『ラスト・オブ・アス』の世界が現実に！？ “ゾンビ菌”の驚異のメカニズム

• 
• Xでポスト
• 

　世界中で大ヒットしたサバイバルアクションゲームであり、その実写ドラマ版も高い評価を得ている『ラスト・オブ・アス（The Last of Us）』。作中で描かれる、菌類に寄生され変異した「感染者」の存在は、多くの視聴者・プレイヤーに強烈な印象と恐怖を与えた。

　しかし、この恐るべき設定は完全な空想の産物ではないかもしれない。現実世界にも、宿主の肉体に侵入し、心を操って凶暴な「スーパースプレッダー」に変える「ゾンビ菌」が存在するのだ。現在、これらが影響を及ぼすのは特定の昆虫に限られるが、その感染プロセスは、ゲームやドラマで描かれる恐怖と不気味なほど似通っている。

　英紙MailOnlineがAIによって、人間がこれらの「ゾンビ菌」に感染した場合の姿を描き出したところ、『The Last of Us』の描写はかなり現実に近いことが示唆された。しかし専門家は、ドラマが見落としている点もあると指摘する。

感染から支配へ… ゾンビ化の恐るべきプロセス

第一段階：感染
　菌類は「胞子」として環境中に広がり、宿主を待つ。昆虫の場合、胞子は外骨格を突き破って侵入するが、人間の場合、多くは胞子の吸入から肺での感染が始まると考えられる。

第二段階：定着
　体内に定着した菌類は、「菌糸」と呼ばれる糸状の構造を伸ばし、肉体を突き破りながら体全体へと広がっていく。この段階では、外見上の変化は少ないかもしれないが、内部では壊滅的な感染が進行する可能性がある。

第三段階：制御
　菌類は化学物質と物理的な操作で宿主の行動を支配し始める。オフィオコルディセプス属に感染したアリは、巣の仲間との接触を断ち、活発に動き回ったり、激しい痙攣を起こしたりする。これはラスト・オブ・アスの「ランナー」や、身を隠す「ストーカー」の段階に似ている。ただし、ラスト・オブ・アスとは異なり、現実のゾンビ菌は宿主を殺す直前まで脳を破壊せず温存することが分かっている。

第四段階：拡散
　最終段階では、菌類は宿主を完全に利用し、胞子を拡散させるための器官（子実体）を作り出す。オフィオコルディセプス属に感染したアリは、高所に登って葉の裏に自らを固定し、死後、体からキノコのような柄が伸びて胞子を撒き散らす。また、セミに寄生するマッソスポラ属のように、宿主の生殖器を胞子の塊に変え、性衝動を操って他の個体に感染を広げる、さらに恐ろしい例も存在する。

現実化の可能性は？ 人類が持つ「防御壁」

　では、『The Last of Us』のような事態は現実に起こりうるのだろうか？ 幸いなことに、現時点ではその心配はほとんどない。昆虫に適応した菌類が、人間の高い体温で生存するのは困難だからだ。さらに、たとえ体内で生存できたとしても、人間の「血液脳関門」という防御システムが、菌類が脳を操るために必要な化学物質の侵入を阻むだろう。

　しかし、もしゾンビ菌が本当に人間に感染するように進化したとしたら…？ 今はまだSFの世界の話だが、自然界の脅威は時に我々の想像を超える。ドラマが描く恐怖は、決して他人事ではないのかもしれない。

参考：Daily Mail Online、ほか

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

関連記事

• 

  世界各地に残る“ゾンビ対策”とゾンビを生み出す“禁術”

• 

  中国の有名“都市伝説”5選！ 北京375番バス、人肉饅頭、ゾンビラッシュ、猫面婆…

• 

  生きる屍に…「死んだまま生きた」17歳の少女 ― “歩く死体”になるコタール症候群とは

• 

  人間にも冬眠機能はある！？人工冬眠はもはや夢物語ではない！【ヤバめの科学チートマニュアル＝久野友萬】