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パリの劇場、300人のホームレス移民による占拠で破産の危機に

2025.01.18 18:00 編集部

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パリの劇場、300人のホームレス移民による占拠で破産の危機にの画像1 — 画像は「Oddity Central」より

　昨今、欧州各地で深刻化する難民問題。その渦中で、パリの由緒ある劇場が思いがけない形で注目を集めることとなった。人道支援と経営存続の板挟みに揺れる、現代社会の縮図とも言える状況が浮き彫りとなっている。

　フランス・パリの文化施設「ゲテ・リリック劇場（Gaîté Lyrique Theater）」が、300人のホームレス移民による占拠を受け、閉鎖を余儀なくされている。この事態はすでに1カ月以上続いており、劇場は経済的危機に直面しているという。

突然の占拠、劇場の閉鎖へ

　占拠の始まりは、2023年12月10日に開催された無料イベント「フランスにおける難民受け入れの再考」だった。このイベントにはアフリカ出身の移民約250人が参加していたが、終了後も会場から立ち退かず、後にさらに約50人が合流した。これにより、ゲテ・リリック劇場は占拠され、予定されていた全ての公演が中止に追い込まれた。

　劇場の経営は大きな打撃を受けている。収益の70％を公演に依存している劇場は、12月だけで数十万ユーロの損失を出した。残りの30％は国の補助金で賄われているが、職員約60人の給与支払いにも苦労しているという。それにもかかわらず、劇場は「厳冬期に彼らを路上に追いやるのは考えられない」との声明を発表し、フランス政府および地元自治体に適切な避難所の提供を要請した。

社会的問題への対応を模索するパリ市

　パリ市庁舎もまた、この状況に対する立場を明確にしている。市からの声明では「ゲテ・リリック劇場の占拠は遺憾だが、住まいを失った若者たちへの支援の必要性を支持する」と述べられている。さらに、「強制的な立ち退きは行わない」という姿勢を示し、社会的緊急事態には社会的解決が求められるとして、適切な住居提供を訴えた。

　劇場の正面には「住宅緊急事態、路上の孤立した未成年者たち！」と書かれた横断幕が掲げられており、占拠している移民たちを代表する集団は、その多くが未成年であると主張している。フランスの法律では、未成年者に対して福祉機関が避難所や支援を提供する義務がある。しかし、『ル・フィガロ』などのフランスメディアは、占拠者の大半がホームレスの成人であり、すでに社会福祉サービスに登録されていると報じている。

パリの劇場、300人のホームレス移民による占拠で破産の危機にの画像2 — 画像は「Le Figaro.fr」より

メディアへのアクセスは制限

　フランス国内メディアは、劇場へのアクセスや移民の代表者との対話を試みているが、現在までのところ成果は出ていない。『ル・フィガロ』は、移民の代表者が「劇場が自主的に閉鎖し、移民たちが滞在できるようにした」と語ったと報じている。一方で、劇場側は「取材許可は移民集団の代表者が管理している」と主張しており、双方の言い分が食い違っている。

　ゲテ・リリック劇場の占拠問題は、パリの移民問題と社会福祉の現状を浮き彫りにしている。劇場の運営継続が危ぶまれる中、フランス政府や地元自治体がどのように対応するかが注目される。占拠者たちの人道的支援と劇場経営の再建を両立させる解決策が求められる。果たして、この文化施設はその使命を再び果たすことができるのだろうか。そして、このような問題は、近い将来の日本においても対岸の火事というわけにはいかないのかもしれない。