ウクライナ侵攻の真の黒幕とは? 英MI6長官の“犯行予告”から見えたプーチン失脚のシナリオ、ロシア解体に日本も関与か(ジェームズ斉藤)

【連載:某国諜報機関関係者で一切の情報が国家機密扱いのジェームズ斉藤(@JamesSaito33)が斬る! 国際ニュース裏情報】

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画像は「Getty Images」より

ジェームズ斉藤(以下、ジェームズ):先月末、イギリスのMI6のリチャード・ムーア長官が久々に公の場に出てきて話をしたのが世界の諜報機関関係者の間で話題になっています。

──MI6の長官ってコメントを出すこともあるんだと思ったんですよ。

ジェームズ:MI6の長官が公の場に出ることがこれまでほとんどなくて、そもそもMI6の存在自体がずっと隠蔽されていたんです。

──MI5はあるけど、MI6はないことになっているんだ、みたいな話はよく聞きますよね。

ジェームズ:そうです。ずっと秘匿されていました。MIというのはミリタリー・インテリジェンス軍事諜報の略で、戦前のイギリスでMIというセクションがたくさん作られて8や7もあったんです。MI6の前身部隊はSISでイギリス海軍のマンズフィールド・カミングス大佐が第一次世界大戦前夜に作ってロシア革命に介入して、ラスプーチンなんかをエージェントとして使っていました。

──あの怪僧ラスプーチンってイギリスのスパイだったんですよね。

ジェームズ:はい。それは以前の記事で紹介していますね。ともかく、古い歴史を持つ諜報組織で、1994年にイギリス政府がその存在を認めるまでは謎の組織とされてきました。94年以後も公にはほとんど出てきていなかったので依然として謎の組織扱いされてきたのですが、ここ5年ぐらいでごくたまに公の場で存在を示すようになってきています。

──ということは7月の長官の登場には大きな意味があるんですね。

ジェームズ:当然、意味があります。注目されたスピーチの内容ですが、ロシア情勢に関するもので、プリゴジンが欧米サイドと協力していたことを匂わせるような発言を何度もしていたことです。たとえば、プリゴジンの乱でプリゴジンがモスクワに進軍していた際にプーチンとプリゴジンはが密かに話し合ってプリゴジンが撤退を決めたと言ったり、プリゴジンの言葉を引用してウクライナ戦争はショイグの昇進のために始められたものだと言ってるんですね。プーチン体制を批判するのは西側の規定路線なんですが、なぜか、プリゴジンは否定しないんです。逆にプリゴジンの言葉を引用して現状を説明しているんですね。その行為はプリゴジンに間接的に正当性をもたせることになります。

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リチャード・ムーア(左)(画像は「Getty Images」より)

──確かにそうですね。

ジェームズ:あとはイギリスのMI6の長官が公の場でプリゴジンの言葉を使って現状を説明しているということは彼らのインテリジェンス分析とプリゴジンがやっていることが一致しているということになります。イギリス側も、ウクライナ戦争はショイグ国防大臣を筆頭とするクレムリンの中の一部の勢力の都合によって始められたものだと言っているわけです。これは私もウクライナ戦争が始まった直後にすでにお話しています。

 彼はさらにプーチンが今後、蹴落とされる可能性が高いという発言もしていまして、プーチンの側近によるクーデターか、国内からのクーデター、国外からの介入によってプーチン体制が倒れる可能性があると言っています。つまり、ロシアでクーデターが起こる可能性を示唆することと、事実上プリゴジンの擁護のためにMI6の長官がわざわざスピーチしたということなんです。

──きな臭い話じゃないですか? 西側がロシア内部をいろいろ焚き付けてクーデターが起こりますよと言ってるわけですよね。

ジェームズ:ロシア情勢を説明するという趣旨のスピーチでしたが、諜報機関の予測というのは予測ではなくて、そうなるように仕掛けるということですから(苦笑)。

──犯行予告のようなものですよね(苦笑)。

ジェームズ:実はここで面白いのが日本にも飛び火してきたことです。8月1日に反プーチン組織が来日していたんです(笑)。

──えっ、反プーチン組織がですか!?

ジェームズ:これはニュースにもなってまして「ロシア後の自由な民族フォーラム」という組織で、日本の衆議院会館で日本の有識者を招いてフォーラムを開催しています。フォーラムの内容はは平和的なもので、プーチン体制が終わったあとのロシアをどうするか、というもので、要は、ロシアの解体、復興についての話し合いです。

──気が早いですね。

ジェームズ:こういうのもMI6が背後で動かしています。正確にはMI6とCIAとウクライナのキリーロ・ブダノフ国防省情報総局(GUR)長の軍事インテリジェンスの合作です。ここの会議の主催者のトップがオレグ・マガレツスキーというウクライナ人で、「HANADA」という雑誌にインタビューが掲載されています。彼はウクライナのブダノフ情報総局長の関係者で、はっきり言えば部下のような存在です。実際、今年の1月4日にブダノフは37歳になりましたが、誕生日祝いとしてGURが用意した誕生日ケーキの絵柄はなんとロシアの分割案を示す地図になっていたんですよ(苦笑)。

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キリーロ・ブダノフ(画像は「Getty Images」より)

──えげつないですね(笑)。

ジェームズ:彼らはそういう人種ですから(笑)。ちなみにブダノフ案では三分割程度のもので、極東とシベリアは中国のものになっています。この点に関し、私はブダノフ関係者でもあるマガレツキー氏に以前直接意見をいったことがありますが、「三分割では生温い。中国にロシアを渡せない。40以上の独立共和国を作るべきだ」と至極正論が返ってきました。つまり、「ロシアを徹底的に切り刻め!」と言っているのです(笑)。

──分割グループの中でも穏健派と急進派がいるんですね。でも、そんな人たちが日本に来て、会議をしても何か影響力があるんですか?

ジェームズ:いまアメリカ、イギリス、ウクライナが進めているロシアの内部解体工作に日本も参加してほしいということでやってきています。日本では扱いが小さいですが、たとえば、この会をヨーロッパでやるとなるとEUの議会のど真ん中でやるほどで、ヨーロッパでは大きな影響力を持っている組織です。日本ではまだそこまでいってませんが、日本の官僚のやり方としては前例があれば動きやすいんです。なので、今回は小さい規模ですが、前例を作ったんです。この後、この組織はロンドン、フランクフルト、イスラエルと世界中を回って、日本にもまた来年やってくると思います。こういう地道な努力を続けていけば、もしロシアが本当に解体になった時、アメリカ政府に対して日本政府は、一枚噛ませてくれと言えるんですよ。こういう流れがMI6長官が言ったロシア内部からの行動によってプーチン体制が崩れるかもしれないということなんです。要は、崩れるようにいろんなところに手を打っているんです(笑)。これが諜報機関のやり方で、どの様にブレても対応できるように選択肢を用意するのが仕事です。もっと言えば、「ロシアの内部解体」を日本を含む世界に対して宣伝し、ウクライナ戦争後のゴールを諜報機関が勝手に描いているのです。私自身の経験上、この「勝手にゴールを決める」というのが諜報機関の任務の本質です。この観点で今回のMI6長官のスピーチを見れば、彼の登壇自体が世界に向けられた巧妙な認知戦だったということがわかってきます。

──認知戦だったんですね。

ジェームズ:はい。それももう何年も前からやっています。たとえば、さきほどの会に来てるロシア人はロシアからの亡命者ですからね。亡命の段取りも含めて20~30年ぐらいかけてやっています。ですから、MI6の長官がわざわざ公の場に出て、ロシアの内部からの行動によってプーチン体制が壊れるかもしれないと言ったということは、予測ではなく、プーチン体制はまもなく崩れる、そういう仕掛けが整ってきたという発表です。英米の諜報機関のやり方は常に「政権転覆」であり、日本の明治維新でも成功しているほど、世界中で数世紀にも渡り成功体験が蓄積されています。ロシアのハイブリッド戦や中国の超限戦などはすべて後発の「パクリ」レベルであり、英米の「政権転覆」工作に比べれば可愛いものです。彼らは21世紀における成功体験として、「プーチン体制の崩壊」を狙っています。

──前回の記事でもプーチン体制は危なくなってきてると分析されていましたが、さらに危なくなってきていると。

ジェームズ:私がプリゴジンの乱でプーチン体制は決定的な打撃をくらったと言いましたが、MI6長官も同じことを言っているわけです。しかも、プーチン体制が崩壊するシナリオをいくつか提示したんですよ。特に国内のクーデター、これはGRU、ワグネルによるクーデターだろうと匂わせているのが注目で、MI6がGRU 、ワグネルとなんらかのチャンネルを持ってる証拠でもあります。

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ワグネル創設者のプリゴジン(画像は「Getty Images」より)

──GRUとワグネルって実は随分前から西側諸国とつるんでいるんですか?

ジェームズ:そうでなければ、プリゴジンの反乱なんかできないです。

──そうなってくると、ウクライナ戦争自体もしかしたら西側が仕掛けているんですか? って気持ちになりますよね(苦笑)。

ジェームズ:まあ、西側が煽っていることは間違いないです(苦笑)。MI6長官は「ショイグが自分の昇進のために戦争を始めた」というプリゴジンの言葉を引用していますが、私もウクライナ戦争が始まった頃にショイグの都合でこの戦争が起こったと言いました。ショイグが自分の昇進のためにこの戦争を始めたことは間違いありません。しかし、そのショイグに「ウクライナぐらいすぐに取りにいけるぞ」と囁いたのはGRUしかありえないんです。それを信じてショイグはプーチンにウクライナ侵攻を勧めたのです。そういう一連のGRUの行動を見ているとずっとショイグを騙しているのは彼らGRUなんだというのが見えてきます。軍事作戦にしても、こんなメチャクチャで補給も提供されていないというのは普通に考えておかしいんです。ロシア軍はいままでもっとスマートに戦っていましたよ。シリア戦争とかを思い出してください。

