宇宙は巨大な量子コンピュータ!? プログラマー不在の「デジタル宇宙」とは?

 幾多の“知の巨人”たちが考えてきたこの世界と宇宙の実相だが、ある物理学者は宇宙は1つの巨大な量子コンピュータであると主張している――。

プログラマーが不在の「デジタル宇宙」

 スウェーデンの哲学者、ニック・ボストロムによって提唱された「シミュレーション仮説」はわれわれはコンピュータシミュレーションの中に生きているという理論である。

 この「ミュレーション仮説」の視点に立てば、宇宙はすべて何者かによって意図的に構築されたものであり、ある種の壮大な実験としてなのか、あるいは一種のゲームとしてなのか、いずれにしてもそこでは高度な知性を備えた宇宙人のプログラマーが信じがたいほど複雑な取り組みを行っていることになる。

 その一方で、宇宙はコンピュータアルゴリズムではあるものの、そこに“プログラマー”は不在であり、自然に生じたものであるというのが「デジタル宇宙(digital universe)」の考え方だ。

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画像は「Wikimedia Commons」より

 サイエンスライターのデイビット・チャンドラー氏が先日に科学誌「Nature」に寄稿したエッセイによれば、今年6月に亡くなった物理学者、エドワード・フレドキン氏は宇宙全体を実際には一種のコンピュータとみなすことができると結論に達していたと説明している。

「彼の見解では、それは“セルオートマトン(cellular automaton)”でした。周囲のセルの状態によって決定される、定義された一連のルールに従って状態を反転できる計算ビット、つまりセルの集合です。時間が経つにつれてこれらの単純な規則は、宇宙のあらゆる複雑さを、さらには生命を生み出す可能性があります」(チャンドラー氏)

 この概念の支持者によれば、従来の物理方程式はコンピュータ言語に置き換えることができ、物理法則と宇宙の構造は、複雑なコンピュータアルゴリズムの結果である可能性が指摘されている。

 もちろんこのような革新的なコンセプトにはさらなる研究と検証が必要だ。

「デジタル宇宙の基本的なアイデアはテスト可能かもしれません。宇宙が小さなプランクスケール(現在の物理理論が崩壊すると予想されるスケール)のデータビットのシステムによって生成されたとすれば、空間と時間は離散的で量子化された実体で構成されていなければなりません」とMITの機械エンジニアであり、1993年に量子コンピュータの最初の実現可能な概念を開発したセス・ロイド氏は語る。

「このような粒度の高い時空の影響は、たとえばさまざまな周波数の光が数十億光年にわたって伝播するのにかかる時間など、小さな違いとして現れる可能性があります。しかしこのアイデアを本当に突き止めるには、おそらくアインシュタインの一般相対性理論のマクロスケールでの効果とミクロスケールでの量子効果との関係を確立する量子重力理論が必要になるでしょう」(ロイド氏)

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宇宙から“謎”がなくなる!?

 著書『Programming the Universe』(邦訳『宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』早川書房、2007年刊)でセス氏は、この宇宙が1つの巨大な量子コンピュータであると主張し、物理学の法則を完全に理解すれば、小さい量子コンピュータを使って宇宙を完全に理解できるとしている。

「これはこれまで理論家には理解されていませんでした。ここではデジタル宇宙が自ら助けてくれるかもしれません。重力の量子理論に向かう一般的なルートは、徐々に本質的により計算的なものに見え始めています」とロイド氏は言う。たとえばヘーラルト・トホーフト氏によって導入された「ホログラフィック原理」は、我々の世界が低次元の現実の投影であることが主張されている。

「これらの量子デジタル宇宙のアイデアによって、これらの謎のいくつかに光を当てることができるかもしれないと期待されているようです」(ロイド氏)

 これまでのところこの疑問は未解決のままであるが、宇宙のデジタル構造はその“解像度”に重要な影響を与える可能性がある。それゆえ科学者たちはトホーフト氏によって提案されたホログラフィック原理にも注目しているのだ。

 チャンドラー氏によると、われわれの世界はより低い次元からの投影である可能性があり、それはある意味「デジタル宇宙」の考えに対応することが示唆されている。この原理は重力の量子理論の発展において新しい手がかりとガイドラインを提供する可能性があるということだ。

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 この分野の研究はまだ始まったばかりであり、おそらくわれわれは宇宙の理解において、コンピューターアルゴリズムが宇宙の秘密を解き明かすのに役立つ新しい時代の頂点に立っているのかもしれない。

 もし「デジタル宇宙」という考えが真実であることが判明したら、それは我々の周囲の世界に対する我々の理解の歴史的な転換点となり、おそらく我々は物理法則だけでなく、現実の基礎原理そのものを再考することになる。まさに“パラダイムシフト”が起こる瞬間となるのだ。

 宇宙が量子コンピュータであった場合、それがどんなに複雑なものであるにせよ、この宇宙から“謎”がなくなることになる。ブラックホールやワームホール、ダークマターやダークエネルギーなどの神秘的でミステリアスな“謎”がなくなった宇宙をぜひ見てみたい気もするし、逆に“謎”は残されていてほしい気もしてくるがいかがだろうか。

参考:「Anomalien.com」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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