「世界一長い名前」を持つ男の悩み ― 読み上げるのに20分、本人でさえ発音できない名前とは

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　あなたの名前をフルネームで言うのに、どれくらいの時間がかかるだろうか。おそらく数秒だろう。しかし、オーストラリアに住むローレンス・ワトキンスさん（60）は、そうはいかない。彼のフルネームを読み上げるには、実に20分もの時間を要するという。ギネス世界記録に認定された「世界一長い名前」を持つ彼の、数奇で、そして少しだけ哀愁漂う物語を紹介しよう。

2310個の名前を持つ男、その誕生秘話

　普段、彼はごく普通に「ローレンス・ワトキンス」と名乗っている。しかし、その「ローレンス」と「ワトキンス」の間には、実に2308個ものミドルネームが存在する。合計2310個からなる彼の名前は、まさに世界一だ。

　彼がこの奇妙な名前を手に入れたのは1990年のこと。当時、図書館の配達員として働いていた彼は、ある日ギネス世界記録の本を読み、「自分も何か世界一の称号が欲しい」と一念発起。周りにある何千冊もの本から、来る日も来る日も新しい名前を選び出し、法的に改名するという、とんでもない行動に出たのだ。その努力（？）は実を結び、彼は見事「世界一長い名前」の称号を手にすることになった。

パスポートは別紙6枚、結婚式では20分の“名前朗読”

　しかし、世界一の称号には相応の代償が伴った。彼のパスポートには、「名前の一覧は別紙参照」との注意書きが。そして、それに続く6ページにもわたって、彼の名前がびっしりと記載されている。

　彼が自身のフルネームを耳にしたのは、後にも先にも一度きり。それは、彼の結婚式でのことだった。結婚の誓いの際、司祭が彼の名前を読み上げるのに、なんと20分もかかったという。新郎新婦も、そして参列者も、どんな気持ちでその20分間を過ごしたのだろうか。

　彼の2310個の名前は、伝統的なものからユニークなものまで様々だ。お気に入りは、マオリの言葉に由来する「Kalwhakamatautau」と、記号的な「AZ2000」。後者は、「AからZまで、そして2000以上の名前を持つ」という意味が込められているという。しかし、その多くは彼自身でさえ「正しく発音するのが難しい」と認めている。

世界一の“がっかり”―誰も共有してくれない熱意

　世界記録保持者という輝かしい称号。しかし、その反応は彼が期待したものとは少し違ったようだ。

「僕が2000以上の名前を持っていると話したときの、みんなの反応は、正直言って少しがっかりするものなんだ。僕と同じような熱意を共有してくれないんだよね」

　まあ、そりゃそうだろう。しかし、彼にとっては一つ一つが、図書館の本のページをめくりながら選び抜いた、大切な「自分の一部」なのだ。ギネスの認定基準の変更で、公式記録上の名前の数は少し減ってしまったが、彼の戸籍上の名前は今も変わらず2310個。近々、新しい認定証が発行される予定だという。

　世界一の称号を手に入れるために、自らのアイデンティティそのものを拡張し続けた男、ローレンス・ワトキンス。彼の物語は、人が「世界一」という言葉にいかに魅了され、時に突拍子もない行動に出てしまうかを、ユーモラスに、そして少しだけ切なく教えてくれる。

参考：Mirror、ほか

TOCANA編集部

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