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金正恩氏率いる北朝鮮のハッカー集団が、2025年だけで20億ドル(約3120億円)以上の暗号資産(仮想通貨)を盗み出したことが明らかになった。これにより、これまでの累計盗難額は67億5000万ドル(約1兆530億円)に達している。
ブロックチェーン分析企業Chainalysisの報告によると、北朝鮮による暗号資産の盗難額は前年比で51%も増加した。驚くべきは、攻撃の件数自体は減少しているにもかかわらず、被害額が記録的な水準に達している点だ。これは彼らの手口がより洗練され、ターゲットを絞り込んだ大規模な攻撃にシフトしていることを示唆している。
狙いは「少数精鋭」の大規模ハッキング
北朝鮮のハッカー集団は、現在、暗号資産セキュリティに対する最大の国家レベルの脅威となっている。彼らは個人ウォレットを狙うのではなく、取引所やカストディアン(資産管理業者)といった大規模なターゲットに照準を合わせている。実際、サービスレベルでの侵害の76%に関与しているという衝撃的なデータもある。
その象徴的な事例が、今年2月に発生したUAE拠点の取引所Bybitからの15億ドル相当の盗難事件だ。これは単一の暗号資産ハッキングとしては過去最大規模であり、北朝鮮の手口がいかに大胆かつ効果的であるかを物語っている。
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巧妙化する資金洗浄と内部侵入
Chainalysisの分析によれば、北朝鮮ハッカーの成功の鍵は「内部侵入」にあるという。従来のセキュリティ対策を回避するために、従業員になりすますなどの手法で組織内部に入り込み、システムを掌握するのだ。
さらに、盗んだ資金の洗浄(マネーロンダリング)手口も巧妙化している。彼らは中国語のサービスを利用したり、複数のミキシングサービスを組み合わせて資金の追跡を困難にしたりしている。大規模な盗難後は、45日かけて構造的かつ段階的に資金を洗浄するというパターンも確認されている。
報告書は、「北朝鮮は暗号資産の盗難を国家資金の調達手段とし、国際的な制裁を回避するために利用し続けている」と警告する。2025年の記録的な被害額は、彼らのサイバー攻撃能力が依然として進化を続けており、2026年にはさらなる大規模攻撃のリスクが高まっていることを示している。
貧困にあえぐ国家が、サイバー空間では巨万の富を築く皮肉な現実。北朝鮮のハッカー集団という「見えない軍隊」との戦いは、まだ始まったばかりなのかもしれない。
参考:Daily Star、ほか
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