超有名観光スポットに突如“生首”! 浮いた首なし遺体と謎の遺書… タイの外国人首吊り事件とは?

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※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。

――タイ在住歴20年の私バンナー星人が、タイ社会では馴染みの深い、妖怪、幽霊、怪談、呪術、占い、迷信といったものに光をあて、日本人の目には触れることが少なかったタイの怪奇世界に皆様をお連れします。

■ラマ8世橋から垂れ下がった首

 チャオプラヤー川で2つの地区に分断されているバンコクは、船に頼るしかなかった昔とは違い。現在では大きな橋がいくつも架けられ、車や電車での往来が普通の光景となっている。中でも「ラマ8世橋」はその美しいフォルムが有名で、チャオプラヤー川のリバークルーズではハイライトにもなっている。また、その橋を望むリバーサイド・エリアにはレストランが多数立ち並び、日本で話題のBLドラマ撮影地に選ばれたこともあり、「聖地巡礼」目当ての日本人観光客もいる。

 しかし華やかで賑やかな現在の姿とは裏腹に、過去「ラマ8世橋」で起きたあの恐ろしい事件について、日本では語る者がほとんどいない。

 10年以上前のある朝、コンビニで買い物し、レジ横の新聞に何気なく視線を移して驚愕した。「ラマ8世橋から垂れ下がった首!」――ショッキングな見出しと橋から長いロープに括られてぶら下がる丸い物体の写真が目に入った。ご丁寧に、その丸い物体の正体「生首」の拡大写真も添えられている。思わず目が合ってしまった写真の中の虚ろな目とその顔は、映画「SAW」のジグソーによく似ていた。今でもはっきりと覚えている。生首の眼差しを思い出しながら、当時の事件について情報を洗い出して渉猟してみた。

 2009年2月23日付の新聞における事件第一報には、このようにある。「ラマ8世橋から吊り下げられた白人男性の首は鋭い刃物で切断された模様、男性の身元は調査中」とのことだった。浮いていた首なしの遺体は回収されたが、身元を判別できるものは何も見つからなかった。そこで警察は顔写真を持って、白人旅行者が利用しそうなカオサン地区のゲストハウスや、ゴーゴーバーがひしめくナナ地区で聞き取りを開始。しかし、すぐには有益な情報を得られなかった。

■殺人か?自殺か?

 実は遺留品がそこに1つだけ残されていた。生首は右耳を下にして、まるで川上を見つめるように橋からぶら下がっていた。遺留品は、右耳に引っかかっていたビニール袋だ。「Camera por-ta vesovo」というロゴ入りの袋は、イタリアのホテルのものだと判明している。当然、捜査チームはイタリア・マフィアによる犯罪の線を想定し始める。首を切り落とし、見せしめに橋の上から吊るしておく。そんな残忍なやり口が、まさに映画の中のマフィアそのものだったからだ。しかし、現場検証が進むにつれ、このマフィア説には説明できない2つの謎が浮かび上る。

 第一は「橋桁に飛び散っていた血痕」だ。生首を吊るす際に血が橋桁まで飛び散ったならば、頭を切断した直後か、切断面の血が固まる前でなくてはならない。しかし、橋桁を除いて、橋の路面には血痕ひとつ残っていなかった。

 第二の謎は「欄干に残された遺書めいた文章」である。欄干には、“cath i want to..but i can not i came to Bangkok to be you”という書き置きがあった。文章の拙さから、英語を母国語とする国の人間ではない、と思われた。もちろん推測の域は出ない。

 行き詰まる捜査班に事件の突破口を開いたのが、死体検分の結果だった。バンコクでも指折りの権威あるシリラート病院は「首の断面周りの皮膚を調べたところ、刃物によって切断されたのではない可能性が見られる」と発表し、続けて、切断面にある無数の血管を一本一本詳細に調査検分。結果、血管の切れ方は均一でなく、何かの衝撃で頭部が胴体から千切れた状態に近いと判明。最も可能性ある説明は「死亡男性は自らロープを巻き橋から飛び降りた、その落下の衝撃で首に食い込んだロープが頭部を切断するに至った」となった。

 新聞が報じたのはここまでだ。しかし、この事件を追及した興味深い個人サイトを見つけたので紹介することにしよう。

■報道の先にあったミステリー

 サイト所有者の名はPhysikMan。「物理男」のニックネーム通り、物理的見地からロープの長さや落下速度を考慮し、数式によって首がロープで切断される可能性を証明した点がユニークだ。それだけでなく、生首となった男性の当日の心境も交えた仮説を時系列で論じているため、事件当時の状況がありありと浮かんでくる。タイという異国において、残酷で稀有な死を遂げた、ある白人男性の最期を想像してみてほしい。以下、物理男の仮説である。

■世をはかなんだ男の最期

 人生に絶望した――その男は歩きながらあるものを探していた。幸運と言うべきか、不幸と言うべきか。雑貨屋で、あつらえ向きのロープを見つけた。キロ単位で売り出されているトラックの荷台用ロープだ。6メートルもあれば十分だろう。購入後、男は「ラマ8世橋」に向かった。

 橋の上に立つ。混乱した頭ながら、今、誰かにこの気持ちを伝えたくなった。そして欄干にこう書き付ける。「生きていきたいけど、もう無理だ。君と生きるためにバンコクに来たのに。(Cause I want to live but I cannot anymore, I came to Bangkok to be with you)」

cath i want to..but i can not i came to Bangkok to be you.

 混乱しているせいか、書き損じてしまった。そういえば、首吊り後の死体は悲惨な顔してたな。無残に変形した死に顔を晒すのは嫌だ――男はロープを購入時に得たビニール袋を頭にかぶり、ロープを自らにかけた。そして、飛んだ。

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Image by Dennis Funch from Pixabay

 6メートルのロープが伸びきる。同時に男の首が絞まる音がする。首にかかる衝撃は、男が想像していたものを遥かに超えていた。まるで糸で切られたゆで卵のように胴体は切り離され、血飛沫を上げて水面へと落下していく。遺体が水面に落ちる音がした。静かに揺れる丸い物体を吊るす橋桁には、塗りたてのペンキのように赤黒い跡だけが残っていた。

 約8時間後、いつもの「ラマ8世橋」の下を通過しようとボートを運転していた男性は思わず叫んでしまった。最初に美しい橋を背後に風にはためいくビニール袋が見えた。そして、何かがぶら下がっていることに気付いたのだ。

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By Dominic NelsonOwn work, CC BY-SA 4.0, Link

 仮説ではあるが、以上がこの事件のあらましであとる。サイト所有者・物理男は、白人男性の首にかかる衝撃を数式で証明している。高すぎる場所から長すぎるロープを使った首吊りは、結果的に恐れていた以上の「無残な姿」を晒すことになってしまった。ロープが首に食い込み、千切れる感覚、落ちていく身体を感じながら、その死の瞬間に、男の目には何が映っただろうか。夜の灯りに照らされる美しいチャオプラヤー川の水面に、男は何を思ったのだろうか。

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文=バンナー星人

2004年よりタイ在住。バンコクの公立学校にてタイの高校生に日本語を教える傍ら、2017年に、高野山大学院通信課程密教学修士号取得。仏教とオカルトが織りなすアメイジングなタイの魅力にとりつかれている。

Twitter : @berialshunnya

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