【新説】世界一謎めいた写本「ヴォイニッチ手稿」は、実は”乱丁本”だった!? 解読を阻んできた意外な理由

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Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University ([1])., パブリック・ドメイン, リンクによる

 1912年にイタリアで発見された謎の写本「ヴォイニッチ手稿」の文字は未だに解読されていないが、新たな研究では意外なことにこの手稿がページの順番が狂っている“乱丁本”である可能性が示唆されている。

■「ヴォイニッチ手稿」は乱丁本だった!?

 製本作業のミスでページの順番が乱れている乱丁本や、ページが欠落している落丁本が作られてしまうことがある。購入した書籍が乱丁本や落丁本であった場合はもちろん無償で交換してくれるが、600年前の乱丁本は交換しようにもすでに在庫も版元もなさそうだ。

 1404年から1438年の間のものとされる羊皮紙で製本され「世界で最も謎めいた写本」と呼ばれる「ヴォイニッチ手稿(Voynich Manuscript)」は、実は乱丁本である可能性が新たな研究で報告されている。

 ヴォイニッチ手稿は全232ページから成り、未知の文字に加え、奇妙な植物の図、天文学や占星術の図、人物が入浴する場面、さらには医学や処方箋に関連すると思われる図像で埋め尽くされている。何世紀にもわたり、学者やアマチュア研究者がその内容を解読しようと試みてきたが、これまで広く認められる成功例はない。

 マルタ大学のコリン・レイフィールド氏とアメリカ中世学会(Medieval Academy of America)のリサ・ファギン・デイビス氏が2026年7月に「Digital Medievalist」で発表した研究では、ヴォイニッチ手稿のページが本来とは異なる順番で製本されていた可能性が指摘されている。つまりヴォイニッチ手稿は乱丁本だというのだ。

 今回発表された新たな研究はその内容ではなく、手稿の構成と製本方法に焦点を当てている。研究チームによると、手稿は15世紀という早い時期に誤った方法で製本された可能性があるという。その結果生じたページ順序の変更が、これまでテキストの理解を妨げてきた要因の一つになっている可能性が新たに指摘されることになった。

 中世の羊皮紙写本は通常、二つ折りにした羊皮紙で作られていた。そのような二つ折りの羊皮紙を複数枚重ねて折丁を作り、それらを綴じ合わせていた。

 しかしレイフィールド氏とデイビス氏は、ヴォイニッチ手稿の構造が異常に不均一であることを指摘している。

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Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University ([1])., パブリック・ドメイン, リンクによる

 研究チームは今回の研究において、異なるテキスト間の統計的な類似性を検出できる潜在意味解析(LSA)という手法を用いた。この手法はまず、よく知られた中世の文献を用いて検証され、予想通り連続するページは類似した統計的特性を持つことが示された。

 対照的にヴォイニッチ手稿は異なるパターンを示した。連続するページの一貫性が著しく低かったのだ。つまりバラバラに綴じられていて内容面においても一貫性がない可能性があるのだ。

 たとえば見開きページ全体を使って描かれていると思われるイラストのページが見開きになっておらず、離れたページにあったりするのである。

 研究チームによると、これは個々の見開きページが現在の形に製本される前に既にチラシや小冊子として存在していた可能性を示唆しているということだ。

 ヴォイニッチ手稿の作成には複数人、最大で5人の筆記者がいたことが確認されているのだが、その事実から元は5冊の小冊子であった可能性もある。したがってヴォイニッチ手稿は一冊の書籍としてではなく、チラシや小冊子を、あまりページの順番には注意を払わずに綴じて製本し直したものであるのかもしれない。そうだとすれば正しい順番にページを並び替えて復元するための研究も必要になってくる。

 しかしテキスト自体が解読されるまでは、決定的な復元は不可能なのだろう。研究チームは今回の研究結果に対する別の説明を完全には排除していないということだ。

 はたしてヴォイニッチ手稿は乱丁本だったのか。文字の解読に加えてその製本にも不可解な点が見つかったことで、困ったことにヴォイニッチ手稿の謎はさらに深まったともいえそうだ。

参考:「GreWi」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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