匿名アカウントの「中の人」をAIが特定!? 1回わずか約150円から… 研究が示すネット匿名性の危機

匿名アカウントの「中の人」をAIが特定!? 1回わずか約150円から… 研究が示すネット匿名性の危機の画像1
イメージ画像 Created with AI image generation

 ハンドルネームの陰に隠れていれば、自分の正体は誰にも分からない。多くのネットユーザーが抱いてきたそんな安心感が、いま静かに揺らいでいる。

 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHチューリッヒ)、AI安全性研究プログラムのMATS、そしてAI企業Anthropicの研究者らが、AIエージェントに匿名アカウントの持ち主を割り出させる実験を行った。その結果、1回の試行あたりわずか1〜4ドル(約150〜600円)のコストで、かなりの確率で正体にたどり着けることが分かったのだ。

338人中226人、「特定班」顔負けの的中率

 研究チームがまず用意したのは、技術系掲示板「Hacker News」のユーザーのうち、プロフィールをLinkedInと紐づけていて実名が判明している人々だ。答え合わせができる相手をあえて選んだうえで、名前やURL、アカウント名といった分かりやすい手がかりを削除し、ウェブ検索ができるAIエージェントに「この人物は誰か」を推定させた。

 結果は338人中226人を正しく特定。AIが名指しした人物の約9割が正解(適合率90%)で、対象者全体の約3分の2(再現率67%)を見つけ出した計算になる。日本のネットでいう「特定班」が手間ひまかけて行う作業を、AIが肩代わりしてしまうというわけだ。

 ただし、どの条件でも同じ精度が出たわけではない。Redditで身元をたどれる研究者25人を対象にした実験では、氏名や論文タイトルを除いた状態で13人(52%)を特定したが、適合率は72%にとどまった。ソフトウェア技術者の投稿者36人では、特定できたのは9人(25%)だった。研究チーム自身も、実名が判明しているアカウントは本当の匿名アカウントより特定しやすい可能性があると認めている。

何気ない書き込みが「指紋」に変わる仕組み

 なぜAIは正体にたどり着けるのか。論文の著者の一人であるジョシュア・スワンソン氏によれば、決め手になるのは単独の手がかりではなく、情報の「組み合わせ」だという。住んでいる街、職業、ちょっとマニアックな趣味。一つひとつは無害でも、重ね合わせると個人を絞り込める「指紋」になる、と同氏は説明している。映画の好みさえ材料になり得るという。

 研究チームが大規模な照合のために組んだ仕組みは、大きく4段階に分かれる。まずAIが投稿から手がかりとなる特徴を拾い出し、次に膨大な候補を似たプロフィールに絞り込む。さらに高性能なモデルが有力候補を比較検討し、最後に確信度を見積もって、根拠が弱いときは「判定しない」という選択もできるようにした。

 整ったデータベースに頼る従来の手法と違い、大規模言語モデル(LLM)は雑多な書き込みから断片を読み取り、結びつけて推論できる。スワンソン氏は、LLMを使った手法が従来型を大きく上回ったとの見方を示している。

時間を隔てても「同一人物」を見抜くAI

 研究チームは、時間が経っても同じ人物だと見抜けるかも検証した。Redditユーザーの投稿履歴を前半と後半に分け、間の1年分をあえて削除。同じ時事ネタや一時的なブームを話題にしているだけで結びつけてしまわないよう工夫した。

 それでも最も性能の高い構成では、ユーザーの38.4%を、99%という極めて高い適合率で結びつけることに成功した。これまで匿名性を支えてきたのは、研究者らが「実質的な不明瞭さ」と呼ぶ壁だった。手がかりはネット上に散らばっていても、それを集めて結びつけるには熟練者の膨大な手間がかかり、調べられる人数には自然と限りがあった。市販のAIでその手間が一気に安くなれば、匿名性を守ってきた最後の防壁が崩れかねない。

 なお、この研究は査読前の論文としてarXivで公開されたものだ。AIが名前を入力しただけで誰の正体でも暴けるわけではなく、ネットの匿名性がただちに死んだわけでもない。それでも、何年も前の何気ない書き込みが、いつか自分の名前と結びつけられるかもしれない。顔の見えないネットの向こうで、AIはすでにこちらの「指紋」を読み始めているのかもしれない。

参考:ZME Science、ほか

関連キーワード:,
TOCANA編集部

TOCANA(トカナ)は、「ホントカナ?」を編集方針に、UFO・UAP、UMA、心霊、予言、超古代文明、都市伝説など世界の「謎」を追うオカルトニュースメディア。2013年の開設から13年、公開記事は2万本以上。
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

匿名アカウントの「中の人」をAIが特定!? 1回わずか約150円から… 研究が示すネット匿名性の危機のページです。、などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

トカナ秘密結社購買部