“兄さん”は“同士”に強制変換!北朝鮮スマホが暴く思想統制と言葉狩りの実態… 5分毎に「盗撮」する恐怖の監視機能も

画像は「TikTok」より

 北朝鮮の人々の日々の暮らしはどのようなものなのか、外部から理解するには情報が限られているが、北朝鮮のスマホには驚くべき機能が備わっていることが判明した。5分ごとに自動的にスクリーンショットを撮影して人々の行動を追跡しているのだ――。

■監視機能満載の北朝鮮スマートフォン

 1948年以来、最高指導者と朝鮮労働党の支配の下、北朝鮮は厳格な孤立体制を維持しており、入国者はほとんどおらず、出国した人々も厳重な管理下に置かれている。

 英「BBC」が入手して検証した北朝鮮製のスマートフォンから、国民が常に監視、追跡され、思想統制が図られている実態が明らかになった。

画像は「TikTok」より

 まず驚かされるのはその監視機能だ。デバイスは5分ごとに自動的にスクリーンショットを撮影し、これらの画像は秘密のフォルダに送られて保存される。そのフォルダにはスマホの所有者すらアクセスすることはできない。個人のスマホから頻繁にアップロードされて収集される画像を確認できるのは政府当局だけである。

 政権の介入は間接的な監視にとどまらない。このデバイスはユーザーの入力内容を能動的に修正し、政治的に容認される言葉遣いを強制している。

 ジャーナリストのジーン・マッケンジー氏が韓国語で“ボーイフレンド”や“兄さん”を意味するくだけたスラングである「オッパ」」を入力しようとした際、北朝鮮のスマホは即座に「同志」に書き換えた。このシステムは韓国文化で広く普及しているくだけた意味合いの単語を排除しているのだ。

“検閲”は地名においてさらに顕著だ。「韓国」と入力すると、スマートフォンは自動的に「傀儡国家」に修正した。これは北朝鮮政府が大韓民国を呼ぶ際に公式に用いる蔑称であり、敵意と国内プロパガンダを反映している。

 外部からの、特に韓国からの影響力を遮断しようとするこの執着は、長年にわたり厳格に根付いている。ご存知のように活動家たちは長年にわたり、韓国のコンテンツを密かに国境を越えて北朝鮮に持ち込んできた。K-POPのミュージックビデオや韓流ドラマが記録されたUSBメモリを風船に着けて飛ばしたりすることも頻繁に行われている。

@bbcnews North Korea is fighting an information war, as South Korean films, TV dramas, pop songs and news are smuggled over the border in a bid to challenge the country’s propaganda. A North Korean mobile phone, smuggled out of the country late last year, shows how the regime is cracking down. #NorthKorea #SouthKorea #KimJongUn #Military #Internet #KDrama #KPop #News #BBCNews ♬ original sound – BBC News

 こうしたコンテンツの視聴に対する罰則は厳格で、国際メディアの報道によると、昨年は韓国で制作されたテレビドラマを視聴したとして約30人の10代の若者が処刑されている。

 北朝鮮の専門家、マーティン・ウィリアムズ氏は、スマートフォンが情報統制の重要なツールになっていると説明する。

「このような統制の理由は、金一族にまつわる神話の多くが作り話だからです。彼ら(金一族)が人々に語っていることの多くは嘘なのです」(ウィリアムズ氏)

 この体制下で生きてきた人々にとって、監禁されているという感覚は普通のことであるという。2023年に韓国に逃亡した北朝鮮の反体制活動家、カン・ギュリさんは祖国で息苦しさを感じ、そこから抜け出したいと強く願うようになったと話している。

「以前は国家が私たちにこれほど多くの制限をかけるのは当たり前だと思っていました。他の国でも同じような統制が行われていると思っていました。でも北朝鮮でしか起きていないことを知りました」(ギュリさん)

「BBC」が検証したスマートフォンは北朝鮮国内で、テクノロジーがどのように人々を隔離し、監視し、人々の認識を歪めるために利用されているかを象徴する物理的なシンボルと言える。自動スクリーンショットや強制的な単語修正はすべて、国民の行動だけでなく、思考や言葉までも統制することに専念する国家意思を体現するものだ。

 ミサイルの発射を続け、ウクライナに兵士を派遣する北朝鮮の国家体制は今後どのような道筋を辿るのか。現状の体制がこの先も長続きするとは到底思えない。

参考:「Misterios do Mundo」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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