宇宙から時速1300キロで地球に落下!極限のスカイダイビングを成功させた男の挑戦

画像は「YouTube」より

 人類の限界に挑戦し続けるスポーツの世界で、時に「狂気」とも呼べる壮大な挑戦が行われることがある。2012年、オーストリアのスカイダイバー、フェリックス・バウムガルトナーが成し遂げた「宇宙からの自由落下」は、まさにそんな挑戦の一つであった。

前代未聞の挑戦

 バウムガルトナーは地上約3万9000メートル(成層圏)まで気球で上昇し、そこから地球めがけて飛び降りるという前代未聞の挑戦を行った。この高度は旅客機の巡航高度の約4倍にも相当する。彼は3万6000メートルの自由落下を行い、残りの距離をパラシュートで降下した。

 この挑戦で彼は人類初の自由落下での音速突破、最高高度からのパラシュート降下、自由落下での最高速度という3つの世界記録を樹立した。しかし、この挑戦の成功は決して偶然ではなかった。6年にも及ぶ入念な計画と訓練、そして特別に設計された気圧服があってこそ実現したものだった。

命を守る特殊スーツの秘密

 この種の挑戦を過去に試みた4人のうち、生還できたのはわずか2人という厳しい現実があった。そのため、バウムガルトナーの命を守る気圧服の開発は、プロジェクトの最重要課題の一つとなった。

 スーツの構造は4層になっており、最外層は耐火素材ノーメックス(Nomex)で作られ、内部にはゴアテックス(Gore-Tex)を含む特殊な構造が採用されていた。ゴアテックスは体内の湿気を外に排出しながらも、スーツ内の気圧を維持する役割を担っていた。

 このスーツがあったからこそ、バウムガートナーは成層圏の極寒の環境、低酸素、そして音速突破時の衝撃から身を守ることができたのである。

 通常の宇宙服と比べて柔軟性を高めた設計だが、それでも着用者の動きは大きく制限された。バウムガルトナー自身、「枕を通して呼吸するようだ」と表現している。訓練段階では、スーツの制約によってパラシュートのコードを誤って切断してしまう危険性が発見され、設計変更を余儀なくされた。

歴史的成功とその後

 2012年10月14日、世界中の人々がライブ中継(安全のため若干の遅延はあったが)で見守る中、バウムガルトナーは挑戦を敢行した。音速突破の瞬間、防音性の高い気圧服のおかげで、彼自身はほとんど何も感じなかったという。わずか9分9秒で、ニューメキシコ州の地上に無事着地を果たした。

画像は「YouTube」より

 バウムガートナーの偉業は、世界中の人々に衝撃を与えた。しかし、記録は破られるためにあるものだ。

 2014年、コンピューター科学者のアラン・ユースタスが、さらに高い41,422メートルの高度から自由落下し、バウムガートナーの記録を更新したのである。

 とはいえ、音速突破のインパクト、そして全世界がリアルタイムで見守ったスリルという意味では、バウムガートナーの挑戦が持つ意義は今も色褪せていない。彼のジャンプは、スカイダイビング史上最も大胆な瞬間の一つとして語り継がれていくだろう。

参考:UNILAD、ほか

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