世界が“不思議の国”のように見える「不思議の国のアリス症候群」の謎

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画像は「pixabay」より

 不思議の国のアリス症候群(以下、アリス症候群)は、目の前の対象物が大きく、あるいは小さく見える、空間が歪んで異様に遠くなったり近くなったりして見える、といった症状が起こる病気の一つである。ルイス・キャロルの有名な児童文学『不思議の国のアリス』の中で、主人公アリスが巨大化したり、矮小化したりする場面があることに由来して、1955年にイギリスの精神科医ジョン・トッドによって命名された。

 この症状は、幼児から小学生の子どもに多く見られるといわれているが、成人においても、場合によっては生涯に渡ってこの症状が現れるといわれている。近年では、タレントなどがその体験を語る機会も見られるようになり、知名度が高まっている。

 症状については他にも、頭部や手など相手の特定の部位だけが巨大になって見える、時間が異様に速く、あるいは遅く感じる、体の一部分が軽くなり浮遊した感覚がある、といったものがある。原因については今でもはっきりしていないが、視覚的な症状が多いことから、脳の視覚野に関係しているのではないかと考えられている。また、この症状が起こる兆候として、片頭痛に悩まされるという報告もある。

 一説には、芥川龍之介や樋口一葉の小説の中に、アリス症候群を思わせる描写もあることから、彼ら自身がこの症状を有していたのではないかとも言われている。ピカソのキュビズム的描画やスウィフトのガリバー旅行記の記述も、この症状に由来しているという説があり、さらにこの病気の命名由来にもなった『不思議の国のアリス』の作者であるルイス・キャロル自身も、この症候群を患っていたのではないかといわれている。

 キャロルには、片頭痛に悩まされていたという記録が残っており、作中アリスが巨大化するなどといったシーンは、キャロル自身の体験に基づいた描写だったのではないかとも考えられている。もちろん、アリスの世界の奇想天外な描写は、数学者でもあった彼なりの緻密な計算による産物であったことは否定できない。

 よく、「子供は大人には見えないものが見えている」と表現されることがある。何もない箇所を指さして「オバケ」といった発言をするといった行動などは、多くの親御さんにも経験があるだろう。そうした行動の背後には、一つにこのアリス症候群が関与している可能性も考えられる。安易に嘘であると否定するのではなく、受け入れつつも適切な対応をするのが、養育・発達の上でも好ましいことには違いない。

 また民話には、真っ赤で巨大な腕をもった怪異(「赤うで」)と遭遇したというものも伝わっており、どことなくアリス症候群と思わせる。

 怪談・怪異として伝わるものの中に、実はアリス症候群が関連している例があるのかもしれない。

参考:「不思議の国のアリス症候群の芸能人/有名人8名!基礎知識も徹底解説」「不思議の国のアリス症候群とは?症状と原因、治療法のまとめ!」「まんが日本昔ばなし 赤うで

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文=にぅま(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

ミステリーニュースステーションATLAS編集部員
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