氷に開いた直径1メートルの真円、その底に沈む″黒い立方体”…… 州兵まで出動した1977年ニューハンプシャー「氷の謎」事件

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 1977年1月10日の早朝、厚く凍りついた池の表面に、直径1メートルほどのほぼ完全な円がぽっかりと口を開けていた。濁った水の底に沈んでいたのは、一辺30センチほどの黒い立方体。数時間のうちに警察、市民防衛局、そして州兵までがこの小さな農場に集結し、ガイガーカウンターが異常値を叩き出す。半世紀近くを経た今も、この「氷の謎」は物的証拠がただの一点も出ないまま、ニューイングランドのUFO研究家が最も多く言及する未解決事案であり続けている。

厚さ40センチの氷に開いた、溶かされたような真円

 現場はニューハンプシャー州とメイン州の境にある小さな町ウェイクフィールド。マッカーシーという姓の農場主が、自分の敷地にある馬用の池で異変に気づいた。

 氷の厚さはおよそ40センチ。そこに直径1メートルほどの円が開き、縁から20センチほどの雪がシャーベット状に溶けていた。局所的な熱源が氷を溶かしたとしか思えない状態だったと、彼は語っている。

 さらに不可解なのは、厳しい寒さが続いたにもかかわらず、この穴が再び凍りつくことはなかったという点だ。

 そして水底、1メートル近い泥の中に、一辺30センチほどの黒い立方体が埋もれていた。人工衛星か航空機の破片ではないかと考えた農場主は、地元警察に通報する。ここから、発見の規模には見合わない出来事の連鎖が始まった。

ガイガーカウンターが示した「4レントゲン」と、家族に告げられた沈黙

 警察に続いて現場に現れたのは、市民防衛局の職員、さらに州兵の部隊だった。彼らはガイガーカウンターを手にしていた。

 測定された放射線量は高い値を示したと伝えられ、4レントゲンという数字が語られることもある。事実であれば深刻な健康被害を招きうる水準であり、額面通りに受け取るべきではないかもしれない。

 州司法長官の補佐官は一家に対し、子供と馬を池に近づけないよう指示した上で、この件を口外しないよう求めたとされる。だが箝口令にもかかわらず報道陣は農場に押し寄せ、事件は全米規模のニュースへと膨れ上がっていった。

 当局は半径160キロ圏内の空港に照会し、行方不明の航空機がないかを確認したとも伝えられる。該当する機体はなかった。この地域で隕石の落下が記録された形跡もない。

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午前2時の再測定で、放射能も立方体も消えていた

 決定的な場面は深夜に訪れる。農場主は午前2時ごろ、3人の男が池のそばで新たな測定を行っているのを目撃したという。

 このとき、放射線はまったく検出されなかった。数時間前まで計測器を振り切らせていたはずの汚染は跡形もなく消え、泥の中の黒い立方体も、どこにも見当たらなくなっていた。

 州兵が箱を回収するのを見たと証言する者もいる。だが公式な記録も、写真も、物的証拠も、ただの一つとして世に出たことはない。

 ニューヨーク・タイムズ紙は1月14日、「ニューハンプシャーの氷の謎 放射能の疑い、泥を分析へ」と題した記事を掲載している。見出しが示すのは、当局が異常物体の存在を認めたのではなく、自然由来の放射能という線で説明を探っていたという構図だ。

 実際、地質学的な説明は存在する。1951年の米国地質調査所の報告によれば、ニューハンプシャーを含むニューイングランド一帯には、ウランやトリウムを含む花崗岩やペグマタイトの層が広く分布している。土壌から自然に生じるラドンが、ガイガーカウンターに高く不安定な数値を示させることは十分にありうる。

 もっとも、この事件をめぐる記録そのものが心もとない。農場主のファーストネームすら、ウィリアムなのかトーマスなのか資料によって食い違う。1977年のタイムズ紙の記事も現在は自由に閲覧できず、残されているのは愛好家の語りと地元の口承ばかりで、検証可能な一次資料は半世紀の間に口伝へと置き換わってしまった。

 それでも、厳寒の中で凍ることのなかった真円の穴と、夜明け前に消えた黒い立方体の話は、冬が来るたびに誰かの口に上る。地下の花崗岩だけではすべてを説明しきれないと感じる者がいる限り、あの池の底に何が沈んでいたのかという問いは消えずに残り続けるのかもしれない。

参考:Mysterium Incognita、ほか

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