“不安になる絵画”6選 ― ただ怖いだけじゃない、歴史が生んだトラウマ級アート
“不安になる絵画”6選 ― ただ怖いだけじゃない、歴史が生んだトラウマ級アート
芸術は、時に我々の心の奥底に眠る、最も根源的な恐怖を呼び覚ます。神話に描かれた地獄の光景、あるいは現実世界の戦争がもたらした悲劇。ここでは、一度見たら忘れられない、歴史上、最も恐ろしく、そして見る者を不安にさせる6枚の絵画を紹介しよう。
1. ヒエロニムス・ボス『快楽の園』

オランダの奇才、ヒエロニムス・ボス。彼の代表作である三連祭壇画『快楽の園』は、一見すると、アダムとイヴが描かれた穏やかな創造の物語のように見える。しかし、その扉が開かれた時、我々はその内側に広がる、グロテスクで恐ろしい地獄絵図に言葉を失う。
右翼パネルに描かれているのは、紛れもない地獄だ。楽器によって拷問される人々、鳥と虫が融合したような怪物に食われる者、そして巨大な耳に押し潰される魂…。500年以上前に描かれたこの悪夢のような光景は、現代の我々にさえ、強烈なトラウマを植え付ける。

2. ピーテル・パウル・ルーベンス『メドゥーサの首』
ギリシャ神話に登場する、見た者を石に変える怪物メドゥーサ。英雄ペルセウスによって首を切り落とされた、その直後の瞬間を描いたこの絵画は、あまりに生々しく、そして恐ろしい。

無数の蛇が髪の毛の代わりにうごめき、首の断面からは血が滴り落ちる。そして、何よりも見る者を凍りつかせるのが、死してなお、恐怖と驚愕に見開かれたメドゥーサ自身の目だ。当時の詩人は、この絵を「鑑賞者は、突如として恐怖に囚われる」と評した。
3. ヘンリー・フュースリ『夢魔』

眠る女性の胸の上に、ガーゴイルのような怪物が腰掛けている。カーテンの隙間からは、白目を剥いた馬が、こちらを覗き込んでいる。18世紀に描かれたこの作品は、発表当時、ロンドンで「スキャンダルであり、大成功」と評され、大きな物議を醸した。
この絵が恐ろしいのは、怪物の姿そのものだけではない。それは、我々が眠りという無防備な状態にある時、未知なるものが、いかに容易く我々の精神を侵食しうるか、という根源的な恐怖を描き出しているからだ。
4. フランシスコ・ゴヤ『1808年5月3日』

神話や悪夢の世界だけでなく、現実の戦争もまた、芸術家たちに恐るべきインスピレーションを与えてきた。スペインの巨匠ゴヤが描いたこの作品は、ナポレオン軍によるスペイン市民の処刑という、歴史的な悲劇を主題としている。
銃口を向けられ、両腕を広げて絶望と抵抗の叫びをあげる中心の男。血溜まりの中に倒れる人々。そのすべてが、戦争というものがもたらす、無慈悲で、理不尽な暴力の恐怖を、我々に突きつける
これは、単なる歴史画ではない。人間の残酷さを告発する、時代を超えたプロパガンダアートなのだ。
5. エドヴァルド・ムンク『叫び』

おそらく、世界で最も有名な「恐怖」を描いた絵画だろう。しかし、この絵には一つ大きな誤解がある。絵の中心で耳を塞いでいる人物は、“叫んでいる”のではない。彼は、自然全体を貫く、耳を覆いたくなるほどの甲高い“叫び”を“聞いている”のだ。
「私は、自然を貫く大きな叫びを感じた」。ムンク自身がそう書き残しているように、この絵は、近代化の中で個人が感じる、どうしようもない不安や疎外感、そして世界そのものが悲鳴をあげているかのような実存的な恐怖を表現しているのである。
6. サルバドール・ダリ『戦争の顔』(1940年)

スペイン内戦と第二次世界大戦のさなかに描かれた、ダリのシュルレアリスム(超現実主義)の傑作。髑髏のような顔、その空虚な目と口の穴の中には、また同じ顔が無限に繰り返されている。
この無限ループは、戦争が生み出す、終わりのない恐怖と破壊の連鎖を象徴している。戦争によって人間性が失われ、魂が空っぽになってしまった人々の、内なる風景を描き出したこの作品は、見る者に、平和の尊さを力強く訴えかける。
これらの絵画が本当に恐ろしいのは、我々が決して見たくないもの―地獄、戦争、狂気、そして自らの内なる不安―を、鏡のように映し出すからだ。偉大な芸術とは、時に美しさよりも残酷な真実をもって、我々の魂を揺さぶるのである。
参考:MENTAL FLOSS、ほか
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2024.10.02 20:00心霊“不安になる絵画”6選 ― ただ怖いだけじゃない、歴史が生んだトラウマ級アートのページです。絵画、トラウマ、不安などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで