7歳から12年間もオオカミに育てられた男、人間界に戻ったことを後悔!「動物の方が優しい…」ウルフマンのボヤキが胸に刺さる…

 7歳の時から12年間もオオカミに育てられた後で人間社会に戻された男、マルコス・ロドリゲスさん。現在78歳の彼はとっくに人間社会に溶け込んでいるかと思いきや、今でも、スペインの山奥で蛇やシカを追いかけていた「オオカミ少年」だった頃の生活に戻りたいという。「僕が人間社会でやっていくなんて、どう考えても間違いなんだ」と呟く様子からは、郷愁の念すらにじみ出る。

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画像は「Daily Mail」の記事より引用

■苦難続きの“社会復帰”

 ロドリゲスさんは3歳の頃に母親を亡くした。父親が別の女性と再婚するや否や、ロドリゲスさんは山奥の年老いた羊飼いに売られた。まだ幼かった彼は、羊飼いから火おこしの方法などを教わるものの、5年もたたないうちにこの羊飼いも他界してしまう。その結果、ロドリゲスさんは山奥で孤児となってしまったのだ。

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画像は「Daily Mail」の記事より引用

 その後、彼がなぜ12年間もオオカミに育てられることになったのか?それはわからない。というのも、警察が彼を発見した頃にはすでに12年もの長い年月がたちオオカミとの出会いに関する記憶が薄れていたことに加え、彼は人間の言葉を話せなくなっており、過去を「人間語」で説明できなかったからだ。人間語の代わりに、しばらくの間はオオカミの唸り声を発声していたらしい。

 人間界に連れ戻されてからの生活は、オオカミ少年として育った彼にとってつらいことの連続だった。サッカーを知らない、政治を知らない、何も知らない……。知らないづくめの彼を利用し、服従させ、虐待する大人たちも出てきた。

 しかし、悪い人たちばかりではなかった。彼を人間界に溶け込ませようとする支援者たちもおり、彼に言葉を教え、バーに連れて行き社交を教え、葉巻をくわえさせた。しかし、彼の葉巻のふかし方はどことなく野生感が漂ってしまったという。

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画像は「Daily Mail」の記事より引用

 道を歩かせると好き勝手な方角に進んでしまう彼に対して、まっすぐ歩く方法を教えた。人間社会に戻ってから10年たっても木登りに心躍らせる彼を嘲笑せず、なすがままきちんと見届けた。

 老年期に入り、年金暮らしをしようにも生活力のない彼にはボイラーを買う資金がなかった。暖房がなく、室内で火おこしができるはずもなく、ただただ凍えて真冬を過ごし続けた。しかし、やはり支援者たちが資金集めに奔走し、彼に暖房をプレゼントしてくれることになった。

 それでも、彼をばかにする人は後を絶たない。何十年たっても寂しさや偏見と戦い続ける彼に、医師はこう励ましたという。「あなたを無知だと決めつけて笑う人たちは、間違っているんだよ。むしろ、あなたのほうが僕たちよりも広い世界を知っているんだ」。

■「あの頃は命が最も輝いていた時間」

 ロドリゲスさんは、最近では支援者たちからの依頼に応え、小学校などで講演会を行っている。自由で純粋な心を持つ子どもたちに、自然と共生する大切さ、動物の優しさ、差別のつらさを伝えているという。

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画像は「Daily Mail」の記事より引用

「僕はね、メスのオオカミがお母さん代わりになってくれたから生き延びられたんだ。子オオカミたちが僕を差別せずに兄弟として迎え入れてくれたから、楽しい幼少期を送れた。どのキノコを食べたら毒死するのか、何を食べたら体に良いのか、全部彼らが教えてくれた。食べ物を、口で分け与えてくれた。彼らは僕を食べるのではなく、むしろ食べ物をくれたし、オオカミたちと一緒に転がって遊ぶのが何より楽しかったんだ」(ロドリゲスさん)

 当時を振り返るロドリゲスさんは、自然や動物とのふれあいの重要性を説きながら、結局最後はこう締めくくるのだ。

「あの頃は本当に、命が最も輝いていた時間だった。戻れるものなら戻りたい。ボールではなく、岩を素足で蹴るサッカーを動物たちとしていた、あの素晴らしい時間に戻りたいんだ」(ロドリゲスさん)

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画像は「Daily Mail」の記事より引用

 ロドリゲスさんは、あくまでも研究対象として社会学者たちの注目を浴びている。彼としても、人間界での学校教育に役立てることについては肯定的なようだが、人間の平均寿命を考えると、彼の残りの人生をどのように過ごさせてあげるべきか、周囲も悩むところだろう。

 森に戻してあげるべきか、このまま、彼にとって不自然な生き方を人間界の教育のためにお願いするべきか……。どの選択を取っても、決して平坦な道のりではなさそうだ。

参考:「Daily Mail」、「Oddity Central」、ほか

 

※当記事は2018年の記事を再編集して掲載しています。

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文=鮎沢明

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