心停止した自分の手術を「体の外から見ていた」!? 催眠で蘇った臨死体験の記憶に医師たちが涙した理由

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 心停止などで死の淵に立った人のうち、いわゆる「臨死体験」を覚えているのは1割ほどにすぎないという。では残りの9割は、何も見なかったのだろうか。それとも、見たことを忘れているだけなのか。

 この問いに一石を投じる症例報告が、2024年に学術誌『EXPLORE』に掲載された。出産中に心停止したステファニー・アーノルドさん(当時41歳)が、催眠療法を通じて手術室の光景を語り始めたのだ。その内容は、医療チームを涙させるほど正確だったという。

帝王切開の前に見た「自分が死ぬ映像」

 報告をまとめたのは、米オレゴン大学神経科学研究所のマージョリー・ウーラコット氏だ。

 発端は2012年、アーノルドさんの2人目の妊娠だった。検査で、胎盤が子宮の出口を完全にふさぐ「全前置胎盤」と判明する。自然に位置が変わらなければ帝王切開になるという。

 自宅でこの病気について調べていたとき、奇妙なことが起きた。パソコンの画面に映画のような映像が浮かび、手術台の上の自分と、生まれたばかりの息子を抱く夫、床に広がる血が見えたという。彼女は、それが現実になると直感したと語っている。

 その後も「予感」は続き、彼女は胎盤が子宮に癒着しているのではないかと考えるようになった。医療チームは当初は半信半疑だったが、最終的に予備の血液と救急カートを用意する「プランB」をカルテに書き加えたという。

催眠下で語られた手術室の細部、2台目の救急カートの理由とは

 予定日の数日前、出血したアーノルドさんは緊急入院する。分娩中に羊水塞栓症を起こし、血液凝固の異常から大量出血に陥った。予感どおり胎盤の癒着も見つかり、子宮摘出が行われた。60単位(推定15〜20リットル)もの輸血を受け、人工的な昏睡状態に置かれたが、彼女は回復して息子と対面できた。

 再発を恐れ、予感の意味を確かめようとした彼女は、退行催眠のセラピストを訪ねる。複数回のセッションで、彼女は手術室にいる自分の姿を目撃し、意識がなかったはずの細部を次々と語った。

 挿管した顔見知りの医師が、目の前の事態を信じられないと何度も口にしていたこと。赤ちゃんを取り上げたのが予定とは別の医師だったこと。心停止の直前に胸が台から浮き上がったこと、出血が多く2本目のドレーンが必要になったこと。誰が胸骨圧迫を始めたか、緊急コールを押した看護師が茶髪だったことまで覚えていた。

 極めつけは、救急カートが1台ではなく2台あったという証言だ。医師たちに確認すると、1台目が故障していたためだったという。

 録音を病院に持ち込むと、担当の産婦人科医は、あの状態で会話を聞き取れたはずがないと驚き、涙が出たと振り返っている。息子の1歳の誕生日に病棟を訪れた際、声をかけてきた看護師を見るなり、彼女は自分の肋骨を折った人だと言い当てた。胸骨圧迫をした本人だったのだ。

臨死体験の「1割」は本当に少ないのか?

 ウーラコット氏は、心停止中に臨死体験が起きていても記憶として残らず、催眠療法で初めて思い出される場合があるという仮説を、この症例が支持すると論じている。予感についても、事前に詳しく語られた「予知」の可能性として扱っている。

 もちろん、これは1人の症例にすぎない。催眠下で語られる記憶は暗示の影響を受けやすいという指摘や、回復後に耳にした情報が混ざった可能性も考えられるだろう。

 それでも、壊れた救急カートの話まで言い当てた記憶を、すべて後付けで片づけるのは難しい。もし臨死体験の記憶が多くの人の中に眠っているだけだとしたら、「死の向こう側」を見た人は、私たちが思うよりずっと多いのかもしれない。

参考:IFLScience、PubMed(Woollacott, EXPLORE, 2024)、ほか

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2024.10.02 20:00心霊

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