麻生氏「戦う覚悟」発言は中国への牽制ではない! 日本の反日極左メディアは見当違い、台湾有事への米国参戦が鍵=ジェームズ斉藤

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ジェームズ斉藤(以下、ジェームズ):先日の麻生(太郎)副総理の台湾発言、「戦う覚悟」発言について日本のメディアは相変わらず見当違いな反応をしていたので一言言っておきたいと思います。

──ジェームズさんとしては、あの発言は批判すべきものではないと。

ジェームズ:いえ、批判してもいいんですよ。批判すべき点はありましたから。しかし、日本のメディアは「中国を刺激するな」「軽率な発言だった」と言った批判ばかりで的外れなんですね。

──それは同感ですね。どっちの国のマスコミなんだって感じがしますよね。

ジェームズ:日本のメディアは基本的に反日極左ですからね。ですから、見当違いなのは当然なのですが、そもそもいまのアメリカ政府の公式的な方針は戦略的曖昧性strategic ambiguityというものです。ambiってラテン語の2つという意味ですから二面性があるんですね。要は、台湾有事に参戦するとも、参戦しないともどっちにもとれるようにしておくということ。それがアメリカの公式方針なんです。

──風見鶏外交ですね。

ジェームズ:はい。アメリカはそれで対中抑止につながると思っていて、そうすることで中国は侵攻しないだろうと踏んでいるんですよ。日本政府にもそう説明しています。ただし、これは表向きの説明です。真意は何かというと、前から私が指摘していることでもありますが、日中戦争を画策しています。

──日本と中国、早く戦争してよというのがアメリカの本音だと。

ジェームズ:実は麻生さんもこのことを知っています。自民党のドンですし、アメリカとのつながりもあります。私も何度も会ったこともありますから、麻生さんの真意はわかります。彼は日本の議員に多い「アメリカ・マンセー」のポチではなく、現実主義者としてアメリカと付き合っているような人で、アメリカのマネをすればOKと思っているような発想はありません。そんな人が、わざわざ台湾であの発言をした理由は、中国を刺激することでも戦争をしたいためでもありません。理由はただ一つ、アメリカを挑発するためです。挑発して参戦させるためなのです。

──対中国への牽制とかじゃなかったんですね。

ジェームズ:全然違います。台湾有事が起こった時にアメリカが参戦しないと日本は終了です。ですから、「日米台の3カ国で抑止力を強靭なものにする」と言ったのです。アメリカが傍観しているだけですと、同盟国なしで日本単独で戦った昔の日清戦争の構図と同じになってしまいます。

──あの有名な日清戦争の風刺画みたい感じですね。

ジェームズ:日清戦争の時は、日中が韓国を巡って争う中、漁夫の利を狙っていたのはロシアです。しかし、台湾有事で漁夫の利を狙っているのはアメリカです。麻生さんはそれがわかっているのでアメリカの参戦を促したのです。日中の共食いの後にアメリカだけが利益を持っていくのは、いくら日本が属国とはいえ容認できるものではないです。実際、アメリカのメディアでも麻生発言はたくさん取り上げられています。日本がついに平和主義の殻から抜け出したといった論調が多いですね。ですから、効果は出ていると思います。

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画像は「Wikipedia」より

──アメリカは本当は参戦する気はなかったんですね。

ジェームズ:それは日本人も理解していないとマズいですよ。事実、去年の4月に米統合参謀議長のマーク・ミリーという陸軍大将が台湾有事について「ウクライナ・モデルが一番いい」と発言しています。

──つまり、武器を送るだけ。

ジェームズ:ミリー陸軍大将いわく「一番いいのは台湾人が台湾を守ることである。いまウクライナで実施している武器供与はかなり成功しているので、これを台湾にも適用する可能性がある」とはっきり言っていますから。米軍のトップがこれを言っているということは、米軍内ではすでにコンセンサスがとれているということです。最終決定は政治が決めるので、これが絶対ではないのですが、米軍内ではウクライナ・モデルが有効な選択肢としてホワイトハウスに共有されています。

 ですから、日本政府がいま一番心配しているのは中国人民解放軍ではなくて、アメリカ軍が参戦しないことです。これが一番、永田町の政治家や霞ヶ関の官僚を悩ませているんです。

──自衛隊だけだと危ないんですね。

ジェームズ:かなり犠牲者が出ますね、自衛隊側に。それでギリギリ勝てるかどうかです。何しろ、憲法9条のせいで「軍人」ではなく「特別職国家公務員」として戦場に行くので、戦時国際法の保護の対象とはならず人民解放軍に捕まった瞬間、即処刑か拷問を意味します。私が以前から主張している、「自衛官大量離職」の可能性です。対して人民解放軍の軍人は洗脳の結果、ゴリゴリの反日で「戦闘」ではなく日本人を「殺戮」するために前線に行きます。これでは開戦前から士気の差が明らかです。

 そしていまの話は中国が真正面から戦いを挑んできた時で、中国は必ずしも正攻法でくるとは限りません。台湾国内の親中派を動かして武力蜂起やクーデターを仕掛けたり、サイバー攻撃を仕掛けてくることは間違いないですから、そうなると勝てるかどうかは怪しいです。ただし、自衛隊と米軍であれば対処はできます。もともと自衛隊は米軍の後方支援のために作られている部隊ですので、本来の存在意義を大いに発揮できるんです。もう一つ、自衛隊だけで戦うことの懸念は指揮系統がメチャクチャになる可能性です。

──ああ、それはありそうですね。誰が指揮官なのかですよね。

ジェームズ:いまの法律ですと最高指揮官は総理大臣ですから、最高指揮官は岸田さんで、その下に浜田防衛大臣、防衛副大臣と文民が2人も入ります。彼らの指示を受けて吉田統幕長が動くということになります。

──それはやめてほしいですね。戦争ど素人の政治家がなぜ軍の指揮ができるんですか? って話ですよね。

ジェームズ:そうなんです。つまり、麻生さんの今回の発言はそういうものをすべて踏まえたものだったので、政治家として十分に評価できるんです。これは言わなければいけないものでした。いままで憲法9条で縛られてアメリカの言いなりになってきましたが、日本はその務めを十分に守ってきたわけじゃないですか、アメリカのために。であるのに、今回参戦しないとなればいままでの信頼関係は全部崩壊します、「これまでの日米関係はなんだったんだ」と。しかも、バイデン政権は背信行為が十分にありえるんで、要注意です。

──いまは特に信用できないんですね。

ジェームズ:アメリカ史上一番信用できない政権でしょう(苦笑)。ですから、あのタイミング、あの場所で言うしかなかったんですよ。それも麻生さんが。彼の場合、昔から問題発言が多かった人ですので、いまさらというのもあります。なにしろ、数年前の憲法改正の時は「ドイツのワイマール憲法の廃止を見習え」と言いましたからね。それはイコール「ナチスを見習え」ということですよ(苦笑)。

──ああ、ありましたね(苦笑)。

ジェームズ:凄いこと言ってるんですよ、あの人は昔から(笑)。それに吉田茂の孫ということもあって選挙ではとても強いので落選の心配もない。なので、今回の発言は麻生さん以外にはできない発言だったんです。アメリカに対して発破をかけるという意味で。

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麻生氏(画像は「Getty Images」より)

──必要な発言だったんですね。でも、さきほどジェームズさんも指摘していたように問題もあったと。

ジェームズ:基本的には間違ってないんですけど、「戦う覚悟」と言った瞬間に戦争を想定しなければいけなくなってしまうということです。麻生さんは戦争を回避するための言葉だと言っていますが、「戦う覚悟」という過激な表現を使った限りは覚悟だけでいいわけではなくて、戦争になった時にどれだけ犠牲を払って勝つことができるのか、軍事用語で「勝利の理論」というのがあるんですが、その勝利の理論というのを麻生さんは説明していません。これは大きな問題です。勝利の理論を提示できないまま戦う覚悟がありますと言った瞬間にアメリカの謀略にハメられる可能性が高いのです。

──アメリカの謀略!? どういうことですか?

ジェームズ:アメリカは日中戦争を画策していると言ったじゃないですか? そういう中で、日本が先走って「戦う覚悟がある」「持たないといけない」と言ってしまうと、「じゃあ、日本は戦えますよね。アメリカがいなくても1人で戦えますよね?」となってしまう可能性がある、ということです。

──発言を逆手に取られてしまうんですね。

ジェームズ:はい。麻生さんにはそのつもりはなかったと思いますが、ウクライナ・モデルが麻生さんの発言でますます台湾で適用される確率が高くなったということです。

──じゃあ、大失言だったということじゃないですか!

ジェームズ:いや、日本の政治家として発言には問題ありません。しかし、プラス・アルファとして日本が戦った場合、どう勝つか? 勝利の理論を説明しないといけなかったんです。ですから、失言ではなく、切り込み方が浅かった。もっと深く刺して欲しかったですね。

──例えば、どんなふうに言えば、プラス・アルファになったんですか?

ジェームズ:戦略の説明ですね。特に「勝利の理論」つまり、どういう勝利を求めているか? 言い換えれば、どこら辺で引くのかを明確にすべきだったのです。日露戦争の時に日本が勝てたのは勝利の理論があったからです。「ロシア軍を満州から駆逐すること」これがあの時の日本の勝利の理論です。そういうのが決まっていないと、どこまでも戦争は続きます。日本がモスクワを落とすまで日露戦争は終わらなくなりますよ。しかし、日本はあの時、「満州からロシア軍を駆逐する」「そうすれば戦争は終わり」と自ら線を引いたのがよかったんですよ。

──でも、今回麻生さんは「台湾海峡の安定」と言っていますよ。

ジェームズ:もちろん、それは「勝利の理論」と解釈できないことではないかもしれませんが、足りません。日本側が本気で「戦う覚悟」を持ち、しかも米国も参戦させたいのであれば、「台湾海峡の制海権を維持する」と発言するべきでした。世界の制海権は米海軍が握っており、自衛隊の存在意義も「米海軍の制海権維持に貢献すること」になりますから、これは米軍の話になってきます。日本側としてこのような踏み込んだ発言にしないと、「日本単独参戦」のような想定外の事態が起きかねないですね。

──制海権まで言わないと揚げ足を取られると。

ジェームズ:そういう世界ですので。

──ともかく、麻生さんの発言の問題は中国を刺激する云々じゃなくて、アメリカに対する踏み込みが足りなかったと。日本のメディアもそう書くべきだったんでしょうね。

ジェームズ:日本のメディアにそこまでの情報分析はできません。ですので、それはまったく期待していませんが、「中国を刺激するな」「軽率な発言だった」はないでしょうね。台湾有事の本質がまったくわかっていません。そもそも台湾有事は台湾友好とかは関係ないですから。感情的な議論の話ではなくて、日本に必要な物資が届くかどうかなのです。台湾というのは台湾海峡及び台湾周辺のシーレーンという意味で日本にとって死活問題なんですよ。食料とエネルギーが届かなくなるということです。いまの生活水準を維持したいのであれば、あそこは絶対守らないといけない、という、凄い簡単な話なんですよ。台湾をなぜ守らないといけないのか、その本質は、海上輸送の問題です。日本に入ってくる物資はエネルギーにしても食糧にしても台湾の周りを経由して海から日本に届くんです。それをふさがれたら日本はたちまち枯渇してしまいますよ。

──マスコミはそれを平和とか言って、論点ずらしをしてるんですね。

ジェームズ:マスコミの言う日台友好などのロジックが間違っていますね。冷静に軍事の視点で見てください。物資が届くかどうかの問題です。逆に、この視点に立つとアメリカにとって台湾はそこまで重要ではないんですよ。そもそも、LGBT問題やUFO問題にしか関心がない「トンデモ国家」レベルに成り下がった今のアメリカが台湾に派兵すると思いますか? 最初から、腰が引けているんです。その腰を上げさせるために日本はもっと積極的に、台湾問題を刺激していく必要があります。しかし、それは対中ではなく、アメリカを参戦させるための策略としてです。ここを日本人は理解しないといけませんね。

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文=中村カタブツ君

元『紙のプロレス』編集者。現在は認知科学者である苫米地英人先生の出版関連業務に携わっている。
著書『極真外伝―極真空手もうひとつの闘い』(ぴいぷる社)
編集『苫米地博士の「知の教室」』(サイゾー)
編集・構成『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』(サイゾー)

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