世界各地に残る“ゾンビ対策”とゾンビを生み出す“禁術”

ゾンビといえば現代のポップカルチャーの産物と思われがちだが、死者が再び動き出すという恐怖は、遥か昔から人類の想像力を刺激してきた。古代世界では、死者の復活を防ぐための奇妙で念入りな埋葬儀式が世界各地で行われていたのだ。
たとえば、トルコで見つかったローマ時代の火葬場跡では、焼かれた遺体の上に打ち曲げられた釘や煉瓦が置かれていた。ベルギーの研究チームによれば、これは単なる棺の固定ではなく、「不穏な死者」を地中に封じるための魔術的な障壁だった可能性があるという。
古代ギリシャでは、死者が「レヴナント(生ける死者)」として地上をさまようという信仰が広く存在していた。なかでも「不吉な日」に生まれた者や、双子、七番目の子ども、社会から逸脱した人物、生前に奇妙な特徴を持つ者などは、特にレヴナントになる運命を背負っていると考えられていた。
シチリア島のギリシャ植民都市で発見された墓では、遺体の頭部や腕に巨大な石臼をのせていたり、遺体を逆さに埋葬した例もある。これらはゾンビ化を防ぐための処置と考えられている。
死者の口に石、切断、焼却…中世ヨーロッパの恐怖対策
アイルランドでは、8世紀の墓から発見された2体の遺体が、口の中に大きな石を詰められて埋葬されていた。これは魂の出入り口とされた「口」を封じ、悪霊やゾンビの蘇生を阻止するためだったとされる。
一方、イングランド・ノースヨークシャーの村では、200年にわたって断続的に行われたとみられる、焼却・斬首・切断された骨が多数見つかっている。当初は食人の跡と考えられていたが、後の研究で「ゾンビ封じ」の儀式だった可能性が指摘された。
これらの遺体は村の共同墓穴にまとめて投げ込まれており、将来の「死者の反乱」に備えた社会的な防衛策だったのではないかとされている。

ゾンビを”つくる”儀式──ハイチのヴードゥー信仰
死者が蘇るのを防ぐどころか、意図的にゾンビを作り出す文化も存在する。ハイチのヴードゥー教におけるボコール(呪術師)は、”ゾンビパウダー”と呼ばれる毒性のある粉末を使って生者を仮死状態に陥れ、埋葬後に掘り起こして”ゾンビ”として蘇らせるという。
その後、精神を失わせる薬草を与えることで、対象者は記憶と言葉を奪われ、ボコールの奴隷として農作業などに従事させられるとされている。
1980年代には、18年前に死亡したとされる人物クレルヴィウス・ナルシスが故郷に戻ったという実例が報告され、実際に彼の姉妹によって本人であると認められた。この事件をきっかけに、民族植物学者ウェイド・デイヴィスが現地調査を行い、ゾンビパウダーの成分としてフグの毒(テトロドトキシン)が含まれていたことを突き止めた。
古代から続く「甦る死者」への恐怖は、各地でユニークな儀式を生み出してきた。その中には、現代科学の光を当てることで、そのメカニズムの一端が見えてくるものもある。ゾンビ伝説は単なる迷信ではなく、死への畏怖や社会的排除といった、人間の根源的なテーマを映し出す鏡なのかもしれない。
参考:Big Think、ほか
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2024.10.02 20:00心霊世界各地に残る“ゾンビ対策”とゾンビを生み出す“禁術”のページです。ゾンビ、ゾンビ・パウダーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで