「世界滅亡の日」算出における“致命的ミス”とは!?本当にあった終末予言の計算ミスで人望ゼロになった話
■預言と予言の違いを改めて解説
しばしば混同されるが、「預言」と「予言」は厳密に言えば異なるものである。
「預言」とは、ユダヤ教やキリスト教などの啓示宗教において、神から「預かった言葉」を意味し、その中には単に未来において起こる出来事を告げる「予言」だけでなく、信徒として行うべき行動や、守るべき社会規範なども含まれている。このことは、『聖書』や『コーラン』を一読すればすぐに納得できるだろう。
他方「予言」とは、未来に起きる事象について述べた言葉や文書を指す。未来を予測する方法は人によってさまざまであり、神からの啓示だけでなく各種の占いや、天文学的な計算に基づいたものも含まれる。もちろん『聖書』や『コーラン』にも、人類の未来に触れた部分があるから、「預言」と「予言」とは、一部で重なり合うものでもある。
特に『聖書』に関しては、古来その隠された意味を解読することで人類の未来、とりわけ世界の終わりの時を予測しようとする試みが歴史上何度も繰り返されてきた。『聖書』の字句に隠された暗号を一定の手法で解読しようという意味では、神からの啓示に基づく「預言」というより「予言」に分類されると言えるだろう。
このようなやり方でイエス・キリストの到来や最後の審判の年を発見したと述べた人物には、992年を世界の終わりと考えたスリンジアのベルナルド、1260年を聖霊の時代としたフィオーレのヨアキム、終末は2060年以降とした近代科学の父アイザック・ニュートンなど大勢いる。
■聖書の1日=1年?
ウイリアム・ミラー(1782~1849)もまた、聖書の予言を解読し、イエス・キリストの再臨の月日まで特定したと主張した人物の一人だ。
彼がまず注目したのは、『旧約聖書』の一書「ダニエル書」の第9章第24節の記述である。そこにはこう記されている。
「お前の民と聖なる都に対して七十週が定められている。それが過ぎると逆らいは終わり罪は封じられ、不義は償われる」
ミラーはこの70週間、つまり490日を、490年を意味するものと解釈した。
聖書の記す1日を1年、時には千年と解釈するやり方は、聖書の予言解読法のなかではかなり一般的なものである。仮にこの、490日を490年とする解釈が正しいとした場合、次の問題はその起点をどこに置くかということである。
ミラーは、この起点となる年を紀元前457年と考えた。
この年、ペルシャ帝国の皇帝アルタクセルクセスによって、バビロンの捕囚の際メソポタミアに連れ去られたユダヤ人たちはエルサレムに戻ることを許され、聖都エルサレムが再建された。つまりミラーは、「ダニエル書」の「お前の民と聖なる都」という記述を、帰還したユダヤ人の都エルサレムのことと解釈したのだ。そこで定められた70週の起点を、新たにエルサレムが聖都として復活した年と考えたのだ。
こうして計算するとそれから490年目は西暦33年、つまり、イエス・キリストが十字架にかけられたとされる年になる。
もちろん、イエスが十字架に架けられた年は正確には判明していない。これについては諸説あり、紀元27年、30年、33年などが候補となっている。ミラーは前述の聖書解釈もあり、33年をイエス磔の年と考えたようだ。
■世界の終わりを計算したけれど……!
これに力を得たミラーは、今度は「ダニエル書」第8章14節の次の記述に注目した。
「日が暮れ、夜の明けること二千三百回に及んで、聖所はあるべき状態に戻る」
この「聖所はあるべき状態に戻る」という記述を、ミラーはイエス・キリストが再臨することと解釈したらしい。
キリスト教関係の予言においては、終末において反キリストの出現、世界最終戦争ハルマゲドンの発生、神の千年王国、さらにイエス・キリストの再臨といった一連の事象が発生すると信じられている。したがってイエス・キリストの再臨は終末そのものをも意味することになる。
ミラーはその時期を紀元前457年から2300年後を計算して、1843年という数字を得た。
ミラーがこの予言を発表すると、彼のまわりにはこの予言を信じる何千人もの信者が集まった。ミラーは特定の宗派を樹立したわけではないが、こうして彼の周囲に集まった者たちを、便宜上ミラー派と呼ぶことがある。
しかし、1843年は何事もなく過ぎ去ってしまった。そしてこの時ミラーは、自分が非常に単純な、そして重大な間違いを犯していたことに気がついた。
じつは、紀元前457年から2300年後は、1843年ではなくて1844年になるのだ。
これは紀元前から紀元後にまたがって年代を計算する際に犯しがちなミスであるが、紀元0年という年が存在しないので、紀元前457年から457年後の年は紀元1年となる。したがって2300年後となると、西暦1年から1843年後、つまり1844年となるのだ。
このことに気づいたミラーたちは、予言の期日を1年延期して1844年とした。さらにユダヤの贖罪の日である10月22日という日付まで定め、この日にイエス・キリストが再臨すると宣言した。
もちろん、この予言も外れた。さすがにミラーの信者達も彼から離れたが、その中から多くの新しい宗派が生まれた。そのひとつセブンスデー・アドベンティスト教会は、現在アメリカで最大の信者数を誇る巨大宗派となっている。
※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。
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2024.10.02 20:00心霊「世界滅亡の日」算出における“致命的ミス”とは!?本当にあった終末予言の計算ミスで人望ゼロになった話のページです。キリスト教、ハルマゲドン、預言、最後の審判、ウィリアム・ミラーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで