂取してフェラーリを運転することなども含まれているという。

「多くの人にとって、それはある種のエンターテイメントになるでしょう。さて、この世で何も経験することができない麻痺した人を想像してください。そして今、私たちは彼にすべてが可能である明晰夢を見るのを助ける方法を見つけます。(明晰夢の中で) セックスして、何か食べて、何か面白いことをしてください」(ラドガ氏)

 電極は5週間後に病院で除去されたが、ラドガ氏の信者らにはすでに「より効率的に明晰夢を見るために脳インプラント手術を受ける意思があるかどうか」の確認が行われているという。

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「Daily Mail」の記事より

英国では未承認の医療機器を埋め込むことは違法

 神経外科医らは彼が極めて危険な境地に足を踏み入れていると警告している。

「これは非常に危険な行為です」とオックスフォード大学の顧問脳外科医アレックス・グリーン氏は「Daily Mail」に語る。

「あらゆる種類の複雑な事態が起こる可能性がありました。たとえば、もし彼が皮質静脈や脳内血管から出血を起こしていたら、永久的な欠損を伴う脳卒中や死亡に至っていた可能性があります」(アレックス・グリーン氏)

 そしてこれは犯罪すれすれの行為でもあるという。

「イギリスやほとんどの国では、もし彼が他人に同じようなことをしたら、重傷致死か過失致死罪で有罪になる可能性があります。もしそれを許した人は非常に愚かです」(アレックス・グリーン氏)

 またイギリスでは特別な承認がない限り、食品医薬品局によって承認されていない医療機器を脳に埋め込むことは違法である。

 グリーン氏によると、脳皮質に何らかのダメージがあった場合、ラドガ氏が長期的にてんかんのリスクにさらされる可能性があるという。

「夢を変えるために装置が使用できるかどうかという点では、答えはまだ示されていません。実際には私たちが新しい経験を統合できるようになるまでにはおそらく数十年かかるでしょう」(アレックス・グリーン氏)

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「Oddity Central」の記事より

 このようにきわめてリスクが高い“セルフ手術”であったが、そこまでラドガ氏をかき立てるのはやはり明晰夢の魅力である。

「VRテクノロジーでは触れることも、食べることも、喜びを感じることもできません。この種のテクノロジーは限られており、クールで非常に優れていますが限界もあります。(脳インプラントで)遅かれ早かれ、私たちはあらゆることが可能な世界があることを理解するでしょう」(ラドガ氏)

 驚愕の“セルフ脳外科手術”を行ったことではたして夢の実現に近づくことができたのだろうか。これに起因する健康への影響が懸念されるが、ラドガ氏率いる研究チームによる明晰夢の研究がどこまで進展するのか気になるところだ。

参考:「Oddity Central」「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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