──ああ、確かにそうですね。シリアではアメリカ軍よりも全然上手に戦ってましたよね。

ジェームズ:アメリカ軍のほうが遥かにヘタでしたよ(苦笑)。ですから、おかしいんですよ。先日、アフリカのニジェールという国でクーデターが起こったんですが、このクーデターの背後にはワグネルがいます。ワグネルということはGRUなのですが、この時のクーデターも本当にスマートでした。

──上手にやろうと思えばできると。

ジェームズ:いや、そうなんですよ(苦笑)。ウクライナ戦争の作戦って本当にありえないんですよ。何しろ、開戦前は「ロシア軍は世界第2位の軍隊である」というのが世界の諜報機関関係者の常識でした。ですから、GRUがわざと暴走しているのは間違いないです。ということは、GRUがクレムリンを狙っているのも間違いないでしょう。そこに西側が注目して反プーチンのもとで協力体制を作ったというのが実際に起こっていることでしょうね。

──そう考えるといろんな辻褄が合いますよね。

ジェームズ:合ってきます。ともかく、ワグネルが独自に動き出したことは大きいですね。今回のMI6長官のスピーチも、独自に動き出そうとしているワグネルをサポートしている形になっていますので。

──プーチン体制は崩壊しそうだと言う一方でプリゴジンは決して悪く言わないと。

ジェームズ:それしか言っていませんから長官は(苦笑)。そのためだけにわざわざ長官が出てきてスピーチしていることはかなり重い意味がありますね。

──ウクライナ戦争も大詰めに来ているのかもしれませんね。

ジェームズ:少なくともプーチン体制は大詰めかもしれませんね、戦争は続いても。

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プーチン体制崩壊へ?(画像は「Getty Images」より)

──それにしても西側はなぜプーチン体制を嫌うんですか? 

ジェームズ:プーチン体制というのは秘密警察が牛耳っている体制なので、ゴリゴリの全体主義になってしまうんです。昔、ロシア帝国というのは秘密警察による独裁じゃなかったんです。皇帝とロシア正教会と軍が三位一体を成していたんです。これであれば、19世紀にイギリスとロシアが同盟を組んでいた時代に戻れるんですよ。軍による独裁のほうがまだマシという感覚がイギリスにはあると思います。なので、GRUと西側が裏でつながっている可能性は否めないと思います。否めないというか、実際に起こっていることです。プリゴジンの反乱も西側とつながっていたからできたことです。今回のMI6長官のスピーチからそれがはっきりとわかります。

──いまになって見るとウクライナ戦争って本当に妙な戦争ですよね。

ジェームズ:戦争勃発当初からあった不可思議なことが伏線となって、いまになって回収されてきてますね。なぜ、プーチンが「3日で終わると言ったじゃないか」と叫んだのか、なぜ、ロシア軍はウクライナ戦争では弱いのか。

──バイデン大統領がアメリカ軍は動かないと言ったことも、ですね。

ジェームズ:すべてプーチンを騙すためだったんです。しかし、西側の思う通りにすべて進んでいるのかというとまったくそんなことはありません。その証拠がさきほど少しお話ししたニジェールのクーデターです。あのクーデターの裏にはワグネルがいると言いましたが、実はニジェールにはワグネルはいないとずっと言われていたんです。ところが、クーデターが成功して数日後、ニジェールにワグネルのオフィスが突如開設されたのです。これで西側は大慌てになったんです。ニジェールはもともとフランスの植民地で、今度のクーデターもすぐに鎮圧するつもりだったんです。ところが、ワグネルが出てきたことでフランスはもちろん、西側諸国も簡単に手が出せなくなってしまったんです。

──ワグネルはアフリカで力があるんですよね。でも、ニジェールを取ることってそんなに大事なんですか?

ジェームズ:とても大事です。というよりもアフリカがいまとても大事で、ここを制したものが世界の覇権を握る可能性があって、そこにワグネルが王手をかけてきたんです。プリゴジンは相当ヤバい男ですよ(苦笑)。ただ、内容的にはまだ不確定要素があるので、続きはメルマガのほうでお伝えします。

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ジェームズ斉藤(@JamesSaito33)
某シークレットセミナー教官。某国諜報機関関係者で、一切の情報が国家機密扱い。国際ニュース裏情報の専門家。ツイッターはこちら

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文=中村カタブツ君

元『紙のプロレス』編集者。現在は認知科学者である苫米地英人先生の出版関連業務に携わっている。
著書『極真外伝―極真空手もうひとつの闘い』(ぴいぷる社)
編集『苫米地博士の「知の教室」』(サイゾー)
編集・構成『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』(サイゾー)

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