「死刑囚の皮膚で装丁された本」が再び発見され展示へ… 倫理を試す“狂気の書”

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画像は「ZME Science」より

 死刑囚の皮膚で装丁された2冊目の本が“再発見”されて展示されることになった。人道面、倫理面でこれらの不気味な書籍は今後も保管されるべきなのだろうか――。

■2冊目の人皮装丁本を“再発見”

 1827年、イギリス・サフォーク州で恋人を殺害して納屋の床下に埋めたウィリアム・コーダーは1828年に絞首刑に処された。

「レッドバーン殺人事件(Red Barn Murder)」として知られるこの事件の裁判記録本はなんと、コーダーの皮膚で装丁された人皮装丁本(にんぴそうていほん、Anthropodermic bibliopegy)として製作されたのだ。

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画像は「ZME Science」より

 この不気味な書籍は1933年から英サフォーク州ベリー・セント・エドマンズの「モイズ・ホール博物館」に展示されているのだが、書庫に眠っていた2冊目の​​本が最近発見され、現在は同博物館で並べて展示されている。

 オリジナルのコーダーの人皮装丁本はカバー部分がすべて皮膚で装丁されているのだが、2冊目の本は背表紙と角の部分のみに皮膚が使われている。モイズ・ホール博物館の文化遺産担当官、ダン・クラーク氏によると、製作者たちは無駄を嫌い「余った皮」を使ったのだと説明する。

 この2冊目の本は数十年前に、コーダーの遺体を解剖した外科医と密接な関係のある家族から寄贈されたものであり、その後しばらく忘れ去られ書庫で死蔵されていたのだが、今回書庫の点検中にスタッフによって“再発見”されたということだ。クラーク氏はこれらの本は歴史的に極めて重要なものだと述べている。

 一方、『Horrible Histories』の著者、テリー・ディアリー氏は、これらの本は「吐き気を催すような遺物」だと述べ、個人的には「燃やしたい」と考えていることを英紙「Telegraph」にコメントしている。ディアリー氏は若かりし頃、舞台で役者としてコーダーを演じたことがあるのだが、コーダーのあまりの非道さにその後にトラウマになったという。

 人間の皮を使った人皮装丁本の製本は19世紀には死刑囚への処罰手段として広く行われていた。また身寄りのない遺体が医学研究のために解剖された際に、皮膚が記念の意味を込めて医学書の装丁に使われることもあった。

 現代の倫理観から見れば非人道的な処置であることは明らかだ。

 世界の公的機関に所蔵されている人皮装丁本は50冊以上あるといわれているが、倫理面から展示することや、保管を続けること自体についても一部からは問題視されているようだ。

 2024年3月には米ハーバード大学は所蔵していた19世紀の人皮装丁の展示を「倫理的に問題がある」として取り下げている。

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画像は「ZME Science」より

 米ワシントンD.C.の「スミソニアン博物館」では2015年以降、人間の遺体の展示を原則禁止とする方針に転換している。人体標本については日本でも「人体の不思議展」が問題視された経緯もある。

 モイズ・ホール博物館は今後もコーダーの2冊の人皮装丁本の展示を続けていく予定だが、一部では物議を醸すのかもしれない。

 人皮装丁本は骨董品的な価値もあるとされ、コレクターの間では数百万円で取引されることもあるという。展示についての議論は続きそうだが、興味のある向きはイギリスに行った際に肉眼で確かめてみてもいいのだろう。

参考:「Daily Star」、「ZME Science」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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