三次元は“幻想”だった?宇宙の正体に迫る「ホログラフィック宇宙論」の衝撃

この宇宙はホログラムであり真の姿は二次元であると考える科学者は少なくない――。ブラックホールを説明するためにはこの宇宙は二次元でなくてはならないというのだ。
■宇宙は二次元のホログラムなのか?
この世界はゲームの世界のようなシミュレーションであるという「シミュレーション仮説」では、シミュレーションを作った“誰か”がいるということになる。
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神のような存在の“誰か”がいないのであれば「シミュレーション仮説」は成り立たないのだが、神がいなくとも宇宙の成り立ちを説明できるのが「ホログラフィック宇宙論」である。宇宙の真の姿は二次元であり、ホログラムのように三次元的に表現されているというのである。
米バーミンガム大学の理論物理学者マリカ・テイラー教授は、宇宙を三次元構造とみなす従来の見方は不完全かもしれないと説明する。テイラー教授は我々が見ている現実はホログラム、つまり二次元の境界に保存された情報の三次元の投影である可能性があると示唆している。
現実が機械によって制御されるシミュレーションである「シミュレーション仮説」とは異なり、テイラー教授は「ホログラフィック宇宙論」は我々の世界は“誰か”が作ったものではないのだと指摘する。現実の根本的な性質は、おそらく我々が想定しているものとは異なる物理法則に基づいて機能しているということだ。
アメリカの代表的な素粒子物理学研究所であるフェルミ国立加速器研究所も「ホログラフィック宇宙論」を「シミュレーション仮説」と混同しないよう警告している。
「我々の馴染み深い三次元宇宙が、最も基本的なレベルでは、何らかの形で二次元にエンコードされているという考えは、二次元表現の『外側』に、幻想を『投影』したり、シミュレーションを『実行』している誰かや何かが存在することを意味するものでありません」と研究室は説明する。
なぜ科学者は宇宙が二次元であり、ホログラムであると考えているのか。
その疑問に対する答えは、ブラックホールが物理学の基本法則に違反することを示唆する「情報パラドックス」として知られるスティーブン・ホーキング博士が提唱した問題にさかのぼる。
量子物理学の法則では「情報」は生成も破壊もできないとされているのだが、ブラックホールに落下した物質の情報は失われると考えられている。つまりブラックホールの存在は量子物理学の法則に反していることになる。
しかし、ブラックホールが二次元であるとすればこの矛盾は解消されることになる。ブラックホールに投げ込まれた情報は破壊されるのではなく、ブラックホールの二次元境界全体に拡散されることになり、質量のない二次元の情報として保存されるのだ。

ブラックホールのみならず宇宙が二次元であるとすれば「情報パラドックス」が解消されるわけだが、これまでのところ、科学者たちは「ホログラフィック宇宙論」の決定的な証拠を見つけてはいない。
シカゴ大学の天体物理学者クレイグ・ホーガン教授は、ビッグバンの残光である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」に手がかりが隠されている可能性があると考えている。
「もしそれがホログラフィックだとしたら、CMBパターンはその兆候を示しています。CMBパターンは、宇宙がどのようにして作られたかという過程のイメージを保存しているのです」(ホーガン教授)
「ホログラフィック宇宙論」はまだ推測の域を出ていないのだが、現在進行中の研究では「ホログラフィックノイズ」、つまり宇宙がホログラムとして機能しているかどうかを明らかにできる可能性のある微小なノイズを検出することを目指している。物理学者たちは、宇宙誕生の反響の中に答えを探し続けているのだ。
ホログラフィックノイズを検知する日は近いのか。そしてその時、宇宙の実像が二次元であることが証明されるのか。「ホログラフィック宇宙論」は未来に託された興味深い仮説の1つであることは間違いない。
参考:「Daily Mail」、「Anomalien.com」ほか
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2024.10.02 20:00心霊三次元は“幻想”だった?宇宙の正体に迫る「ホログラフィック宇宙論」の衝撃のページです。ホログラム、ブラックホール、二次元、宇宙などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで