「3I/ATLAS」は“宇宙船ではない”、ハーバード大教授の「エイリアン説」を科学者たちが完全論破する3つの根拠

「あれはエイリアンの宇宙船だ」―。
太陽系外からの謎の訪問者「3I/ATLAS」を巡り、TOCANAでもハーバード大学アヴィ・ローブ教授のセンセーショナルな仮説を度々紹介してきた。しかし、心を鬼にして言わねばなるまい。NASAやSETI(地球外知的生命体探査)をはじめとする天文学界の大多数は、この説に真っ向から反論しているのだ。
彼らが「3I/ATLASは宇宙船ではない」と断言するのには、明確な科学的根拠がある。ここでは、ローブ教授の主張する「異常現象」に反論し、この天体が「風変わりだが、まぎれもなく自然の彗星である」と結論付ける、3つの根拠を解説しよう。
根拠1:そもそも“異常”ではない―彗星は気まぐれな猫のようなもの
ローブ教授は、3I/ATLASが示す「謎の加速」「青い輝き」「太陽へ向かう尾」などを“異常”と呼び、それらが人工物であることの証拠だと主張する。しかし、他の天文学者たちは、この前提そのものに疑問を呈する。
ペンシルベニア州立大学のジェイソン・ライト教授は、「まず理解すべきは、彗星は2つとして同じものはないということだ」と語る。惑星科学者の間には、こんな格言があるという。
「彗星は猫のようなものだ。尻尾があり、そして自分のやりたいようにやる」
つまり、彗星の振る舞いには、一貫したルールなど存在しないのだ。3I/ATLASが太陽系外から来た、我々が初めて本格的に観測するタイプの彗星である以上、その振る舞いが我々の常識と異なるのは、むしろ当然のこと。「異常だから宇宙船だ」という論理は、あまりにも短絡的だ、とライト教授は指摘する。

根拠2:ローブ教授の“後出しジャンケン”―矛盾だらけの主張
ローブ教授の主張が一貫性を欠いている点も、他の科学者から批判される大きな要因だ。
当初、ローブ教授は3I/ATLASに彗星特有の「尾(コマ)」が見られないことを、「人工物である証拠」の最たるものとして挙げていた。「もし今後、彗星の尾が観測されなければ、それが意図的に送り込まれたものである可能性が浮上する」と、彼は語っていたのだ。
しかし、その後、太陽への接近に伴い、3I/ATLASは明確な尾を形成し始めた。するとローブ教授は態度を一変。「宇宙船もまた、そのようなものを持つべきだ」と、自らの主張を修正したのだ。
ライト教授は、「アヒルのように歩き、アヒルのように鳴き、アヒルのように泳いでも、彼はそれがエイリアンの宇宙船であると主張する方法を見つけるだろう」と、ローブ教授の“後出しジャンケン”のような論法を痛烈に皮肉っている。

根拠3:「宇宙船」である積極的証拠が“何一つ”ない
科学の世界では、常識を覆すような突飛な主張をする場合、それを裏付ける積極的な証拠を提示する責任が、主張する側にある。しかし、「3I/ATLAS=宇宙船説」には、その決定的な証拠が何一つ存在しない。
もしそれが本当に宇宙船であれば、以下のような行動が観測されてもおかしくないはずだ。
・重力だけでは説明できない、明確な軌道変更(例えば、生命が存在する地球への進路変更)
・可視光や電波による、通信の試み
しかし、現在までに観測されている3I/ATLASの振る舞いは、すべて「極めて珍しいが、自然の彗星」という枠組みの中で、かろうじて説明が可能だ。それ以上の、宇宙船であることを示す積極的な証拠は何一つ見つかっていない。
オカルト的な憶測ではなく、観測された事実にのみ基づく。それが科学の基本姿勢だ。
3I/ATLASは、100億年もの間、宇宙を孤独に旅してきた貴重なタイムカプセルかもしれない。その存在自体が十分に興味深く、科学的な探求心をかき立てる。我々もローブ教授の説に胸を躍らせてきた一人だが、科学的な視点に立てば、「エイリアン」という物語を付け加えるのは、まだ時期尚早なのかもしれない。
参考:IFLScience、ほか
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2024.10.02 20:00心霊「3I/ATLAS」は“宇宙船ではない”、ハーバード大教授の「エイリアン説」を科学者たちが完全論破する3つの根拠のページです。エイリアン、彗星、宇宙船、3I/ATLASなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで